2023年02月08日

景気ウォッチャー調査(23年1月)~現状判断DIは前月からほぼ横ばいも、新型コロナの5類変更への期待示される

山下 大輔

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1.現状判断DIは前月からわずかに低下、先行き判断DIは2か月連続で上昇

現状判断DI・先行き判断DIの推移 2月8日に内閣府が公表した2023年1月の景気ウォッチャー調査(調査期間:1月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは48.5と前月から▲0.2ポイント低下した(3か月連続の低下、3か月連続の50割れ)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは49.3と前月から2.5ポイント上昇した(2か月連続の上昇、8か月連続の50割れ)。

1月調査では、新型コロナの感染者数が減少傾向にあることやウィズコロナの進展、インバウンド需要などの好材料がありつつも、物価上昇による影響などから、現状判断DIはほぼ横ばいとなった。

他方、先行き判断DIについては、5月に予定される新型コロナの感染症法上の分類変更を契機とした消費回復、インバウンド需要の更なる増加、円安の落ち着きに伴う生産コスト高騰の緩和への期待などから、2か月連続で上昇した。

今後も、インバウンド需要の増加等の好材料はありつつも、物価上昇による影響で景況感が大きく回復しない状況がしばらく続くと見込まれる。

2.景気の現状判断DI:製造業が悪化

現状判断DIの内訳の推移 現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連は48.6(前月差▲0.6ポイント低下、3か月連続の低下、3か月連続の50割れ)、企業動向関連は46.8(同0.4ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、13か月連続の50割れ)、雇用関連は51.0(同0.1ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、17か月連続の50超え)となり、企業動向関連、雇用関連は前月から上昇したが、家計動向関連の低下により、現状判断DIは、全体として低下した。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連の低下は、小売関連とサービス関連が前月から低下したことによる。小売関連は、前月差▲1.0ポイント低下の48.3(2か月ぶりの低下、8か月連続の50割れ)であった。また、サービス関連は前月差▲0.3ポイント低下の50.0(3か月連続の低下、5か月連続の50超え)となった。値上げによる消費マインドの悪化や電気代高騰などのコスト増による収益悪化が影響している模様だ。加えて、寒波や全国旅行支援の割引率縮小による影響もあったようだ。その他、飲食関連は前月差0.3ポイント上昇の48.9(3か月ぶりの上昇、2か月連続の50割れ)、住宅関連は前月差2.0ポイント上昇の44.5(2か月ぶりの上昇、28か月連続の50割れ)であった。
<回答者の主なコメント>
  • 3か月前は10月11日から全国旅行支援がスタートして段々と客が増え良くなっていた。1月になって全国旅行支援が縮小されたこともあるが、一般客は既にキャンペーンを利用したためか少し飽きている感があり、3か月前と比べてやや悪くなっている。キャンペーン疲れというか飽きられてきた様子がみられる。(東海・観光型ホテル)
  • 初売りは数年ぶりににぎわい、前年を大きく超える結果につながったが瞬間的なものであった。不要不急の買物を自粛する動きは年末から続いており、物価高騰の生活への影響が日増しに大きくなっている。(東北・百貨店)
  • 物価高に加えて電気料金の値上がりでかなり厳しい状況が見込まれる。(北海道・美容室)
現状判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 企業動向関連については、製造業(前月差0.4ポイント上昇の45.8、13か月連続の50割れ)、非製造業(前月差1.1ポイント上昇の48.4、2か月ぶりの上昇、8か月連続の50割れ)ともに上昇した。回答者のコメントからは、インバウンド需要の好調さや人流の回復、値上げの実施等の指摘があった。
<回答者の主なコメント>
  • 小売業や宿泊サービス業においては、中国人観光客の来日が待たれる状況ではあるが、インバウンド消費が回復基調で推移している。自動車製造業においては、依然不安定な状況にはあるものの、生産状況に改善がみられる。(九州・金融業)
  • 例年同様に晴れの日が多く、新型コロナウイルスの新規感染者数は減少傾向にあり、外出や遠出をする人が徐々に増加傾向にある。今月の売上は、前年を上回る状況となっている。(東海・不動産業)
  • 賃上げの必要性から、取引先に対して値上げ交渉を行っているが、例年よりも交渉がスムーズに進んでいる。(北海道・その他サービス業)
  • 法人に関しては値上げもでき、需要も増えてきているが、一般の客は必要最低限の品物しか買ってくれず、ついで買いも少なくなっている。(南関東・食料品製造業)

3.景気の先行き判断DI:全般的に上昇

先行き判断DIの内訳の推移 先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は49.4(前月差2.6ポイント上昇、2か月連続の上昇、8か月連続の50割れ)、企業動向関連は49.1(同2.9ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、14か月連続の50割れ)、雇用関連は48.9(同1.1ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、4か月連続の50割れ)となり、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連の全てで上昇した。
先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連では、小売、飲食、サービス、住宅の内訳全てが前月から上昇した。小売関連は、前月差2.8ポイント上昇の49.9(2か月連続の上昇、14か月連続の50割れ)、飲食関連は、前月差2.8ポイント上昇の49.1(2か月連続の上昇、3か月連続の50割れ)、サービス関連は、前月差1.3ポイント上昇の49.3(4か月ぶりの上昇、4か月連続の50割れ)、住宅関連は、前月差5.8ポイント上昇の45.4(3か月ぶりの上昇、15か月連続の50割れ)であった。回答者のコメントからは、5月に予定される新型コロナの感染症法上の分類変更を契機とした消費回復、インバウンド需要の更なる増加への期待が示されていた。また、今月大きく上昇した住宅関連については、人流の更なる回復による展示場来場者数の増加への期待や消費者の住宅の購入意欲の強さ等がその要因とみられる。
<回答者のコメント>
  • 新型コロナウイルスの5類感染症への移行や、中国からの訪日客の増加などによる、宿泊需要の増加が予想される。(近畿・高級レストラン)
  • 新型コロナウイルス感染症に関する行動制限が緩和され、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行すれば、消費は更に活発になる。(中国・一般小売店)
  • 施工単価や金利の上昇が今後も考えられるなかでも、住宅の購入意欲やリフォームの要望は強いようである。好機と考える人が、行動に移している。(北陸・住宅販売会社)
  • 住宅購入の後押しとなる要因はないが、新型コロナウイルス感染症の規制緩和の影響で、来場者数が増加するとみている。(東北・その他住宅)
先行き判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 また、企業動向関連は製造業、非製造業ともに上昇した。製造業は、前月差1.7ポイント上昇の47.7(2か月ぶりの上昇、14か月連続の50割れ)、非製造業は、前月差3.7ポイント上昇の50.4(2か月ぶりの上昇、14か月ぶりの50超え)となった。インバウンド需要の更なる回復を含めた消費の回復や、部品等の供給制約の緩和への期待、円安の落ち着きがその背景にあるようだ。加えて、円安による国内回帰の動きに言及するコメントもあった。
<回答者のコメント>
  • 世界的な受注は確保されているので、半導体不足が解消されれば高稼働になる。人材確保が課題である。(北関東・輸送用機械器具製造業)
  • 自動車メーカーの部品調達不足も徐々に解消方向に向かっており、増産に向けて動き始めている。(南関東・輸送用機械器具製造業)
  • 値上げが続くなか、極端な円安の調整は進んでおり、輸入原料のコストが低下することから、利益が確保できるとともに、賃金も上昇すると予想される。(四国・食料品製造業)
  • 例年どおり、年度末に向けて一定数の案件は増えてきている。円安の動きも落ち着きを取り戻しつつあり、今後は徐々に利益も回復すると予想している。(九州・家具製造業)
  • 我が国にとっては厳しい円高が20年ほど続き、国内の産業は空っぽになったが、円安状態が長く続けば国内回帰が起こり再び活性化する。新製品の引き合いもきており、より高度な開発が要求されるため一層の努力が必要である(東海・その他非製造業)
  • 円安の影響により仕入先を海外から国内に切り替えた卸売業者からの依頼で売上が増加し、この先も増加する見込みである(四国・パルプ・紙・紙加工品製造業)
 
 

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山下 大輔

研究・専門分野

(2023年02月08日「経済・金融フラッシュ」)

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