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- 金融システム不安の台頭で不透明感が強まる円相場~マーケット・カルテ4月号
2023年03月23日
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今月のドル円は上旬に行われた米議会証言でパウエルFRB議長が利上げ加速の可能性に言及したことを受けて一旦1ドル137円台に乗せた。しかし、その後は米銀の破綻を発端に欧米の金融システム不安が台頭したことで米利上げ観測が後退し、円高ドル安が進行。さらに昨日のFOMCを受けて利上げの早期打ち止め観測が高まったことで、足元では130円台後半までドル安が進んでいる。金融システム不安が俄かに台頭したことで、ドル円の先行き不透明感は強まった。事態が早期に沈静化すれば、FRBは従来同様インフレ抑制を優先して利上げを続行、利下げ観測の後退や安全資産需要の減少に伴う米長期金利上昇を通じてドルが持ち直すだろう。一方、逆に深刻化すれば、米経済の減速懸念が強まり、米利下げ観測の高まりを通じてドル安が進む。ただし、この際同時に流動性懸念が急激に高まれば、決済通貨であるドルを確保する動きが世界的に強まり、ドル高が進む展開も有り得る。
基本シナリオとしては、当局の迅速な対応によって金融システム不安が抑えられ、一旦ドルが持ち直すと見ている。ただし、5月以降には米利上げの打ち止めと日銀の緩和修正(長期金利操作目標の年限短期化)によって再び円高圧力が強まると見込んでいる。いわゆる「行って来い」の形となり、3ヵ月後は現状並みの130円台に落ち着くと予想している。ただし、金融システム不安の先行きは極めて見通しづらいことから、不確実性が高い点は否めない。
今月のユーロ円は1ユーロ144円台前後で推移した後、中旬に米金融不安がスイス大手銀の経営不安に飛び火して141円台に下落したが、同銀の救済合意によってやや持ち直し、足元は142円台後半にある。今後は欧米の金融システム不安が次第に落ち着くとともに、ECBが利上げを継続することで一旦ユーロが持ち直すと見ている。しかし、6月に日銀の緩和修正を受けて再び円高に振れることで、3ヵ月後の水準は現状並みの142円台になると予想している。
0.5%付近でスタートした今月の長期金利は、日銀会合での緩和維持決定と欧米の金融システム不安に伴う国債の買戻しを受けて低下し、足元では0.3%付近にある。当面は0.3~0.5%付近での推移が予想されるが、6月には日銀の緩和修正(長期金利操作目標の年限短期化)によってやや上昇すると見ている。3か月後の水準は0.7%台と見込んでいる。
(執筆時点:2023/3/23)
(2023年03月23日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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