コロナ禍でのマスクをつけること/外すことの不快度合いの変化－男性と女性で異なる傾向の可能性　|ニッセイ基礎研究所

1――はじめに

コロナ禍で、多くの人にとってマスクの着用は日常的なものになったのではないだろうか。コロナ禍でマスクの着用に慣れていく中で、マスクをつけることや外すことの不快度合いはどのように変化してきた可能性があるのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々を対象に行った独自の WEB アンケート調査を用いて、新型コロナ感染拡大が始まったころと現在とで、マスクをつけることや、外すことの不快度合いがどのように変化をしたのかを、男女別に検証した結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、男性の間では、感染拡大初期と現在を比べて、マスクをつけることの不快度合いや、マスクを外すことの不快度合いが変化した傾向は見られなかった。一方で、女性の間では、マスクをつけることの不快度合いが減少し、マスクを外すことの不快度合いが高まった傾向が見られた。

2――調査概要

本分析に用いたデータは、ニッセイ基礎研究所が、全国の24～64歳男女で、小学生から中学生の同居の子のいる方を対象¹に、2022年10月に実施したインターネット調査で得られたものである²。調査回答は、有職者男性：無職者男性：有職者女性：無職者女性の割合が、なるべく全国の分布³に近づくよう配信した上で、ご協力いただける方から回収を行った⁴。回答数はこうして回収された親の回答者とそれぞれの子、各1,000名である。本稿で紹介する分析では、このうち親の回答者についての結果を紹介する⁵。

¹ 株式会社クロス・マーケティングのモニター会員
² 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和４年度の助成による成果である。記して深謝する。
³ 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職者無職者の分布
⁴ 配信時に分布を考慮したが、回収時の割付は行っていない。
⁵ 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、小・中学生の子のいる人でかつ子に調査に協力頂くことができる人に回答頂いた調査であることから、本調査の分布は必ずしも日本全体の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。

3――男女別マスクをつけることの不快度合いのコロナ禍での変化

まず、コロナ禍でのマスクをつけることの不快度合いの変化について、図1に男女別に示した⁶。男性の間では、2022年10月現在の分布と、その2年前（新型コロナ感染拡大が始まった頃）の分布について、マスクをつけることの不快度合いに大きな変化は見られない⁷。一方で、女性の間では、非常に不快に感じている人の割合が減少し、非常に不快に感じている人と少し不快に感じている人を合わせた割合についても、減少した傾向が見られる⁸。つまり、男性の間では大きな変化が見られなかったものの、女性の間では、コロナ禍で、マスクをつけることの不快度合いは減少した傾向が示唆される。

⁶ 2年前の不快度合いは、2022年10月の調査時点で、2年前について思い出して回答を頂いたものである。
⁷ マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、男性の間では、統計的に有意な違いは見られなかった（有意水準15％）。
⁸ マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、女性の間では、統計的に有意な違いが見られた（有意水準5％）。このことから、女性は、コロナ禍でマスクをつけることの不快度が減少した可能性が示唆される。
また、マスクをつけることの不快度合い変数（2022年10月現在）を被説明変数とし、マスクをつけることの不快度合い変数（2年前）、女性ダミー及び年齢変数を説明変数とした線形回帰モデルの推定では、女性ダミーの係数は有意水準15％で統計的に有意に負であった。このことから、女性は男性に比べて、コロナ禍でマスクをつけることの不快度合いが減少した可能性が示唆される。

4――男女別マスクを外すことの不快度合いのコロナ禍での変化

次に、コロナ禍でのマスクを外すことの不快度合いの変化について、図2に男女別に示した⁹。男性の間では、2022年10月現在の分布と、その2年前（新型コロナ感染拡大が始まった頃）の分布について、マスクを外すことの不快度合いに大きな変化は見られない¹⁰。一方で、女性の間では、少しに不快に感じている人の割合が増加したことによって、非常に不快に感じている人と少し不快に感じている人を合わせた割合についても、増加した傾向が見られる¹¹。つまり、男性の間では大きな変化が見られなかったものの、女性の間では、コロナ禍で、マスクを外すことの不快度合いは高まった傾向が示唆される。

⁹ 2年前の不快度合いは、2022年10月の調査時点で、2年前について思い出して回答を頂いたものである。
¹⁰ マスクを外すことについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクを外すことの不快度合い変数を作成し、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、男性の間では、統計的に有意な違いは見られなかった（有意水準15％）。
¹¹ マスクを外すことについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、女性の間では、有意水準15％で統計的に有意な違いが見られた。このことから、女性は、コロナ禍でマスクを外すことの不快度が増加した可能性が示唆される。
また、マスクを外すことの不快度合い変数（2022年10月現在）を被説明変数とし、マスクを外すことの不快度合い変数（2年前）、女性ダミー及び年齢変数を説明変数とした線形回帰モデルの推定では、女性ダミーの係数は有意水準15％で統計的に有意に正であった。このことから、女性は男性に比べて、コロナ禍でマスクを外すことの不快度合いが増加した可能性が示唆される。

5――おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々を対象に行った独自の WEB アンケート調査を用いて、新型コロナ感染拡大が始まったころと現在とでは、マスクをつけることの不快度合いと、マスクを外すことの不快度合いがどのように変化をしたのかを、確認した結果を紹介した。本調査からは、男性の間では、感染拡大初期と現在で、マスクをつけることの不快度合いや、マスクを外すことの不快度合いが変化した傾向は見られなかった一方で、女性の間では、マスクをつけることの不快度合いが減少し、マスクを外すことの不快度合いが高まった傾向が見られた。

男女で違いが見られる理由については今後の検討課題であるが、新型コロナ感染症の流行によってマスクが外見の魅力度に与える影響が変化したといった報告もあることから¹²、こうした外見への意識が影響している可能性が考えられるかもしれない。新型コロナ感染症の感染法上の分類の「5類」への移行が検討される中、今後マスクに対する政府の指針も変化していく可能性がある。こうした状況の中で、人々にとって、マスクをつけることや外すことへの感じ方がどう変化していくのか、今後の動向を注視していく必要があるだろう。

¹² 北海道大学（2021/6/28）https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210628_pr2.pdf（2023年1月23日アクセス）