2022年10月20日

1ドル150円に肉薄、円安に打ち止め感は出るか?~マーケット・カルテ11月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月の見通し 1ドル144円台で始まった今月のドル円は、またも大幅な円安ドル高となり、32年ぶりの高値を更新、足元では150円の節目に肉薄している。この間に発表された米経済指標が労働需給の逼迫と物価上昇圧力の根強さを示す内容となり、FRBの積極的な利上げが続くとの観測が高まったことがドル高の追い風となった。9月下旬に発動が明らかにされた円買い介入への警戒感が円安の進行をある程度抑制しているものの、歯止めをかけるほどの力はなく、円安基調が続いている。

米国のインフレに鎮静化の兆しが見られないことから、FRBが大幅利上げの手を緩めることはまだ考えにくい。しばらくは日米の金融政策の違いが際立ちやすく、ドルが上値を試す時間帯が続きそうだ。150円突破はもはや時間の問題とみられるが、150円を超えても天井感は出にくいだろう。

日銀の緩和姿勢や日本の多額な貿易赤字という円安材料の継続が見込まれるなか、円安基調が終わりを迎えるにはドル安圧力の高まりを待つしかない。具体的には、米インフレに鈍化の兆しが見え、経済の停滞感も強まり、FRBが利上げの手を緩めることだ。時期については不確実性があるものの、12月にはこうした条件が整い、ドル円がピークアウトする可能性が高いと見ている。3ヵ月後の水準は145円前後と見込んでいる。ただし、仮に条件が整わなければ、円安ドル高の時間帯がさらに長引くことになる。

今月はユーロ円でも円安が進行し、足元は約8年ぶり高値となる146円台に達している。ガス不足やインフレに伴う欧州経済の先行き懸念は燻るものの、利上げを急ぐECBと緩和を堅持する日銀との差がユーロの追い風となっているほか、最近では英財政懸念の後退もユーロの支援材料となった。今後もECBの利上げ継続がユーロの支援材料となるものの、既に市場の織り込みは進んでいる。一方で、冬場に入ると、欧州経済の後退感が強まることで、ユーロが下押しされると見ている。3ヵ月後の水準は143円台と予想している。

今月の長期金利は0.25%付近での膠着した推移となっている。米金利上昇などを受けた金利上昇圧力を日銀が0.25%での指し値オペによって強引に抑え込んでいるためだ。利上げを背景とする米金利上昇はいずれ収まるとみているが、水準がかなり下がらない限り、本邦長期金利の低下も見込めない。3か月後も現状比横ばい圏と見ている。

 
(執筆時点:2022/10/20)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2022年10月20日「基礎研マンスリー」)

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