2023年01月26日

小・中学生のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――はじめに

政府は、2023年1月21日現在、学校でのマスク着用について、「身体的距離が十分とれない時はマスクを着用すべき」としている1。しかし、政府は、2023年1月20日に、新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、2023年春にも「5類」に移行する方針を示した。これによって、子どもたちの学校でのマスク着用についての今後の方針についても議論が始まっている2

実際に、コロナ禍によって小・中学生はどの程度マスクをつけるようになったのか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が小・中学生の子のいる人々を対象に行った独自の WEB アンケート調査を用いて、小・中学生のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化について、男女、年齢層、持病の有無別に確認した分析結果を紹介する。 結果を先取りしてお伝えすると以下の通りである。
 
  • コロナ禍前と 2022 年 10 月の調査時点を比べると、学校でも外出時にも、小・中学生のマスクをつける頻度は大きく増加した。
     
  • 男子よりも女子の間で、常にマスクをつけている人が、より増加した傾向が見られる。
     
  • 小学校低学年の子の間では、小学校高学年や中学生の子に比べて、2022年10月現在、外出時に、常にマスク子をつける子の割合は小さい傾向が見られるが、常につけている子とほとんどつけている子を合わせた割合は、その他の学年と大きく変わらない。
     
  • 新型コロナ感染症の重症化リスクが高いと言われる持病のある子は、コロナ禍前からマスクをつける頻度が多い傾向が見られるが、コロナ禍のマスク着用頻度への影響の大きさについては、持病の有無による大きな違いは確認されなかった。
 
1 文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症対策に関するQ&A(問3 学校でのマスクの着用が必要ですか。(令和4年9月20日更新)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00020.html#q3、2023年1月23日アクセス)
2 毎日新聞(2022年1月20日)5類移行 吉村・大阪知事、学校での一律マスク着用「やめるべきだ」(https://mainichi.jp/articles/20230120/k00/00m/040/215000c、2023年1月23日アクセス)

2――調査概要

2――調査概要

本分析に用いたデータは、ニッセイ基礎研究所が、全国の24~64歳男女で、小学生から中学生の同居の子のいる方を対象3に、2022年10月に実施したインターネット調査で得られたものである4。調査回答は、有職者男性:無職者男性:有職者女性:無職者女性の割合が、なるべく全国の分布5に近づくよう配信した上で、ご協力いただける方から回収を行った6。回答数はこうして回収された親の回答者とそれぞれの子、各1,000名である。本稿で紹介する分析では、親が子のマスク着用頻度について回答した結果を紹介する7。親についての結果は「子育て中の人々のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化」を参照されたい8
 
3 株式会社クロス・マーケティングのモニター会員
4 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
5 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職者無職者の分布
6 配信時に分布を考慮したが、回収時の割付は行っていない。
7 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないこと、親が子の様子について回答した結果を用いていることから、本調査の分布は必ずしも日本全体の小・中学生の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。
8 岩﨑敬子 村松容子「子育て中の人々のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月13日)(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73600?site=nli)

3――男女別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

3――男女別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

まず、コロナ禍前後の学校でマスクをつける頻度の変化について、図1に男女別に示した。全体の分布からは、コロナ禍前は、つけていない子が6割程度であったが、2022年10月現在ではつけていない子はほとんどおらず、常につけている子の割合は7割程度、常につけている子とほとんどつけている子を合わせれば96%と、コロナ禍で小・中学生のマスクをつける頻度は大幅に増加したことが確認できる。
図1. 学校でマスクをつける頻度(男女別)
また、男女を比較すると、コロナ禍前の分布についてはほとんど違いが見られないものの、2022年10月現在では、常につけている子の割合は女子の方が若干大きい傾向が見られる9
 
次に、コロナ禍前後の外出時のマスクをつける頻度の変化について、図2に男女別に示した10。全体の分布からは、コロナ禍前は、つけていない子が6割程度であったが、2022年10月現在ではつけていない子はほとんどおらず、常につけている子の割合は6割程度、常につけている子とほとんどつけている子を合わせた割合は92%と、コロナ禍によって、学校のみでなく、外出時にも、小・中学生のマスクをつける頻度は大幅に増加したことが確認できる。

また、男女を比較すると、コロナ禍前の分布についてはほとんど違いが見られないものの、学校でのマスク着用の傾向と同様に、2022年10月現在で常につけている子の割合は、男子よりも女子の方がやや大きい傾向が見られる11
図2. 外出時マスクをつける頻度(男女別)
 
9 2022年10月現在学校で常にマスクをつけている場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、コロナ禍前に学校で常にマスクをつけていた人ダミー、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、女子ダミーが統計的に有意に正であることが確認された(有意水準5%)。
10 「外出時」については、質問の際、以下のように注記をしている「買い物時や散歩等、目的に応じて異なる場合は、総合的な頻度でお答えください」
11 2022年10月現在外出時に常にマスクをつけている場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、コロナ禍前に外出時に常にマスクをつけていた人ダミー、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、女子ダミーが統計的に有意に正であることが確認された(有意水準5%)。

4――学年別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

4――学年別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

次に、学校でマスクをつける頻度について、小学校低学年、小学校高学年、中学生に分けて分布を確認したのが、図3である。コロナ禍前から、中学生は小学生に比べて、常にマスクをつけている人の割合がやや大きい傾向が見られる12。しかし、コロナ禍後でその差が広がった傾向は見られない。つまり、コロナ禍の学校でのマスク着用頻度への影響の大きさについては、学年による大きな違いは確認されなかった13
図3. 学校でマスクをつける頻度(学年別)
また、外出時にマスクをつける頻度について、小学校低学年、小学校高学年、中学生に分けて分布を確認したのが図4である。コロナ禍前から中学生は常にマスクをつけている人の割合がやや大きい傾向が見られることについては、学校でマスクをつける頻度で見られた傾向と同様である14。2022年10月現在のマスクをつける頻度について確認すると、常につけている人の割合は、小学校低学年で、その他の学年に比べて小さい傾向が見られる15。一方で、常につけている人とほとんどつけている人を合わせた場合には、その割合は、学年による違いはほとんど見られないようだ。
図4. 外出時マスクをつける頻度(年齢別)
 
12 コロナ禍前に学校で常にマスクをつけていた場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、中学生ダミーが統計的に有意に正であることが確認された(有意水準5%)。
13 2022年10月現在学校で常にマスクをつけている場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、コロナ禍前に学校で常にマスクをつけていた人ダミー、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーにした場合、統計的に有意な学年カテゴリーダミーはなかった(有意水準15%)。
14 コロナ禍前に学校で常にマスクをつけていた場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、小学校低学年ダミーと中学生ダミーが統計的に有意に正であることが確認された(有意水準10%)。
15 2022年10月現在外出時に常にマスクをつけている場合に1をとりそれ以外の場合に0をとるダミー変数を被説明変数とし、コロナ禍前に外出時に常にマスクをつけていた人ダミー、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年、小学校高学年、中学生)、持病有ダミーを説明変数とした線形確率モデルを推定すると、女子ダミーが統計的に有意に正であることが確認された(有意水準1%)。
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