2022年12月19日

ドル円は“日米金融政策の行方”を巡る思惑が交錯~マーケット・カルテ1月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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※ 12/20の日銀金融政策決定会合を受けて、見通しを修正しております。
  詳細は下記レポートをご覧ください。

 
 日銀が想定外の緩和修正を決定、ドル円への影響は?~マーケット・カルテ1月号
 (執筆時点:2022/12/21)
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73325?site=nli


1ドル136円台で始まった今月のドル円は、一進一退となっている。月初から予想を下回る米物価指標を受けた利上げ縮小観測によって135円を下回る局面が散発したものの、中旬のFOMCでFRBの利上げ継続に前向きな姿勢が改めて確認され、ドルが持ち直した。ただし、利上げ長期化に伴う米景気後退懸念がドルの反発力を削いだほか、共同声明の改定を巡る報道を受けた日銀の緩和縮小観測が円高圧力となったため、足元でも136円台前半に留まっている。

米国の金融政策とその背景となる物価・景気の不透明感は強いため、引き続き市場の思惑が交錯しやすく、ドル円のトレンドは出にくそうだ。そうした中、足元の市場における米利上げ停止とその先の利下げの織り込みはやや行き過ぎているため、年初にかけてその修正が入ることでドルが一旦幾分持ち直すと予想している。しかし、その後は利上げの効果もあって米物価上昇圧力の緩和を示すデータが徐々に増え、利上げ停止が視野に入ることでドル安基調になるとみている。また、この間、日銀の緩和縮小観測が燻ることもドル高の抑制に働くだろう。この結果、3か月後は現状比横ばいの136円台になると予想している。

ただし、仮に米物価上昇圧力が予想外に強い場合には、利上げ長期化観測を通じて再び140円超での推移が続く可能性も排除できない。

1ユーロ142円台で始まった今月のユーロ円は上下しつつやや上昇し、足元は144円台半ばにある。ECBが利上げ継続への強い意欲を示していることがユーロの追い風となっているうえ、ガスの備蓄が進んだ結果、欧州でのガス不足懸念が後退したこともユーロ高をサポートした。今後もECBの利上げ継続がユーロの支えとなるものの、既に投機筋によるユーロ買いが積み上がっている。一方、今後は欧州の景気後退が露わになり、ユーロ安圧力になりそうだ。日銀の緩和縮小観測が燻ることもあり、3ヵ月後の水準は143円前後に弱含むと見ている。

今月の長期金利は0.25%付近で完全に膠着している。米長期金利の低下に伴って海外発の金利上昇圧力はやや緩和したものの、日銀の緩和縮小観測が根強く、金利上昇圧力の強い状態が続いた。これを日銀が0.25%へ強制的に抑え込んでいることが膠着の背景にある。今後も日銀総裁の代替わりを控えて緩和縮小観測が燻り続けるとみられるため、3か月後も0.25%付近に留まると見ている。
 
(執筆時点:2022/12/19)
為替・金利 3ヶ月後の見通し
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2022年12月19日「基礎研マンスリー」)

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