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コロナ禍における外国人の人口動態~外国人が転入超過の都道府県は「47」から「15」に減少。その影響は郊外・外縁部のほか東京23区にも及ぶ。
金融研究部 主任研究員 吉田 資
まず、2019年11の人口移動を都道府県毎に確認すると、「転入超過」12の都道府県は「21」であった。外国人は全ての都道府県で「転入超過」13であったのに対して、日本人が「転入超過」14の都道府県は「6」(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・大阪府・福岡県)であった(図表-11)。
「転入超過」の都道府県「21」のうち、「分類I:総+・日▲・外+」は「15」(宮城県・茨城県・栃木県・群馬県・富山県・岐阜県・静岡県・愛知県・滋賀県・京都府・兵庫県・岡山県・広島県・香川県・沖縄県)であった。コロナ禍以前は、約3割の都道府県が日本人の減少を外国人の増加で補い全体で「転入超過」を維持していたことになる。外国人の集住地域の1つである「地方の工業都市」が多い北関東や中部地方を中心に、人口動態における外国人の影響の大きさを確認できる。
また、日本人と外国人がともに「転入超過」の都道府県「6」のうち、「分類II:総+・日+<外+」は「5」、「分類III:総+・日+>外+」は東京都のみであった。
日本人の流入が外国人を上回る都道府県は東京都のみであり、日本人が転入超過の地域であっても外国人の存在感の大きさを確認できよう。
11 2019年1月1日から12月31日
12 分類「I~IV」に該当
13 分類「I~III及びVIII」に該当
14 分類「II~V」に該当
次に、2021年の人口移動を都道府県毎に確認する。「転入超過」15の都道府県は「10」となり、2019年の「21」から減少した(図表-14)。外国人の流入(入国)が停滞したことを受けて、日本人の減少を外国人で補い全体で「転入超過」であった「分類I:総+・日▲・外+」の都道府県が「15」から「2」に減少したことが主因である。
外国人が「転入超過」16の都道府県は「47」から「15」に大きく減少した。一方、日本人が「転入超過」17の都道府県は、山梨県と茨城県が加わり、「6」から「8」に増加した(図表-11)。日本人が「転入超過」に転じたことで、山梨県は「分類Ⅷ:総▲・日▲・外+」に、茨城県は「分類II:総+・日+<外+」にそれぞれ移行した。
15 分類「I~IV」に該当
16 分類「I~III及びVIII」に該当
17 分類「II~V」に該当
18 吉田資『コロナ禍における東京23 区の人口移動』(ニッセイ基礎研究所、年金ストラテジー、2022年10月5 日)
4. おわりに
その後、コロナ禍を経て、水際制限強化による外国人留学生の減少や外国人労働者数の鈍化を受けて外国人が減少に転じ、人口減少がやや加速する結果となった。その影響は地方都市に限らず首都圏の中心部にも及んでいることが確認できる。
ところで、今後については、2022年10月に外国人の入国制限が見直され、外国人留学生についても2027年を目途に再び30万人超を目指す方針を示される19等、外国人の流入回復の機運が高まりつつある。
一方、昨今の円安が外国人労働者の獲得に悪影響を及ぼす可能性がある20。また、外国人の受け入れ環境が十分に整備されていないとの指摘21もある。総務省「地方公共団体における多文化共生の推進に係る指針・計画の策定状況」によれば、各自治体の「多文化共生推進プラン」の策定状況は、「町」では33%、「村」では16%に留まっており、「町」・「村」レベルの自治体の一部では、受け入れ環境がまだ十分とはいえない可能性がある(図表-17)。各自治体の外国人支援策の取組みが外国人人口に寄与しているとの実証研究22もあり、こうした環境整備の促進が今後の外国人増加の鍵となると思われる。
我が国の経済成長や住宅市場、労働需給を見通すにあたり、引き続き外国人の人口動態を注視する必要がありそうだ。
19 読売新聞 「留学生数、5年後にコロナ前水準の回復目指す…目安は外国人31万人・日本人12万人」(2022年6月21日)
20 日本経済新聞 「進む円安 細る外国労働力 ドル建て賃金4割減、生活環境改善も急務」(2022年10月9日)
21 鈴木 智也『出入国規制と外国人労働者-過去最高も、就労政策には課題も』(ニッセイ基礎研究所、基礎研レター、2021年4月2日)
22 高橋 諒・奥村 蒼・谷口 守・藤井 さやか『市町村に占める外国人人口に関する要因分析』都市計画論文集 2020 年 55 巻 3 号 p. 1113-1120
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
(2022年10月28日「基礎研レポート」)
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