- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 医療・介護・健康・ヘルスケア >
- 健康・ヘルスケア >
- 夏は年々暑くなっているのか?~高まる熱中症のリスクを踏まえた夏の過ごし方の見直しの必要性
夏は年々暑くなっているのか?~高まる熱中症のリスクを踏まえた夏の過ごし方の見直しの必要性
山下 大輔
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
4――夏の過ごし方の見直しが必要
まず、夏の炎天下の中で開催されるスポーツや音楽等のイベントについてである。たとえば、夏の風物詩の1つといえば、夏の全国高校野球甲子園大会を考えてみよう。甲子園球場の観客席から、又はテレビ・ラジオ等を通じて、連日の熱戦に声援を送った方は多いだろう。選手にとっては、高校生活をかけた一世一代のイベントである。ところで、今年の開催時には、試合中に足がつる選手が相次ぎ、厳しい暑さによる熱中症の症状とみられるとの報道があった4。甲子園大会開催期間中に、兵庫県で熱中症警戒アラートの発表状況を調べると、大半の期間で熱中症警戒アラートが発表されていた。
対応が必要なのは、屋外イベント開催だけではない。たとえば、子供の夏の過ごし方を考えてみると、今では、熱中症のリスクから、日中に公園や屋外で遊ぶことが難しくなっているだろう。子どもは、汗腺などの体温調節能力が未発達であり、また、体重当たりの体表面積が大人より大きく、高温時や炎天下では深部体温が上がりやすいため、熱中症になりやすいとされている。また、晴天時には地面に近いほど気温が高くなるため、身長の低い幼児は大人よりも更に高温の環境にいることになるため、熱中症のリスクが上がると言われている5。そのため、夏の暑さが厳しくなれば、熱中症を予防する観点から、子どもは屋外で日中に遊ぶことが難しくなる。他方で、従前より、子どもの体力低下が指摘されており、その原因として、学校外の学習活動や室内遊び時間の増加による外遊びやスポーツ活動時間の減少などが挙げられている6。また、就学前に外遊びをしていた頻度が高いほど、小学校入学後の運動・スポーツの実施頻度が多く、体力が高いことを示すデータもある。体力はあらゆる活動の基本となるものであり、心身の健康維持や健全な発達・成長を支える上で大変重要なものであるところ、夏の暑い期間に屋外で日中に遊ぶことが難しくなれば、子どもの発育への影響や体力の低下が更に進む可能性があるのではないだろうか。屋内の遊び場を増やすなどの施設整備の必要性が高まっているといえる。
更に言えば、テレワークが難しい仕事をしている人にこそ、暑さ対策は重要だといえる。たとえば、建設業に従事する人の多くは、日中の炎天下の中で建設作業を行っているし、運送業に従事する人は日中の暑い中で商品の配達などを行っている。職場で熱中症への対策が十分に取られている場合も多いと思われるが、熱中症による死傷者は毎年発生しており、また、近年増加している。夏が年々暑くなっていることを踏まえると、企業による従業員の健康リスクを踏まえた対応は更に必要になっていくだろう。
4 「甲子園 暑さも難敵 帽子白に 首元冷やす 足つり続出 各校対策」『読売新聞』(2022.8.17夕刊)
5 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」
6 子供に体力向上ホームページ、公益財団法人日本レクリエーション協会(2022年9月1日アクセス)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年09月13日「基礎研レター」)
山下 大輔
山下 大輔のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2023/08/22 | Japan's Productivity through the Lens of “Cheap Japan” | 山下 大輔 | 基礎研レポート |
| 2023/07/26 | 日本の物価は持続的に上昇するか-消費者物価の今後の動向を考える | 山下 大輔 | ニッセイ基礎研所報 |
| 2023/07/10 | 景気ウォッチャー調査(23年6月)~景況感の回復ペースが鈍化 | 山下 大輔 | 経済・金融フラッシュ |
| 2023/06/08 | 景気ウォッチャー調査(23年5月)~現状判断DIは4か月連続で上昇 | 山下 大輔 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年11月04日
今週のレポート・コラムまとめ【10/28-10/31発行分】 -
2025年10月31日
交流を広げるだけでは届かない-関係人口・二地域居住に求められる「心の安全・安心」と今後の道筋 -
2025年10月31日
ECB政策理事会-3会合連続となる全会一致の据え置き決定 -
2025年10月31日
2025年7-9月期の実質GDP~前期比▲0.7%(年率▲2.7%)を予測~ -
2025年10月31日
保険型投資商品の特徴を理解すること(欧州)-欧州保険協会の解説文書
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【夏は年々暑くなっているのか?~高まる熱中症のリスクを踏まえた夏の過ごし方の見直しの必要性】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
夏は年々暑くなっているのか?~高まる熱中症のリスクを踏まえた夏の過ごし方の見直しの必要性のレポート Topへ














