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- 貸出・マネタリー統計(22年9月)~日銀の資金供給量(平残)が異次元緩和導入後初の前年割れに
2022年10月14日
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1. 貸出動向:銀行貸出の増加基調が強まる
(貸出残高)
10月13日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、9月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.63%と前月(同2.19%)を大きく上回った。伸び率の上昇は4ヵ月連続で、この間の伸び率の上昇幅は1.75%に達するなど、銀行貸出の増加基調が強まっている(図表1)。
9月には、再び円安が大きく進んだことから、外貨建て貸出の円換算額が追加的に嵩上げされ、伸び率の押し上げ要因となったとみられる(図表3)。また、実態としても、コロナ禍からの経済活動再開や原材料・燃料価格高騰(による仕入れコスト増)などが資金需要の増加を通じて貸出増加に繋がっている模様だ。
業態別では、都銀の伸び率が前年比2.43%(前月は1.85%)と大幅に上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸び率も同2.80%(前月は2.47%)と明確に上昇している(図表2)。
10月13日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、9月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.63%と前月(同2.19%)を大きく上回った。伸び率の上昇は4ヵ月連続で、この間の伸び率の上昇幅は1.75%に達するなど、銀行貸出の増加基調が強まっている(図表1)。
9月には、再び円安が大きく進んだことから、外貨建て貸出の円換算額が追加的に嵩上げされ、伸び率の押し上げ要因となったとみられる(図表3)。また、実態としても、コロナ禍からの経済活動再開や原材料・燃料価格高騰(による仕入れコスト増)などが資金需要の増加を通じて貸出増加に繋がっている模様だ。
業態別では、都銀の伸び率が前年比2.43%(前月は1.85%)と大幅に上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸び率も同2.80%(前月は2.47%)と明確に上昇している(図表2)。
2.マネタリーベース:コロナオペ減少で大幅減少
10月4日に発表された9月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比▲3.3%と、前月(同0.1%)を大きく下回り、6カ月連続で低下した(図表5)。マネタリーベース(平残)が前年を割り込むのは2012年4月以来約10年半ぶりのことで、異次元緩和後では初めてだ。
低下の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金の伸び率がマイナス幅を広げた(前月▲0.1%→当月▲1.7%)ことである9月には市場の金利上昇圧力が再燃し、指し値オペの応札があったことなどを受けて、長期国債買入れ額は11.9兆円と平時の倍レベルに膨らんだ(図表6)。ただし、制度の一部打ち切りに伴ってコロナオペの残高が引き続き大幅に減少(前月▲19.3兆円→当月▲21.3兆円)したことが伸び率を大きく押し下げた。
その他の内訳では、日銀券発行高の伸びが前年比3.0%(前月も3.0%)と横ばいになった一方、貨幣流通高の伸びが前年比▲3.0%(前月は▲2.6%)と低下したこともマネタリーベースの伸び率低下に繋がった(図表5)。貨幣の減少幅拡大については、小口決済のキャッシュレス化進展に加え、銀行等での硬貨預け入れ手数料の広がりによって、家庭での貯金需要が減少したためとみられる。
なお、末残ベースのマネタリーベース残高は、9月末時点で618兆円と前月末比で▲26.9兆円減少している。季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、前月比▲24.0兆円となっている(図表8)。
既述の通り、マネタリーベースの減少は制度の縮小に伴うコロナオペの残高減少、すなわち危機対応の収束が主因であることから、日銀は「マネタリーベースの拡大方針を継続する」としているオーバーシュート型コミットメントに反するものではないとの立場を示している1。
確かに、コロナオペの残高を除いたベースで見た場合、マネタリーベースは前年比で3.7%増と依然プラス圏を維持しており、危機対応の反動に過ぎないという日銀の立場も一定理解できる(図表7)。ただし、マネタリーベースの拡大方針を継続するとしつつ、実際には減少を許容していることによって、日銀の金融政策がより一層分かりにくくなっている。>
低下の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金の伸び率がマイナス幅を広げた(前月▲0.1%→当月▲1.7%)ことである9月には市場の金利上昇圧力が再燃し、指し値オペの応札があったことなどを受けて、長期国債買入れ額は11.9兆円と平時の倍レベルに膨らんだ(図表6)。ただし、制度の一部打ち切りに伴ってコロナオペの残高が引き続き大幅に減少(前月▲19.3兆円→当月▲21.3兆円)したことが伸び率を大きく押し下げた。
その他の内訳では、日銀券発行高の伸びが前年比3.0%(前月も3.0%)と横ばいになった一方、貨幣流通高の伸びが前年比▲3.0%(前月は▲2.6%)と低下したこともマネタリーベースの伸び率低下に繋がった(図表5)。貨幣の減少幅拡大については、小口決済のキャッシュレス化進展に加え、銀行等での硬貨預け入れ手数料の広がりによって、家庭での貯金需要が減少したためとみられる。
なお、末残ベースのマネタリーベース残高は、9月末時点で618兆円と前月末比で▲26.9兆円減少している。季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、前月比▲24.0兆円となっている(図表8)。
既述の通り、マネタリーベースの減少は制度の縮小に伴うコロナオペの残高減少、すなわち危機対応の収束が主因であることから、日銀は「マネタリーベースの拡大方針を継続する」としているオーバーシュート型コミットメントに反するものではないとの立場を示している1。
確かに、コロナオペの残高を除いたベースで見た場合、マネタリーベースは前年比で3.7%増と依然プラス圏を維持しており、危機対応の反動に過ぎないという日銀の立場も一定理解できる(図表7)。ただし、マネタリーベースの拡大方針を継続するとしつつ、実際には減少を許容していることによって、日銀の金融政策がより一層分かりにくくなっている。>
1 「危機対応としての部分が終わるというだけであり、オーバーシュート型コミットメントと、イールドカーブ・コントロールという金融緩和政策そのものを変更するものではない」、「あるところで、市場に危機対応で出した部分を引き揚げるということは終わるので、(中略)これまでのトレンドに回帰して戻っていくのでないか」(2022年2月4日若田部副総裁記者会見)など。
3.マネーストック:M2の伸びが4カ月ぶりに鈍化
10月14日に発表された9月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.31%(前月は3.42%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.88%(前月は2.97%)と、ともに低下した(図表11)。伸び率の低下はM2が4カ月ぶり、M3が2カ月連続のこととなる。
M3の内訳では、現金通貨(前月2.93%→当月2.97%)、CD(譲渡性預金・前月3.9%→当月6.1%)の伸び率が上昇したものの、主軸である預金通貨(普通預金など・前月5.9%→当月5.6%)、準通貨(定期預金など・前月▲2.0%→当月▲2.1%)の伸び率が低下し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12・13)。
既述の通り、銀行貸出がその増勢を強めていることが下支え要因になっているが、一方で、資源高の影響などにより経常収支の黒字が縮小傾向にあることが通貨量の伸び率鈍化に働いているとみられる。
M3の内訳では、現金通貨(前月2.93%→当月2.97%)、CD(譲渡性預金・前月3.9%→当月6.1%)の伸び率が上昇したものの、主軸である預金通貨(普通預金など・前月5.9%→当月5.6%)、準通貨(定期預金など・前月▲2.0%→当月▲2.1%)の伸び率が低下し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12・13)。
既述の通り、銀行貸出がその増勢を強めていることが下支え要因になっているが、一方で、資源高の影響などにより経常収支の黒字が縮小傾向にあることが通貨量の伸び率鈍化に働いているとみられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年10月14日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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