2023年01月10日

英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その5)-報告改革に関する協議文書の公表-

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3―ソルベンシーIIの報告改革に関する協議文書の具体的内容からの抜粋

具体的内容のいくつかを抜粋すると、以下の通りとなっている。併せて、PRAは今回の報告改革に伴う費用便益分析を行っているので、その内容を紹介しておく。
1|テンプレートの削除
PRAは、監督アプローチにとっての限定的な健全性価値や他の報告テンプレートを使用してそれらの分野での会社のエクスポージャーを監視できるとの考えから、以下のテンプレートの削除を提案している。

・S.05.01 業種別の保険料、保険金及び費用
・S.07.01 ストラクチャード・プロダクト
・S.08.02 デリバティブ取引
・S.21.01 損失分配リスクプロファイル
・S.21.03 損害保険の引受リスク分布-保険金額別
・S.30.01 損害保険及び生命保険契約の任意再保険の基本データ
・S.30.02 損害保険及び生命保険契約の任意再保険のシェアデータ
・S.31.02 特殊目的ビークル
・S.36.03 IGT-内部再保険
・NS.05 歳入勘定生命保険(revenue account life)
・NS.06 ビジネスモデル分析(生命保険)
・NS.12 The Society of Lloyd's のソルベンシー資本要件
2|報告頻度の変更
PRA は、既存の四半期ごとの提出期限を維持しながら、特定の四半期ごとの報告の報告頻度を減らすことを提案している。
表1:報告頻度の変更案
3|報告基準の変更-臨界値の設定等-
表2:報告基準の変更案
4|費用便益分析
PRAは、今回の報告改革に伴う報告と開示の費用を以下の通りと推定している。

なお、このCPの提案の実装コストと継続的な維持コストに関するPRAの見積もりは、2022年4月に開始された報告コスト調査に対する会社から提出された回答に基づいている、としている。
表 3:報告と開示の推定費用
これによれば、調査の回答に基づく中央値の会社のコストは、中小会社で約 1万ポンド、大会社で約110万ポンドと推定されている。業界レベルでは、このCPの提案を実施するための1回限りの総費用は、5,900万ポンドから1億900万ポンドの範囲になる可能性がある。また、このCPの提案が実施されると、業界全体で進行中のソルベンシーII報告及び開示コンプライアンスコストの中央値が年間約13%削減される可能性がある。さらに、業界全体の推定コスト削減は、年間約2,300万ポンドの中央値に相当し、推定範囲の上限では年間4,600万ポンドの潜在的な節約になる可能性がある。

この予想される削減は、このCPで提案されている報告の量のネットでの全体的な削減及びPRAに提出されたコスト調査データの量と質を反映している。なお、このCPの提案に関連するコストと節約の可能性は、会社によって異なっている。

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、PRAによる、ソルベンシーIIの報告改革に関する協議文書「CP14/22-ソルベンシーIIレビュー:報告フェーズ2」について、その概要を報告してきた。

今回のCPに対する正式な意見等については、意見の提出期限である2023年5月8日を待つことになる。ただし、現時点でのABI(英国保険協会)からの反応としては、基本的には報告要件の合理化については歓迎しているものの、一方で改革の内容が十分ではなく、さらなる報告要件と開示の大幅な合理化が行われるべきとの意見を有しているようである。一方で、英国のソルベンシーII制度がEUのソルベンシーII制度等から逸脱して、同等性を失わないように留意していくことの重要性も強調しているようである。

次回のレポートでは、財務省による「ソルベンシーIIのレビュー:協議-対応」及びPRAによるフィードバックステートメント「FS1/22-ソルベンシーII内のリスクマージンとマッチング調整に対する潜在的な改革」について、その概要を報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年01月10日「保険・年金フォーカス」)

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