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世界各国の市場動向・金融政策(2022年9月)-9月も全面的なドル高・株安
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.概要:9月は全面的なドル高、株安
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する47か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。本文中の先進市場と新興市場の区分についてはMSCIの分類に基づく。
天然ガス価格の下落は欧州のガス在庫蓄積の進展や、EUによる価格安定策への期待などが背景にあるものと見られる。ただし、ガス価格水準は依然としてかなり高く、9月下旬にはノルドストリームの損傷が発見され4、また10月1日にはオーストラリア経由のイタリア向けガス供給が止まるなど、供給不安も引き続き高まっている5。
2 ロシアのウクライナ侵攻と経済・金融制裁を受けて、3月にロシアはMSCI ACWIから除外されているが、世界の金融市場に大きな影響を及ぼしたその後の状況を確認するため、本節で概観する。
3 プーチン大統領は9月7日にウクライナからの穀物輸出先を制限するようにトルコのエルドアン大統領と協議旨の発言をしている。例えば、Bloomberg(日本語版)「小麦先物が一時7%近く上昇、ウクライナ産穀物巡るプーチン氏発言で」2022年9月8日(22年10月3日アクセス)。トルコは黒海経由でのウクライナ産穀物輸出の合意に関してウクライナとロシアを仲介していた。なお、この合意の有効期限は120日となっている。
4 例えば、日本経済新聞「ノルドストリーム停止長期化も 23年から需給逼迫の懸念」2022年9月28日(22年10月3日アクセス)
5 例えば、日本経済新聞「ガスプロム、イタリアへのガス供給停止」2022年10月2日(22年10月3日アクセス)
3.株価(MSCI)・為替レートの動き
通貨の騰落率を見ると、ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比▲4.1%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比▲3.4%となり8月に引き続きドル高が大幅に進む形となった6(前掲図表3)。
6 ただし、名目実効為替レートは8月29日時点の前月末比で算出。
G7の国では、日本銀行が現行政策の維持(資金繰り支援特別プログラムは延長)を決定する一方で、米国、英国、ユーロ圏、カナダは利上げに踏み切っている。このうちFRB、カナダ銀行、ECBは0.75%ポイントの利上げ、イングランド銀行は0.50%の利上げとなった。なお、イングランド銀行は金利の急上昇に対応するため、28日に国債の緊急購入することを決定したほか(10月14日まで)、予定していた保有国債売却も10月末まで延期した。
G7以外の国でも多くの国で利上げを決定している国が多いが、チェコが9会合連続利上げの後、前回に続き2会合連続で金利据え置きを決定したほか、ブラジルも今回の会合で据え置きを決めている(ブラジルはこれまで12会合連続で利上げ)。これまで積極利上げをしてきた新興国の一部では利上げサイクルの終了が視野に入っていると見られる。
また、9月はロシアとトルコで利下げが決定されている。ロシアは6会合連続、トルコは2会合連続での利下げとなる。ロシアはウクライナ侵攻後の経済・金融制裁とインフレ圧力の高まりに対抗するために20%まで政策金利を引き上げてきたが、段階的に7.5%まで引き下げたことを受けて、中銀は利下げサイクルの終了を示唆している。トルコは消費者物価上昇率が80.2%(8月)とかなり高いが、エルドアン大統領の意向を受けた低金利政策が講じられている状況にある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年10月03日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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