2022年10月28日

コロナ禍における外国人の人口動態~外国人が転入超過の都道府県は「47」から「15」に減少。その影響は郊外・外縁部のほか東京23区にも及ぶ。

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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1. はじめに

総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」によれば、日本人住民の人口(以下、日本人)は減少が続いており、2022年は約1億2,320万人(2014年比▲320万人)となった(図表-1・左グラフ)。一方、外国人住民の人口(以下、外国人)は、2020年に約290万人(2014年比+90万人)となり、この間、一貫して増加が続いていた。しかし、コロナ禍を経て外国人も減少に転じ、2022年は約270万人となった。

コロナ禍前の2020年の増減をみると、日本人が前年比で約▲50万人減少したのに対して、外国人は約20万人増加し、総人口は約▲30万人の減少に留まった。日本人減少の半分程度を外国人の増加で補っていたことになる(図表-1・右グラフ)。人口減少時代に入った日本において、外国人の存在感が高まっていたがコロナ禍を経て減少に転じるなか、人口減少がやや加速する結果となった。しかし、2022年10月に外国人の入国制限が緩和される等、今後は回復に向かう公算が大きい。住宅市場や労働需給への影響等、引き続き外国人の人口動態を注視する必要性は高いと言えよう。

そこで、本稿では、コロナ禍において変化が生じた外国人の人口動態などについて概観したい。
図表-1 人口の推移(全国)

2. 総人口に占める「外国人」の割合

2. 総人口に占める「外国人」の割合

(1)概況
前章に記載した通り、外国人は2020年まで増加が続くなか、総人口に占める外国人の割合は2014年の1.6%から2020年には2.3%へ上昇した。しかし、コロナ禍を経て2022年は2.1%に低下した(図表-2)。
図表-2 総人口に占める外国人の割合 
これまでの外国人増加の要因として、(1)「外国人労働者」の増加、並びに(2)大学や日本語学校に通うために来日した「外国人留学生」の増加、が挙げられる。

厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、2021年の外国人労働者数は約173万人となり、2012年の約68万人から大幅に増加した。前年比では、2015年から2019年にかけて10%を上回る伸び率で推移していたが、コロナ禍を経て大きく鈍化している(図表-3)。

外国人労働者の在留資格(2021年)を確認すると、「身分に基づく在留資格1」(58.0万人・34%)が最も多く、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」(39.5万人・23%)、「技能実習2」(35.2万人・20%)、「資格外活動3」(33.5万人・19%)となっている(図表-4)。
図表-3 外国人労働者数の推移/ 図表-4 外国人労働者の在留資格(2021年)
在留資格別に外国人労働者数の推移をみると、2019年を100とした場合、2021年の「技能実習」は「92」、「資格外活動」は「90」となり、コロナ禍での水際制限強化の影響などから減少している(図表-5)。一方、「専門的・技術的分野の在留資格」は「120」、「身分に基づく在留資格」は「109」となり、増加基調を維持している。ただし、「専門的・技術的分野の在留資格」の増加は、外国人留学生の就職に伴い「専門的・技術的分野の在留資格」に移行したことや、技能実習生が「専門的・技術的分野の在留資格」の1つである特定技能に移行した等が要因として指摘されている4
図表-5 在留資格別にみた外国人労働者数の推移
次に、日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、2019年の外国人留学生は約31万人となり、2014年の約18万人から大幅に増加し、政府が2008 年に示した数値目標(2020年までに30 万人)を達成した。しかし、2020年2月以降の入国制限の影響等から、2021年は約24万人(前年比▲13%)となった(図表-6)。これに伴い、「資格外活動」の在留資格による外国人労働者(2019年37.3万人⇒2021年33.5万人)も減少している。
図表-6 外国人留学生数の推移 
 
1 永住者や日系人、日本人の配偶者等
2 入国後1年目の技能などを習得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の習得技能をさらに習熟させるための活動(第2号技能実習)、そして4・5年目の技能をさらに熟達する活動(第3号技能実習)の3段階に分かれている。
3 留学生のアルバイト等
4 労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド」2022年4月号 【トピックス2】外国人雇用
(2)地域別にみた外国人の割合
図表-7は、総人口に占める外国人の割合(2020年と2022年)を都道府県別に示している。外国人の割合が最も高い都道府県は、「東京都(2020年4.2%・2022年3.8%)」が第1位で、続いて「愛知県(3.6%・3.4%)」が第2位、「群馬県(3.0%・3.1%)」が第3位で、順位に変動はみられない。「愛知県」や「群馬県」、「三重県(3.0%・3.0%)」等の製造業が盛んな県では、工場や物流拠点等で人手不足を外国人労働者に頼る企業が増加しており、外国人の割合が高い傾向にある。
図表-7 総人口に占める外国人の割合(都道府県別) 
次に、市区町村毎にみると、総人口に占める外国人の割合が10%を上回る自治体は、2020年は13自治体(「北海道占冠村」・「北海道留寿都村」・「北海道赤井川村」・「北海道ニセコ町」・「北海道倶知安町」・「群馬県大泉町」・「東京都新宿区」・「東京都豊島区」・「横浜市中区」・「長野県白馬村」・「名古屋市中区」・「大阪市浪速区」・「大阪市生野区」)であった。しかし、2022年は5自治体(「北海道占冠村」・「群馬県大泉町」・「横浜市中区」・「大阪市浪速区」・「大阪市生野区」)へ減少した。(図表-8)。

なかでも、「北海道占冠村(2020年32%⇒2022年12%)」・「北海道留寿都村(15%⇒6%)」・「北海道赤井川村(14%⇒7%)」・「北海道ニセコ町(12%⇒6%)」・「北海道倶知安町(15%⇒5%)」では、外国人の割合が大きく低下した。

上記の自治体は、オーストラリア等からの訪日客に人気が高いスキーリゾートが立地し、外国人観光客をターゲットとした宿泊施設の従業員や、スキーのインストラクターとして働く在留外国人やその子弟が増えていた。しかし、入国制限等により観光業が大きな打撃を受けるなか、在留外国人も減少している。

先行研究5等によれば、外国人の集住地域の特徴として、「(1)大都市インナーエリア(中心部)6」、「(2)地方の工業都市7」、「(3)エスニック・コミュニティ8」等が挙げられる。「(2)地方の工業都市」である「群馬県大泉町(19%⇒19%)」や、「(3)エスニック・コミュニティ」に位置づけられる「横浜市中区」(11%⇒10%)」や「大阪市生野区(22%⇒21%)」では、コロナ禍を経ても、外国人の割合は高水準を維持している。
図表-8 総人口に占める外国人の割合(市区町村別)
 
5 是川夕『非類似性指数からみた在日外国人の住み分けの現状と要因-国勢調査小地域集計を用いた分析』人口学研究第44号、2009年5月
6 大都市の中心部で就業や、日本語学校などの就学機会が得やすいことから外国人の居住が進んだ地域。
7 製造業が地域の基幹産業となっており、工場等での労働に従事する目的で外国人の居住が進んだ地域。
8 戦前から、航路の開通等をきっかけに移住者が増え、現在でも外国人住民が多い地域

3. 外国人の人口移動

3. 外国人の人口移動-外国人および日本人の転入超過数に着目した分類-

(1)分析方法
続いて本章では、地域の人口移動を日本人と外国人に分類して、外国人が地域の人口動態に与える影響を整理したい。

具体的には、先行研究9の分析方法を参考にして、各地域の「転入超過数(総数)」を「日本人の転入超過数」と「外国人の転入超過数」を分けて考える10。図表-9は、日本人の転入超過数(X軸)と外国人の転入超過数(Y軸)の分布を示す。X軸とY軸のほかに、「Y=X」と「Y=-X」の直線を引き、全体を8つ(I~VIII)に分類し、各地域の人口移動の特徴を捉えることとする。
図表-9 日本人および外国人の転入超過数による分類(I~VIII)
具体的には、「I~IV」は全体で「転入超過」の地域、「V~VIII」は全体で「転出超過」の地域に該当する。「Y=-X」の線が、各地域の「転入超過」と「転出超過」の区分線となる。

「分類I」は、日本人の「転出超過」を外国人の「転入超過」で補い、全体で「転入超過」の地域である。

「分類II」と「分類III」は、日本人と外国人がともに「転入超過」で、「分類II」は外国人の増加の方が大きく、「分類III」は日本人の増加の方が大きい地域である。

「分類IV」は、外国人の「転出超過」を日本人の「転入超過」で補い、全体で「転入超過」の地域である。

一方、「分類V」は、外国人の「転出超過」を日本人の「転入超過」で補えず、全体で「転出超過」の地域である。

「分類VI」と「分類VII」は、日本人と外国人がともに「転出超過」で、「分類VI」は外国人の減少の方が大きく、「分類VII」は日本人の減少の方が大きい地域である。

最後に、「分類VIII」は、日本人の転出超過を外国人の「転入超過」で補えず、全体で「転出超過」の地域である。なお、「Y=-X」の線に近接する地域は、日本人の減少を外国人の増加で一定程度緩和していると解釈できるだろう(図表-10)。
図表-10 日本人および外国人の転入超過数の分類(定義)  
以上の分類により、(1)各地域が「転出超過」か、それとも「転入超過」か、(2)日本人と外国人の増減がどれほど寄与しているか、を考察することができる。以下では、新型コロナウィルス感染拡大前の「2019年」とコロナ禍を経た「2021年」について、地域毎の人口移動の特徴を概観する。
 
9 清水昌人・中川雅貴・小池司朗『市区町村における外国人の転入超過と人口流出』E-journal GEO vol.11(2)375-389 2016
10 転入超過数(総数)=日本人の転入超過数+外国人の転入超過数
日本人の転入超過数=日本人の転入数(国内と国外の合計)-日本人の転出数(国内と国外の合計)

(2022年10月28日「基礎研レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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レポート紹介

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