2022年11月22日

EUにおけるAmazonの確約計画案-非公表情報の取扱など競争法事案への対応

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

2022年7月14日、欧州委員会(EU Commission)は、Amazonからの確約計画(commitments)案の提出を受けて、一般に向けて意見募集を行った。

そもそもの事案の概略は以下のようなものである。欧州委員会はAmazonの事業慣行に関して二つの手続を進めてきた。一つ目はAmazonが自社マーケット(MarketPlace)で販売活動を行う第三者販売者(third party seller)の非公表情報を、自社の販売事業に利用していたとするものである。これについては欧州委員会が2020年11月に、欧州の競争法である欧州機能条約(Treaty on European Union)102条に違反して、公正な競争をゆがめているという旨の暫定的見解である異議告知(Statement of Objection)を発出した。

二つ目はAmazonのBuy Boxという特定商品を有利に取り扱うウェブ上の商品紹介枠のAmazon自身等を優遇するとみられる運用にかかわるものであり、上述の異議告知の決定公表と同時に調査開始することが公表された。この点については2022年6月に欧州機能条約102条違反であるとの暫定的評価(preliminary assessment)を行った。

Amazonはこれらの欧州委員会の意義告知及び暫定的評価の事実関係および評価について同意はせず、しかし、事案として決着させるために、(1)非公表情報の利用しないことの確約、および(2)Amazon自身およびAmazonの保管・運送サービスを利用する販売者をウェブページ上での掲示にあたって優遇しないとする確約計画案の提出を行った。

■目次

1――はじめに
2――欧州機能条約102条とは
  1|該当条文
  2|EU機能条約102条の欧州委員会による執行基準
3――欧州委員会のこれまでの判断
  1|Amazonの自社マーケットにおける非公開情報の利用
  2|AmazonのBuy Boxの運用
4――Amazonの確約計画案
  1|総論
  2|Amazonの非公開情報利用の停止
  3|Buy Box運用方法の変更
5――検討
  1|競争法との関係
  2|DMAとの関係
  3|確約計画の意味合い
6――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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