2023年01月31日

子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

文字サイズ

1――はじめに

マスク着用について、国は、屋外では原則不要、屋内でも距離が確保でき会話をほとんど行わない場合は不要との見方を、2022年5月に示し、場面に応じた適切な着脱を促している。さらに、2023年5月には、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行し、マスクについては個人の選択を尊重し、実質的には着用ルールが緩和される1。その一方で、発熱症状がある人や満員電車での対応には慎重な意見もあり、着脱に対する意見が活発になっている2。特に、子どもや学校での着脱方針は多くの関心が寄せられているのではないだろうか。

ニッセイ基礎研究所では、2022年10月にマスク着用について、子育て世帯を対象にインターネット調査を行った3。本稿では、まず、大人(親)がマスクについてどう感じているか紹介し、次稿「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか」で、小・中学生がマスクについてどう感じているか紹介する。
 
1 2023年1月19日 日本経済新聞「コロナ「5類」今春移行へ、20日に閣僚協議 政府」2023年1月25日 日本経済新聞「マスク着用など「個人の選択尊重を」 専門家が見解示す」等
2 2022年10月16日 日本経済新聞「ノーマスクの日いつ 同時流行懸念、機会逸した政府」2023年1月18日 日本経済新聞「コロナ5類移行時、屋内マスク不要に 週内に閣僚協議」等
3 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。

2――調査の概要

2――調査の概要

本稿で使用したデータは、ニッセイ基礎研究所が、小学生から中学生の子と同居する全国の24~64歳の男女と、その小学生から中学生の子を対象に、2022年10月に実施したインターネット調査によって得られたものである。有職男性:無職男性:有職女性:無職女性の割合が、なるべく全国の分布に近づくように配信し4、1000組の親子から回答を得た。

本稿では、このうち、1000人の親からの回答を分析する。
 
4 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職・無職分布。

3――マスクについて感じていること

3――マスクについて感じていること

1| 全体~半数以上が「暑い、息苦しいからつけたくない」
まず、マスクをつけることについて感じていることとして、つけたくない理由とつけたい理由を提示して、あてはまる意見をすべて選んでもらった。結果を、マスクをつけたくない理由とつけたい理由に分けて図1に示す。なお、この質問はマスクをつけることについて感じていることを尋ねているだけで、実際につけているかどうかの質問ではない。

つけたくない理由として、もっとも高かったのは、「暑い、息苦しいからつけたくない」で全体の56.6%を占めた。つけたい理由としては、「感染予防(自分がかからないため)のためにつけたい」が39.2%、「感染予防(他人に移さないため)のためにつけたい」が33.5%と3割を超えていた。

まだ暑さが残る10月だったこともあり、マスクによる感染予防効果に期待している人でも暑さや息苦しさを感じていたと思われる。「みんなはずしているからつけたくない」「はずすとまわりのひとにいやがられるからつけたい」「職場・地域のルールだからつけたい」「みんなつけているからつけたい」など、他人の目や行動を理由としてあげている人は33.8%(図表略)いた。厚生労働省から屋外ではマスク不要との方針が示されてはいたが、建物内や職場、公共施設や公共の乗り物ではマスク着用が呼びかけられていることが多く、周囲の様子をうかがいながら着脱を判断している人も多いだろう。
図1. 大人がマスクについて感じていること(全体)n=1000
図2に示すように、回答パターンをみると、つけたくない理由のみ選択した人は30.6%、つけたい理由とつけたくない理由が混在している人が34.8%、つけたい理由のみ選択した人は25.4%で、人々のマスクについての感じ方の意見は割れている。つけたくない理由のいずれか1つでもあてはまる人は全体の65.4%、つけたい理由のいずれか1つでもあてはまる人は全体の60.2%だった。
図2.回答パターン(n=1000)
2| 男女・年齢層別~女性の方が「つけたい」と回答。「自分の顔が見えにくくなるからつけたい」も女性に多い。
次に、マスクについて感じていることを男女・年齢層別に示したものが表1である。

性別にみると、男性は「自分の顔がみてもらえないからつけたくない」「みんなはずしているからつけたくない」「特に感じることは無い」が高く、女性は「感染予防(自分がかからないため)のためつけたい」「感染予防(他人に移さないため)のためつけたい」「自分の顔が見えにくくなるからつけたい」「落ち着くからつけたい」「みんなつけているからつけたい」が、それぞれ全体と比べて高い。

また、男性は、「自分の顔がみてもらえないからつけたくない」と「自分の顔が見えにくくなるからつけたい」が同程度であるのに対し、女性は「自分の顔が見えにくくなるからつけたい」が「自分の顔がみてもらえないからつけたくない」を10ポイント以上上回る。

年齢別にみると、39歳以下は「自分の顔がみてもらえないからつけたくない」「みんなはずしているからつけたくない」「落ち着くからつけたい」が、50歳以上は「暑い、息苦しいからつけたくない」「職場・地域のルールだからつけたい」が、それぞれ全体と比べて高い。
表1.大人がマスクについて感じていること(男女・年齢層別)
3| コロナ感染不安・コロナ禍前のマスク着用状況~コロナ感染を心配している人で「つけたい」
続いて、自分のコロナ感染を心配しているか、コロナ禍前の外出時にマスクを着用していたか別に、マスクについて感じていることを示したものが表2である。自分のコロナ感染を心配している人は全体の68.3%だった。コロナ禍前にもマスクをつけていた(ときどき/ほとんど/常に)のは、全体の39.1%だった。

自分のコロナ感染を心配しているかどうかでみると、「つけたくない」に1つでもあてはまる人の割合は、心配している人でも、心配していない人と大きな差はなかった。「つけたい」については、コロナ感染を心配している人では、「感染予防(自分がかからないため)のためつけたい」「感染予防(他人に移さないため)のためつけたい」「自分の顔が見えにくくなるからつけたい」「落ち着くからつけたい」「みんなつけているからつけたい」「職場・地域のルールだからつけたい」「はずすとまわりのひとにいやがられるからつけたい」が全体と比べて高く、心配していない人を上回る項目が多い。

また、コロナ禍前の外出時にマスクをつけていたかどうかでみると、コロナ禍前にもつけていた人では「特に感じることは無い」が高く、「つけたくない」に1つでもあてはまる割合や、「感染予防(自分がかからないため)」のためつけたい」の割合が低い。コロナ感染予防を意識しているというよりは、「特に感じることは無い」または、理由をあげるとすれば、「はずすとまわりのひとにいやがられるからつけたい」といった考えで、マスクへの抵抗が低いと考えられる。
表2.大人がマスクについて感じていること(感染への心配有無・コロナ禍前のマスク着用有無別)
4| 「つけたくない」理由のみ回答した人でも、8割以上が外出時にほとんど以上の頻度でマスクを着用し、半数が「マスクをしていない人に近づくのは、抵抗がある」と回答
マスクをつけることについて感じていることについて、「つけたくない」理由と「つけたい」理由を示したが、実際にマスクをつける頻度はどの程度違うのだろうか。外出時にマスクをつける頻度を比較した(図3)。その結果、全体では63.9%が「常につけている」、25.2%が「ほとんどつけている」だった。ほとんど以上の頻度でつけている人は、これらを合わせて89.1%にのぼる。つけたい理由のみを回答した人では、それぞれ76.4%、16.9%で、合計93.3%がほとんど以上の頻度でつけていた。一方、つけたくない理由のみを回答した人では、それぞれ52.0%、30.4%で、ほとんど以上の頻度でつけている人は82.4%だった。つけたくない理由しかない人でも5割以上が「常につけている」で、計8割以上がほとんど以上の頻度でつけていることから、つけたい理由をもつ人と比べて低いものの、かなりの高頻度と言えるだろう。
図3.外出時にマスクをつける頻度
マスクをつけることについて感じていることについて、「つけたくない」理由と「つけたい」理由を示したが、他人のマスクについてはどのように感じているのだろうか。

「マスクをしていない人に近づくのは、抵抗がありますか」に「そう思う」または「ややそう思う」と回答した割合は、全体で68.7%だった(図4)。マスクについて、つけたくない理由のみを選択した人(全体の30.6%)、つけたくない理由とつけたい理由が混在している人(全体の34.8%)、つけたい理由のみを選択した人(全体の25.4%)別にみると、つけたい理由のみを回答した人では81.9%が、つけたくない理由のみを回答した人でも56.9%が抵抗があると回答している。
図4.「マスクをしていない人に近づくのは、抵抗がありますか」に「そう思う」または「ややそう思う」と回答した割合

4――おわりに

4――おわりに

この調査は、2022年10月に実施した。この時期は、感染の第7波がおさまりつつあった時期で、まだ暑さも残っていたことから、マスクを外すことに積極的になっていた時期だった。調査においても、もっとも多かった意見が「暑い、息苦しいからつけたくない」であり、半数を超えていた。しかし、「つけたい」理由のみを回答した人、「つけたくない」理由のみを回答した人、「つけたい」「つけたくない」が混在している人等、マスク着用についての人々の意見は割れていた。ただし、マスクを「つけたくない」理由のみを回答した人でも、8割が外出時には「ほとんど」または「常に」マスクを着用しており、半数がマスクをつけていない人に近づくのは抵抗があると回答しており、マスクをつけていることが常態化していた。

マスクをつけていることについて感じることは、男女で大きな差があり、女性は、感染不安と周囲の反応、さらには、「落ち着く」「自分の顔が見えにくくなる」という理由で「つけたい」という意見が多くみられた。感染に対する不安の違いによっても、当然のことながらマスクについて感じることの違いが見られた。

コロナ感染による致死率が低くなっており、マスクだけでは感染を予防するのが難しいことがわかってきているが、今も感染不安を感じ、マスクを着用したい人も多いと思われる。マスクを外したい人、着用したい人の双方の意向も尊重しながら、社会の中でどのようにバランスをとっていくかが課題だろう。

(2023年01月31日「基礎研レポート」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

保険研究部

村松 容子 (むらまつ ようこ)

保険研究部

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?のレポート Topへ