2023年05月17日

英国雇用関連統計(23年4月)-給与所得者数が約2年ぶりに前月比減少

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率はやや上昇

5月16日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【4月】
失業保険申請件数1前月(152.57万件)から4.67万件増の157.24万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.0%となり、前月(同3.9%)からやや増加した
給与所得者数2前月(2998.12万人)から13.6万人減の2984.52万人となった。
増減数は前月(+4.2万人)からマイナスに転じ、市場予想3(+2.5万人)も下回った。

【3月(23年1-3月の3か月平均)】
失業率は3.9%で前月(3.8%)からやや上昇、市場予想(3.8%)を上回った(図表1)。
就業者は3299.5万人で3か月前の3281.3万人から18.2万人増加した。
増減数は前月(16.9万人)から増加し、市場予想(16.0万人)も上回った。
週平均賃金は、前年同期比5.8%で前月(5.8%)から横ばい、市場予想(5.8%)にも一致した(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計(22年7月から推計方法変更)。
3 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:給与所得者が約2年ぶりに前月比で減少

まず、4月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は23年2-4月の平均で108.3万件となり22年3-5月平均(130.6万件)をピークに減少傾向が続いており(図表3)、足もとでは産業別には飲食・居住、卸・小売、医療を中心に求人減少が目立った。単月求人数は4月に108.6万件となり、5か月連続で100万件台となった4

給与所得者データでは、4月の給与所得者数が21年2月ぶりに前月比で減少した(図表4)。業種別にも製造業、建設業、飲食・居住、専門サービス、事務サービス、公的サービスなど幅広く減少している。一方、4月の月あたり給与額(中央値)は前年同月比7.4%で3月(6.8%)から再び伸び率が加速した。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
3月までのデータ(労働力調査)では、失業率が3.9%と微増した。就業者は増加したが、非労働力人口がそれ以上に減少し、失業者も増加した形となった。非労働力人口の減少は16-34才の若年層で目立っており、労働参加率は63.6%まで回復している(コロナ禍直前のピークは64.4%)。
(図表5)定期賃金の推移/(図表6)英国の労働争議件数と労働損失日数
労働時間は、31.9時間(前年同期差±▲0.1時間)、フルタイム労働者で36.6時間(同±0.0時間)となった(前掲図表2)。週当たり総労働時間はコロナ禍前ピーク(19年8-10月)から0.4%低い水準まで回復しているが、足もとではストライキによって労働時間が抑制されている。

賃金は、名目賃金が23年1-3月の前年同期比で5.8%、実質賃金は▲3.0%でいずれも横ばい圏で推移している(前掲図表2)。ボーナスを除く定期賃金伸び率は前年同期比6.6%と高水準であり、特に公的部門の賃金上昇率はコロナ禍後のピークを更新した(図表5)。

処遇改善を求めたストライキは引き続き多発しており、労働損失日数は3月で55.6万日となった。件数ベースでは694件と、2月の640件を上回った(図表6)。ストライキの主体としては2月に続き件数・労働損失日数ベースいずれも公的部門が中心となっている。
 
4 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年05月17日「経済・金融フラッシュ」)

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