2023年01月27日

小・中学生が感じるマスクをつけること/はずすことの「いやさ」-親が思うより子は「いやだ」と感じているかもしれない

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――はじめに

コロナ禍では、大人だけでなく子どもたちにとってもマスクの着用は日常的なものになったのではないだろうか。そうした中で、子どもたちは、マスクをつけることやはずすことを、どの程度「いやだ」だと感じているのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々とその子を対象に行った独自の WEB アンケート調査を用いて、子ども自身が感じているマスクをつけることやはずすことの「いやさ」の程度及び、親が思う子のマスクを不快に感じている程度の分布を、子の男女、学年別に確認した結果を紹介する。

結果を先取りしてお伝えすると、以下の通りである。
 
  • 中学生は、小学生に比べて、マスクをつけることをいやだと感じる人の割合が小さい傾向が見られる。特に中学生女子は、マスクをつけることをいやだと感じる人の割合が小さい傾向が見られる。
     
  • 小学校高学年の子や中学生は、小学校低学年の子に比べて、マスクをはずすことをいやだと感じる人の割合が大きい傾向が見られる。
     
  • 新型コロナ感染症拡大が始まった時期と現在を比較すると、親は子のマスク着用への不快度合いは小さくなったと感じている傾向が見られる。
     
  • 親が感じている子のマスクをつけることやはずすことの不快度合いよりも、子が実際に感じているマスクをつけることやはずすことの不快度合いの方が大きい可能性がある。

2――調査概要

2――調査概要

本分析に用いたデータは、ニッセイ基礎研究所が、全国の24~64歳男女で、小学生から中学生の同居の子のいる方を対象1に、2022年10月に実施したインターネット調査で得られたものである2。調査回答は、有職者男性:無職者男性:有職者女性:無職者女性の割合が、なるべく全国の分布3に近づくよう配信した上で、ご協力いただける方から回収を行った4。回答数はこうして回収された親の回答者とその子の回答者、各1,000名である5
 
1 株式会社クロス・マーケティングのモニター会員
2 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
3 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職者無職者の分布
4 配信時に分布を考慮したが、回収時の割付は行っていない。
5 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、小・中学生の子のいる人でかつ子に調査に協力頂くことができる人に回答頂いた調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないことから、本調査の分布は必ずしも日本全体の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。

3――小・中学生が感じるマスクをつけることの「いやさ」の度合い

3――小・中学生が感じるマスクをつけることの「いやさ」の度合い

まず、図1に、2022年10月現在、子(小・中学生)の回答者自身がマスクをつけることをいやと感じているかどうかについて、男女別に回答の分布を示した。全体では、子の回答者の約44%が、「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じていることがわかる6。男女を比較して、大きな違いは見られない7
図1. あなたは、マスクをつけることがいやですか。(男女別)
次に、図2に、マスクをつけることをいやと感じているかどうかについて、学年別に回答の分布を示した。この図からは、小学生に比べて中学生の間で、「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じている人の割合が小さい傾向が見られる8。さらに追加の分析では、中学生の中でも男子に比べて女子は「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じている人の割合が小さい傾向が見られた9
図2. あなたは、マスクをつけることがいやですか。(学年別)
 
6 本節で紹介する結果は、子の回答者1000名のうち、子自身がきもちについて回答することに同意し、かつ、「あなたは、マスクをつけることがいやですか」という質問で「答えたくない」を選択していない人866名についての分析結果である。
7 マスクをつけることが「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と回答した場合に1をとるダミー変数を被説明変数とし、女性ダミー及び学年カテゴリー(小学校低学年ダミー、小学校高学年ダミー、中学生ダミー)を説明変数とした線形確率モデルの推定では、女性ダミーの係数は統計的に有意な値ではなかった(有意水準15%)。
8 注7のモデルの推定では、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、中学生ダミーの係数は統計的に有意に負であった(有意水準10%)。
9 注7のモデルの説明変数に学年カテゴリーダミー×女性ダミーの交差項を追加したモデルの推定では、中学生ダミー×女性ダミーの交差項の係数が統計的に有意に負であった(有意水準5%)。

4――小・中学生が感じるマスクをはずすことの「いやさ」の度合い

4――小・中学生が感じるマスクをはずすことの「いやさ」の度合い

次に、図3に、2022年10月現在、子(小・中学生)の回答者自身がマスクをはずすことをいやと感じているかどうかについて、男女別に回答の分布を示した。全体では、子の回答者の約31%が、「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じていることがわかる10。男女を比較して、大きな違いは見られない11
図3. あなたは、マスクをはずすことがいやですか。(男女別)
さらに、図4に、マスクをはずすことをいやと感じているかどうかについて、学年別に回答の分布を示した。この図からは、小学校低学年の子に比べて小学校高学年の子や中学生の間で、「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じている人の割合が大きい傾向が見られる12
図4. あなたは、マスクをはずすことがいやですか。(学年別)
 
10 本節で紹介する結果は、子の回答者1000名のうち、子自身がきもちについて回答することに同意し、かつ、「あなたは、マスクをつけることがいやですか」という質問で「答えたくない」を選択していない人862名についての分析結果である。
11 マスクをはずすことが「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と回答した場合に1をとるダミー変数を被説明変数とし、女性ダミー及び学年カテゴリー(小学校低学年ダミー、小学校高学年ダミー、中学生ダミー)を説明変数とした線形確率モデルの推定では、女性ダミーの係数は統計的に有意な値ではなかった(有意水準15%)。
12 注11のモデルの推定では、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、小学校高学年ダミーの係数は有意水準10%、中学生ダミーの係数は有意水準5%で統計的に有意に正であった。

5――親が感じる小・中学生の子がマスクをつけることの不快度合い

5――親が感じる小・中学生の子がマスクをつけることの不快度合い

次に、親の回答者に、2022年10月現在とその2年前(新型コロナ感染拡大が始まった頃)それぞれで、子(小・中学生)がどの程度マスクをつけることを不快に感じていると思うかを尋ねた結果を、男子の親と女子の親別に、図5に示した13。図1に示した、子自身が感じるマスクをつけることの「いやさ」の程度の分布と比較をすると、2022年10月現在で、子の回答者の約31%が、マスクをつけることを「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じている一方、親の回答者で子がマスクをつけることを「非常に不快に感じている」もしくは「不快に感じている」と思うと答えた人の割合は、2022年10月現在で、全体の約33%となっている。このことから、親が感じるよりも、子自身はマスクをつけることを「いやだ」と感じている可能性が示唆される14
図5. お子さんはマスクをつけることを、どの程度不快に感じていると思いますか(男女別)
また、図5からは、男子の親であっても女子の親であっても、子がマスクをつけることを不快と感じていると思う人の割合は過去2年間で減少した傾向が見られる15。男子の親と女子の親を比べると、特に女子の親の場合に、子がマスクをつけることを不快に感じていると思う人の割合が大きく減少している傾向が見られる16

次に、親の回答者に、2022年10月現在とその2年前それぞれで、子がどの程度マスクをつけることを不快に感じていると思うかを尋ねた結果を、子の学年別に、図6に示した。図6からは、子の学年に関わらず、子がマスクをつけることを不快と感じていると思う人の割合は2年間で減少した傾向が見られる17。また、中学生の親は、その他の学年の親に比べて、子がマスクをつけることを不快に感じていると思う人の割合の減少幅が小さい傾向が見られた18
図6. お子さんはマスクをつけることを、どの程度不快に感じていると思いますか(学年別)
 
13 2年前の不快度合いは、2022年10月の調査時点で、2年前について思い出して回答を頂いたものである。
14 子自身がマスクをつけることを「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じる場合に1をとるダミー変数と、親が子がマスクをつけることを「非常に不快に感じている」もしくは「少し不快に感じている」と回答した場合に1をとるダミー変数の差についてt検定を行うと、統計的に有意な差が確認された(有意水準1%)
15 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、男子の間でも女子の間でも、統計的に有意な違いが見られた(有意水準1%)。
16 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在の値を被説明変数、2年前の不快度合い変数、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年ダミー、小学校高学年ダミー、中学生ダミー)を説明変数とした線形回帰モデルを推定すると、女子ダミーが統計的に有意に負であった(有意水準5%)。
17 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、小学校低学年、小学校高学年、中学生のいずれの学年の間でも、統計的に有意な違いが見られた(有意水準1%)。
18 注16の推定では、推定すると、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、中学生ダミーが統計的に有意に正であった(有意水準10%)。
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