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2023年05月09日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2022年決算数値等に基づく現状分析-
3―欧州大手保険グループ各社の地域別の事業展開状況
ここでは、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業について、保険料、営業利益に加えて、資産、EV(Embedded Value)8及び新契約価値等の状況を地域別に報告する。
さらに、各社の地域別の事業展開に関係するトピックについても報告する。これについては、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2022年末SCR比率の状況について(3)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(資本取引等)-」(2023.4.7)から、地域別の事業展開に関する記述を抜粋している。
なお、以下の記述における前年との比較の説明においては、ベースの違い等により、筆者作成による図表の数値と会社の説明用の数値が必ずしも一致していないケースもあり、その場合には基本的には会社説明の数値に基づいていることを述べておく。また、新契約価値に関する前年比較については、次回の新契約業績に関する基礎研レポートで述べることとする。
8 欧州大手保険グループは、これまでEEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を地域別や各国別に公表してきていたが、ソルベンシーII導入後の2017年以降は公表しない会社やグループ全体又は地域別の数値のみの公表に留める会社もある等EVの開示の見直しを行ってきている。さらにはIFRS第17号の適用に伴う見直しも検討されてきている。
1|AXA
AXAは、世界の51カ国で保険事業と資産管理事業を展開している。
AXAは、中国、インドネシア、フィリピン、タイを「Asia High Potentials」として位置付けていたが、インドネシア、タイ、フィリピンでは既に高いプレゼンスを有している。さらに、メキシコとブラジルを「High Potentials」と位置付けている。
なお、AXAは2018年3月に、XL Groupを153億ドルで買収し、年間保険料総額300億ユーロを有する世界的な損害保険会社を構築することを公表し、この買収について、当時のThomas Bubert CEOは、「L&S(生命及び貯蓄保険)事業中心から、P&C(損害保険)事業中心に、そのビジネスプロファイルを移行していく独特の戦略的機会である。」とし、「将来のAXAのプロファイルは、金融リスクから離れて、保険リスクに向かって大きくリバランスされていくことになる。」と述べていた。
また、XL Groupの買収及びEquitableの売却完了により、このリスクプロファイルの変換が進み、さらに金融市場に対してあまり感応的でない損害保険、医療及び保障事業を加速していく、としていた。
(1)地域別の業績-2022年の結果-
自国のフランスの構成比は、多くの指標で3割弱程度となっている。自国以外の欧州では、ドイツ、スイス、ベルギー、イタリア、スペインや英国&アイルランドで有意な水準となっている。
米州においては、AXA Equitableの売却により、米国の生命保険及び貯蓄市場から撤退しており、AXA XLの損保事業が中心になっている。
アジアの構成比は、営業利益(生命・貯蓄・医療)では32%(2021年は33%、2020年は34%)、新契約価値では47%(2021年は43%、2020年は40%)となっている。
なお、AXAは、EEVをかつては国別に開示していたが、2017年以降は地域別のみの開示となっている。
さらに、各社の地域別の事業展開に関係するトピックについても報告する。これについては、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2022年末SCR比率の状況について(3)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告(資本取引等)-」(2023.4.7)から、地域別の事業展開に関する記述を抜粋している。
なお、以下の記述における前年との比較の説明においては、ベースの違い等により、筆者作成による図表の数値と会社の説明用の数値が必ずしも一致していないケースもあり、その場合には基本的には会社説明の数値に基づいていることを述べておく。また、新契約価値に関する前年比較については、次回の新契約業績に関する基礎研レポートで述べることとする。
8 欧州大手保険グループは、これまでEEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を地域別や各国別に公表してきていたが、ソルベンシーII導入後の2017年以降は公表しない会社やグループ全体又は地域別の数値のみの公表に留める会社もある等EVの開示の見直しを行ってきている。さらにはIFRS第17号の適用に伴う見直しも検討されてきている。
1|AXA
AXAは、世界の51カ国で保険事業と資産管理事業を展開している。
AXAは、中国、インドネシア、フィリピン、タイを「Asia High Potentials」として位置付けていたが、インドネシア、タイ、フィリピンでは既に高いプレゼンスを有している。さらに、メキシコとブラジルを「High Potentials」と位置付けている。
なお、AXAは2018年3月に、XL Groupを153億ドルで買収し、年間保険料総額300億ユーロを有する世界的な損害保険会社を構築することを公表し、この買収について、当時のThomas Bubert CEOは、「L&S(生命及び貯蓄保険)事業中心から、P&C(損害保険)事業中心に、そのビジネスプロファイルを移行していく独特の戦略的機会である。」とし、「将来のAXAのプロファイルは、金融リスクから離れて、保険リスクに向かって大きくリバランスされていくことになる。」と述べていた。
また、XL Groupの買収及びEquitableの売却完了により、このリスクプロファイルの変換が進み、さらに金融市場に対してあまり感応的でない損害保険、医療及び保障事業を加速していく、としていた。
(1)地域別の業績-2022年の結果-
自国のフランスの構成比は、多くの指標で3割弱程度となっている。自国以外の欧州では、ドイツ、スイス、ベルギー、イタリア、スペインや英国&アイルランドで有意な水準となっている。
米州においては、AXA Equitableの売却により、米国の生命保険及び貯蓄市場から撤退しており、AXA XLの損保事業が中心になっている。
アジアの構成比は、営業利益(生命・貯蓄・医療)では32%(2021年は33%、2020年は34%)、新契約価値では47%(2021年は43%、2020年は40%)となっている。
なお、AXAは、EEVをかつては国別に開示していたが、2017年以降は地域別のみの開示となっている。
(2)地域別の業績-2021年との比較-
総収入(生命・貯蓄・医療)は、6%増加して、489億3,300万ユーロとなった。
このうち、総収入(生命・貯蓄)は、比較ベース(為替と買収・売却・事業譲渡、会計原則の変更等を調整)で 5%(又は18億900万ユーロ)減少し、315億1,500万ユーロだった。
・一般勘定貯蓄は13%(又は13億1,600万ユーロ)減少した。主な要因は (i) フランス(▲12%)において、Eurocroissanceの継続的な成長により相殺されたものの、2021年のような1つの大規模なグループ年金契約がなかったこと、(ii) イタリア(▲17%)において、困難な市場環境での銀行チャネルを通じた売上が減少したこと、(iii) 日本(▲30%)は主として2021 年のキャピタルライトな一時払終身保険の高い販売が繰り返されなかったことによる。
・ユニットリンクは、主に (i) フランス(▲12%)における減少、 (ii) 香港(▲56%)は、COVID-19危機に関連して中国本土との国境が引き続き閉鎖されたことによる売上の減少による。
・保障は、主に日本(+11%)におけるユニットリンク型保障の好調な売上により、3%(+4 億 400 万ユーロ)増加した。
また、医療の総収入は、比較ベースで 16% (+24億2,600万ユーロ)増加し、174億1,800万ユーロとなった。
・団体保険は、主に (i) フランス(+34%)において、主として2023年には更新されなかった2つの大型契約により、28%(+19 億 3,100 万ユーロ)増加、および (ii) 英国 (+17%) は継続率の改善による。
・個別保険は、ドイツ(+4%)、メキシコ(+14%)、トルコ (+127%)(主として料率引き上げによる)の好調により、6%(+4 億 9,500 万ユーロ)増加した。
基礎利益(生命・貯蓄・医療)は8%増加して。32億4,600万ユーロとなった。
そのうち、基礎利益(生命・貯蓄)は、2 億 5,300 万ユーロ(+11%)増加して 26億 3,200万ユーロとなった。これは、(i) 主にフランスで、保障契約における保険数理上の仮定の強化が繰り返されなかったことによるテクニカルマージンの改善(+ 2 億 9,500万ユーロ)、及び(ii) 主にフランスでの、地域全体の効率化対策による一般経費の減少(+6,800万ユーロ)、によるもので、(iii)63bpsと強固なままの投資マージンの若干の低下 (▲7,600万ユーロ)と、 (iv) 法人税の増加(▲6,100万ユーロ)、によって部分的に相殺された。
医療の基礎利益は、7,300万ユーロ(▲11%)減少して 6 億1,400万ユーロになった。これは主に、(i) 殆どの地域での収益の大幅な伸びが、日本での COVID-19 に関する請求の増加と、 フランスでの 2つの大規模な国際グループ契約に関する不利な請求の経験、及び (ii) シンガポール、湾岸地域及びギリシャの子会社の処分、によるもので、(iii)特に、英国とアイルランドにおける金利の上昇を反映したより高い投資マージンと、(iv) 税引前の基礎利益の減少を反映した法人税の減少、によって部分的に相殺された。
総収入(生命・貯蓄・医療)は、6%増加して、489億3,300万ユーロとなった。
このうち、総収入(生命・貯蓄)は、比較ベース(為替と買収・売却・事業譲渡、会計原則の変更等を調整)で 5%(又は18億900万ユーロ)減少し、315億1,500万ユーロだった。
・一般勘定貯蓄は13%(又は13億1,600万ユーロ)減少した。主な要因は (i) フランス(▲12%)において、Eurocroissanceの継続的な成長により相殺されたものの、2021年のような1つの大規模なグループ年金契約がなかったこと、(ii) イタリア(▲17%)において、困難な市場環境での銀行チャネルを通じた売上が減少したこと、(iii) 日本(▲30%)は主として2021 年のキャピタルライトな一時払終身保険の高い販売が繰り返されなかったことによる。
・ユニットリンクは、主に (i) フランス(▲12%)における減少、 (ii) 香港(▲56%)は、COVID-19危機に関連して中国本土との国境が引き続き閉鎖されたことによる売上の減少による。
・保障は、主に日本(+11%)におけるユニットリンク型保障の好調な売上により、3%(+4 億 400 万ユーロ)増加した。
また、医療の総収入は、比較ベースで 16% (+24億2,600万ユーロ)増加し、174億1,800万ユーロとなった。
・団体保険は、主に (i) フランス(+34%)において、主として2023年には更新されなかった2つの大型契約により、28%(+19 億 3,100 万ユーロ)増加、および (ii) 英国 (+17%) は継続率の改善による。
・個別保険は、ドイツ(+4%)、メキシコ(+14%)、トルコ (+127%)(主として料率引き上げによる)の好調により、6%(+4 億 9,500 万ユーロ)増加した。
基礎利益(生命・貯蓄・医療)は8%増加して。32億4,600万ユーロとなった。
そのうち、基礎利益(生命・貯蓄)は、2 億 5,300 万ユーロ(+11%)増加して 26億 3,200万ユーロとなった。これは、(i) 主にフランスで、保障契約における保険数理上の仮定の強化が繰り返されなかったことによるテクニカルマージンの改善(+ 2 億 9,500万ユーロ)、及び(ii) 主にフランスでの、地域全体の効率化対策による一般経費の減少(+6,800万ユーロ)、によるもので、(iii)63bpsと強固なままの投資マージンの若干の低下 (▲7,600万ユーロ)と、 (iv) 法人税の増加(▲6,100万ユーロ)、によって部分的に相殺された。
医療の基礎利益は、7,300万ユーロ(▲11%)減少して 6 億1,400万ユーロになった。これは主に、(i) 殆どの地域での収益の大幅な伸びが、日本での COVID-19 に関する請求の増加と、 フランスでの 2つの大規模な国際グループ契約に関する不利な請求の経験、及び (ii) シンガポール、湾岸地域及びギリシャの子会社の処分、によるもので、(iii)特に、英国とアイルランドにおける金利の上昇を反映したより高い投資マージンと、(iv) 税引前の基礎利益の減少を反映した法人税の減少、によって部分的に相殺された。
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
AXAは、2022年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2022年2月11日に、AXA Insurance Pte Ltd(「AXA Singapore」)のHSBC Insurance(Asia-Pacific)Holdings Ltdへの現金対価総額5.29億米ドル(4.63億ユーロ)での売却を完了したと発表した。
2022年7月1日に、AXA Group の持株会社である AXA SAが、2022年6月30日のキャプティブ再保険会社である AXA Global Reとの合併に続き、以前に発表した AXA Groupの内部再保険会社への転換を完了したことを発表した。AXA SAは、2022年1月1日まで遡って有効で、毎年更新可能な 25%のクォー タシェア再保険契約を通じて、2022年に特定の欧州のP&C会社に再保険をかける。
2022年7月14日に、AXA Germany がドイツの認可保険会社であるAthora Deutschland GmbH (Athora Germany)に、160億ユーロの生命保険及び年金保険準備金のポートフォリオを売却する契約を締結したことを発表した。ポートフォリオは2013年以降、新契約を閉鎖しており、主に従来型の貯蓄型保険で構成されている。平均保証利率は3.2%である。売却による AXAの貸借対照表に対する保証の減少は、金融市場リスクに対するグループのエクスポジャーをさらに減少させる。
契約条件に基づき、AXA Germany はポートフォリオを Athora Germanyに6億6,000万ユーロで売却する。この売却により、AXA SA は推定4億ユーロの正味現金収入を得ることが見込まれる。AXA は、取引完了後に開始される株式買戻しにより、売却による利益の希薄化を相殺する予定である。取引の一環として、AXA IMは 2028 年まで資産管理サービスをAthoraに提供する契約を締結している。
この取引により、AXA グループの基礎的収益が2023年以降、年間3,600万ユーロ減少すると予想される。AXA グループのソルベンシーII比率に与える影響は軽微である。また、この取引が完了すると、グループに設定した従来の一般勘定準備金の削減目標である300~500億ユーロのうち、240億ユーロが確保されることになる。
この取引は、規制当局の承認を含む慣習的な完了条件の対象となり、現在、2023 年の第 4 四半期に完了すると予想されている。
2022年8月30日に、マレーシアでの保険事業であるAXA Affin General Insuranceの49.99% の株式 保有と AXA Affin Life Insuranceの49%の株式保有のGeneraliへの売却を完了したことを発表した。
AXAは、2022年に入ってからこれまでに、以下の地域別事業展開の見直し等を公表してきている。
2022年2月11日に、AXA Insurance Pte Ltd(「AXA Singapore」)のHSBC Insurance(Asia-Pacific)Holdings Ltdへの現金対価総額5.29億米ドル(4.63億ユーロ)での売却を完了したと発表した。
2022年7月1日に、AXA Group の持株会社である AXA SAが、2022年6月30日のキャプティブ再保険会社である AXA Global Reとの合併に続き、以前に発表した AXA Groupの内部再保険会社への転換を完了したことを発表した。AXA SAは、2022年1月1日まで遡って有効で、毎年更新可能な 25%のクォー タシェア再保険契約を通じて、2022年に特定の欧州のP&C会社に再保険をかける。
2022年7月14日に、AXA Germany がドイツの認可保険会社であるAthora Deutschland GmbH (Athora Germany)に、160億ユーロの生命保険及び年金保険準備金のポートフォリオを売却する契約を締結したことを発表した。ポートフォリオは2013年以降、新契約を閉鎖しており、主に従来型の貯蓄型保険で構成されている。平均保証利率は3.2%である。売却による AXAの貸借対照表に対する保証の減少は、金融市場リスクに対するグループのエクスポジャーをさらに減少させる。
契約条件に基づき、AXA Germany はポートフォリオを Athora Germanyに6億6,000万ユーロで売却する。この売却により、AXA SA は推定4億ユーロの正味現金収入を得ることが見込まれる。AXA は、取引完了後に開始される株式買戻しにより、売却による利益の希薄化を相殺する予定である。取引の一環として、AXA IMは 2028 年まで資産管理サービスをAthoraに提供する契約を締結している。
この取引により、AXA グループの基礎的収益が2023年以降、年間3,600万ユーロ減少すると予想される。AXA グループのソルベンシーII比率に与える影響は軽微である。また、この取引が完了すると、グループに設定した従来の一般勘定準備金の削減目標である300~500億ユーロのうち、240億ユーロが確保されることになる。
この取引は、規制当局の承認を含む慣習的な完了条件の対象となり、現在、2023 年の第 4 四半期に完了すると予想されている。
2022年8月30日に、マレーシアでの保険事業であるAXA Affin General Insuranceの49.99% の株式 保有と AXA Affin Life Insuranceの49%の株式保有のGeneraliへの売却を完了したことを発表した。
(2023年05月09日「基礎研レポート」)
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経歴
中村 亮一のレポート
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