- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 子ども・子育て支援 >
- 育児は何がしんどいのか?(2)-育児の負担感と肯定感には、「夜間起床回数」と「育児協力者の有無」が有意に影響-
育児は何がしんどいのか?(2)-育児の負担感と肯定感には、「夜間起床回数」と「育児協力者の有無」が有意に影響-
生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
1――はじめに
この育休について、岸田文雄首相は1月27日の衆院予算委員会で「育休中の人のリスキリング(学び直し)について後押しをする」 との発言に対し多くの批判が寄せられ、後日「あらゆるライフステージにおいて本人が希望する場合には後押しする」と釈明があるなど話題を集めた。
これらの発言に対し、リスキリングに対する意識調査が活発となり、約6割が不可能と回答2、そもそも社会人の学び直しの意欲がないこと3を指摘する調査結果も示されることとなった。
これらの動向を受けて、なぜ育休中にはリスキリングができないのか、そもそも育児は何がしんどいのかを明らかにすることを目的に、乳幼児健診で取得した育児中の保護者へのアンケート調査結果を分析した。
本稿では、対児感情尺度からみる育児負担感へ影響を与える要因を多変量解析で分析した。その結果、育児負担感及び育児肯定感に共通して、夜間起床回数と育児協力者の有無が共通して有意な影響を与えることが明らかとなった。
尚、本稿は、基礎研レポート「育児は何がしんどいのか?」の全2部の第2稿にあたり、育児中の状況や、母親の健康状態が、育児負担感へどのように影響を与えるものかを統計学的に分析した結果を示したものである。
1 厚生労働省(2022)「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
2 PR TIMES(2023年2月2日),https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000028179.html
Forbes Japan(2023年2月10日)https://forbesjapan.com/articles/detail/60661
3 株式会社ベネッセコーポレーション「社会人の学びに関する調査2022」(2022年8月4日)
https://www.benesse.co.jp/lifelong-learning/assets/pdf/news-20230120-report.pdf
2――分析方法
本稿では、育児の状況や母親の健康状態が、対児感情尺度からみる育児負担感へどのように影響を与えているかを統計学的に分析した結果を示すものである。
統計学的分析方法としては、対児感情尺度の5つの項目を従属変数におき、回答者の基本属性や育児状況、母親の健康状態を独立変数においた重回帰分析を実施した。
対児感情尺度については、平均値と中央値の乖離確認や、尖度歪度やヒストグラム、正規性の検定を用いて、正規分布しているものとみなし、多変量解析の手法は重回帰分析を選択した。
また、独立変数として投入する変数は先行研究にて関連性の検討が実施されているものを強制投入した。独立変数の投入可能数も確認済である。
さらに、多重共線性については、共線性の診断を実施した上で、VIF値が5.0以上もしくは10.0以上がないことを確認した上で解析を実施した。
今回は、質的な変数について、従来の研究にて育児負担感へ影響を与えると考えられるものをダミー変数の1へおき解析した(婚姻有無:既婚0、未婚1、就労有無:就労あり0、就労なし1、家族構成:核家族・複合世帯0、ひとり親1、授乳方法:混合・ミルク0、完全母乳1、寝具状況:別寝具0、同寝具1、育児協力者:いる0、なし1、育児相談者:いる0、なし1、主観的健康状態:良い~普通0、悪い1)5。
今回の分析には、世帯収入などの経済的な指標や最終学歴などの教育値は考慮されていないこと、統計学的分析では因果関係は証明できないことにご留意いただきたい。
4 基礎研レポート「育児は何がしんどいのか?(1)」(2023年3月24日)参照
5 質的変数をダミー変数へ変換した場合、0と1の置き方により、結果の解釈が異なることにご留意いただきたい。
3――対児感情尺度「育児への束縛による負担感」についての要因分析
4――対児感情尺度「子どもの態度や行為への負担感」についての要因分析
5――対児感情尺度「育て方への不安感」についての要因分析
6――対児感情尺度「育ちへの不安感」についての要因分析
03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市 入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年05月10日
米国消費者の生命保険ニーズギャップは過去最大-コロナ禍以降、ニーズギャップは拡大- -
2024年05月10日
英国金融政策(5月MPC公表)-6会合連続で政策金利据え置きを決定 -
2024年05月10日
米労働市場の減速は続くか-中小企業を中心に労働需要が低下するほか、移民増加が賃金上昇圧力を緩和する可能性 -
2024年05月10日
投資部門別売買動向(24年4月)~個人は2カ月連続買い越し~ -
2024年05月10日
Japan Real Estate Market Quarterly Review-First Quarter 2024
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【育児は何がしんどいのか?(2)-育児の負担感と肯定感には、「夜間起床回数」と「育児協力者の有無」が有意に影響-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
育児は何がしんどいのか?(2)-育児の負担感と肯定感には、「夜間起床回数」と「育児協力者の有無」が有意に影響-のレポート Topへ