2022年12月07日

定年後の働き方-定年前の予定とのギャップ

基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.309]

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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1―はじめに

定年を迎える直前の人々が考える定年後の働き方の予定と、実際に定年を迎えた直後の人々の働き方にはどのような違いがあるだろうのか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が57歳~61歳の公務員(元公務員)と正社員(元正社員)を対象に行った調査の結果を紹介する(調査は2022年3月実施。本稿の分析では、60歳で定年を迎える/迎えた人の回答のみを用いた。該当回答数2,555)。

2―定年直前の人が考える定年後の働き方の予定と、定年直後の人の働き方

定年直前の回答者の定年後の働き方の予定と、定年直後の回答者の実際の働き方の違いを確認するために、年齢ごとに、定年後の働き方の予定(定年前の人)と定年後の実際の働き方(定年後の人)の分布を示したのが、図1である。図1からは、会社員の回答者の間でも公務員の回答者の間でも、定年後の人々(60歳定年後と61歳)の方が、定年前の人々(57歳、58歳、59歳、60歳定年前)に比べて、「再雇用で同じ企業/団体でフルタイムで働く」人の割合が大きく、「働いていない/働かない」という人の割合は、小さいことが確認できる。
[図表1]定年後の働き方

3―定年後も働き続ける理由

定年後の回答者が、現在の定年前の回答者と同じような定年後の予定であったと仮定した場合、図1からは、同じ企業/団体でフルタイムで働くつもりがなかった人も、実際に定年を迎えると、フルタイムで働いている可能性が示唆される。この理由を確認するために、定年後に働く理由の分布を示したのが、図2である。

図2からは、会社員の間でも公務員の間でも、61歳の人の間では、その他の年齢の人に比べて、老後資金とやりがい等の老後資金以外の目的の両方を定年後も働き続ける理由として挙げた人の割合が大きい。しかし、老後資金の充足のみを目的とした人と足し合わせた割合は、その他の年齢の人と大きく異ならない。定年後の回答者が現在の定年前の回答者と同じような定年後の予定であったと仮定した場合、定年後の回答者の方が定年前の回答者が予定するよりも「再雇用で同じ企業/団体でフルタイムで働く」人の割合が大きいことから、定年後には、老後資金の目的を持つ人とやりがい等老後資金以外の目的を持つ人が増加すること(特にその両方を持つ人が増加すること)が、「再雇用で同じ企業/団体でフルタイムで働く」人の割合の増加につながっている可能性が示唆される。
[図表2]定年後も働き続ける理由

4―おわりに

現在定年直後の人が数年前に考えていた定年後の働き方の予定は、現在定年直前の人と同じだったとは限らない。さらに、コロナ禍が働き方に影響を与えた可能性も考えられる。加えて、本調査は調査会社のモニター会員に協力頂いたもので、日本全体の分布とは異なる可能性がある。これらから、今後は本調査の結果についてさらなる厳密な分析が必要とされるが、定年直後の回答者の数年前の定年後の予定が現在の定年直前の回答者と同じで、新型コロナ等の特異な影響がなかったと仮定した場合、本稿で紹介した分析結果からは、人々は定年を迎えると、老後資金を充実させる目的の強まりとやりがいなどの老後資金以外の理由の強まりの両方によって、定年前の予定よりも多くの人がフルタイムで勤務を継続している可能性が示唆される。
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

(2022年12月07日「基礎研マンスリー」)

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【定年後の働き方-定年前の予定とのギャップ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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