- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 地方に広がる外国人増加~居住支援が当面の課題
2019年12月04日
総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、日本人は減少し続けているのに対し、外国人が急速に増加している。2019年1月1日時点の人口は、日本人が前年から約43万人減少したのに対し、外国人は約17万人増加した。特に、若年層(15歳~29歳)と中壮年層(30歳~64歳)では、2014年を100とした時、外国人の若年層は159、中壮年層も121となり、大きく増加している。
外国人の増加要因として、外国人労働者と留学生の大幅な増加が挙げられる。厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者数は、2013年度の約72万人から、2018年度には約146 万人へと約2倍に増加した。2019年4月に出入国管理法が改正され、今後5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れが見込まれている。また、日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、外国人留学生も、2013年度の約16.8万人から、2018年度には約29.9万人へと大きく増加した(2013年度対比78%増加)。2008年に、政府は2020年までに留学生を30万人まで増やす方針を示していたが、既に目標をほぼ達成したことになる。
都道府県毎の外国人増加率(2014年から2019年)をみると、若年層の増加率が最も高い都道府県は沖縄県(148%増)であり、次いで福島県(136%増)であった。50%以上増加した都道府県は、32にのぼる(図表1・左図)。また、中壮年層の増加率が最も高い都道府県は島根県(62%増)であり、次いで北海道(55%増)であった(図表1・右図)。首都圏だけなく、地方でも外国人が大幅に増加していることが分かる。
外国人の増加要因として、外国人労働者と留学生の大幅な増加が挙げられる。厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者数は、2013年度の約72万人から、2018年度には約146 万人へと約2倍に増加した。2019年4月に出入国管理法が改正され、今後5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れが見込まれている。また、日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、外国人留学生も、2013年度の約16.8万人から、2018年度には約29.9万人へと大きく増加した(2013年度対比78%増加)。2008年に、政府は2020年までに留学生を30万人まで増やす方針を示していたが、既に目標をほぼ達成したことになる。
都道府県毎の外国人増加率(2014年から2019年)をみると、若年層の増加率が最も高い都道府県は沖縄県(148%増)であり、次いで福島県(136%増)であった。50%以上増加した都道府県は、32にのぼる(図表1・左図)。また、中壮年層の増加率が最も高い都道府県は島根県(62%増)であり、次いで北海道(55%増)であった(図表1・右図)。首都圏だけなく、地方でも外国人が大幅に増加していることが分かる。
これに対し、行政機関の対応もまだ十分ではない。日本経済新聞社が2018年11月から12月にかけて実施した調査によれば1、外国人が住まいを確保するための「居住支援や入居差別の解消」の支援を実施している自治体は26%に留まっている。
また、国土交通省が不動産事業者を対象に実施した「不動産売買・賃貸業務における外国人対応に関する調査」(2015年10月~11月)によれば、外国人向けに物件資料を作成している事業者は2割未満に留まった。また、「外国人客に対する対応マニュアルは整備していない。整備する予定はない」と回答した事業者が8割以上を占めており、不動産仲介現場での外国人客の対応にも、不十分な部分が見られる。
こうしたなか、国土交通省は2017年8月に「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」を公表し、外国人の居住を支援する動きが始まっている。また、空き家を活用し、外国人に住居を提供する動きもみられる。マーチャント・バンカーズ(株)は、空き家を外国人就労者向けの社宅に開発して提供する事業を開始した。また、京浜急行電鉄(株)、横浜市金沢区、横浜市立大学は共同で、空き家のアパートを大規模改修し、留学生をターゲットとしたシェアハウスを開設した。
今後も、外国人労働者や留学の流入は続くと見込まれ、特に、住宅市場や労働需給等に大きな影響を及ぼす若年層と中壮年層ではその存在感は急速に高まっている。外国人の住居に関する不安の解消は課題の1つであり、行政をはじめとして、安定した住居の確保に対する支援が進むことが望まれている。住宅投資を考える上でも、居住支援の今後の取り組みを注視したい。
1「外国人共生、支援に遅れ 主要市区に専門窓口なし6割」日本経済新聞電子版 2019年2月8日
また、国土交通省が不動産事業者を対象に実施した「不動産売買・賃貸業務における外国人対応に関する調査」(2015年10月~11月)によれば、外国人向けに物件資料を作成している事業者は2割未満に留まった。また、「外国人客に対する対応マニュアルは整備していない。整備する予定はない」と回答した事業者が8割以上を占めており、不動産仲介現場での外国人客の対応にも、不十分な部分が見られる。
こうしたなか、国土交通省は2017年8月に「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」を公表し、外国人の居住を支援する動きが始まっている。また、空き家を活用し、外国人に住居を提供する動きもみられる。マーチャント・バンカーズ(株)は、空き家を外国人就労者向けの社宅に開発して提供する事業を開始した。また、京浜急行電鉄(株)、横浜市金沢区、横浜市立大学は共同で、空き家のアパートを大規模改修し、留学生をターゲットとしたシェアハウスを開設した。
今後も、外国人労働者や留学の流入は続くと見込まれ、特に、住宅市場や労働需給等に大きな影響を及ぼす若年層と中壮年層ではその存在感は急速に高まっている。外国人の住居に関する不安の解消は課題の1つであり、行政をはじめとして、安定した住居の確保に対する支援が進むことが望まれている。住宅投資を考える上でも、居住支援の今後の取り組みを注視したい。
1「外国人共生、支援に遅れ 主要市区に専門窓口なし6割」日本経済新聞電子版 2019年2月8日
(2019年12月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/08/13 | 「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2024年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2024/08/02 | 「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2024年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2024/07/16 | 産業集積でみる東京オフィスエリアの特色-探索的空間解析によるオフィス需要の「ホットスポット」検出 | 吉田 資 | ニッセイ基礎研所報 |
2024/07/09 | 「広島オフィス市場」の現況と見通し(2024年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月24日
今週のレポート・コラムまとめ【9/17-9/20発行分】 -
2024年09月20日
英国金融政策(9月MPC公表)-今回は政策金利を据え置き -
2024年09月20日
消費者物価(全国24年8月)-既往の円安の影響で食料(生鮮食品を除く)の伸びが1年3ヵ月ぶりに拡大 -
2024年09月19日
米FOMC(24年9月)-政策金利▲0.5%引き下げを決定。20年以来となる利下げを開始 -
2024年09月19日
資金循環統計(24年4-6月期)~個人金融資産は前年比98兆円増の2212兆円と過去最高に、リスク性資産への投資が進む
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【地方に広がる外国人増加~居住支援が当面の課題】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
地方に広がる外国人増加~居住支援が当面の課題のレポート Topへ