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わが国の不動産投資市場規模(2022年)~「収益不動産」の資産規模は約275.5兆円(前回比+3.2兆円)。前回調査から「オフィス」・「賃貸住宅」・「物流施設」が拡大する一方、「商業施設」・「ホテル」は縮小

金融研究部 主任研究員 吉田 資
株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 事業部長 主任研究員 室 剛朗
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1. はじめに
日本の不動産投資市場は、海外投資家からの関心も高い。CBREによれば、2021年の日本の不動産投資額に占める海外投資家の割合は3割に達する。国土交通省「令和2年度 海外投資家アンケート調査」によれば、「日本における不動産投資先として検討可能なエリア」について、「その他の大都市(札幌・仙台・広島・福岡)」との回答は44%(2018年)から80%(2020年)に、「その他の地方都市」との回答は10%(2018年)から50%(2020年)に増加した(図表-2)。投資対象資産の多様化に加えて投資エリアについても広がりをみせている。
不動産投資市場の将来を見通すにあたり、投資対象となる「収益不動産」の資産規模がどれくらいであるのか、また、その内訳を「用途別」や「エリア別」に把握することは引き続き重要だと考えられる。
そこで、ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所は共同で、前回調査2に続いて、わが国の不動産投資市場規模に関する調査を実施した。
1 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(2022年)」(令和4年6月7日閣議決定)
2 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(1)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年3 月12 日)
吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年4 月19日)
吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(3)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年5 月20日)
2. 「収益不動産ストック」の推計
本調査では、事業者や個人に物件を賃貸することで、賃料収入を獲得できる不動産(以下、「収益不動産」)を調査対象とした。また、「収益不動産ストック」の内訳を把握するため、
(1)一定水準以上の面積基準や築年基準を満たす「収益不動産」
(2)機関投資家の投資意欲が特に強いスペックや立地要件を満たす「投資適格不動産」
(3)主要政令指定都市に立地するハイクラスオフィスである「コア投資不動産」
のカテゴリーに分類し、推計を実施した。
推計方法は、前回調査と同様に、収益還元法に基づく「ボトムアップ・アプローチ」を採用した(図表―3)。まず、「着工床面積の積算」と「レンタブル比」のデータをもとに「賃貸可能床面積」を推計した。次に、推計した「賃貸可能床面積」と、「平均賃料」や「平均稼働率」のデータをもとに、「総収入」を推計した。続いて、推計した「総収入」と「平均コスト比率」をもとに、「NOI:営業純収益、Net Operating Income」を推計した。最後に、推計した「NOI」を「キャップレート」で除して、「収益不動産の総額」を求めた。
国内不動産投資における「市場ポートフォリオ」となる「収益不動産」のセクター比率は、「オフィス」が38%(前回調査37%)、「住宅」が26%(同24%)、「商業施設」が23%(同26%)、「物流施設」が10%(同9%)、「ホテル」が3%(同5%)となる(図表―4)。
投資信託協会によれば、2022年3月時点の「J-REIT」のセクター比率は「オフィス39%」、「物流施設22%」、「商業施設15%」、「賃貸住宅13%」、「ホテル7%」である。また、三井住友トラスト基礎研究所の調査によれば、「不動産私募ファンド」のセクター比率は「オフィス40%」、「物流施設21%」、「賃貸住宅12%」、「商業施設11%」、「ホテル5%」である(図表―6)。したがって、「J-REIT」と「不動産私募ファンド」は、「市場ポートフォリオ」と比較して、「物流施設」の比率が高い一方、「賃貸住宅」と「商業施設」の比率が低いと言えそうだ。
「収益不動産」のエリア別比率をみると、「収益不動産(275.5兆円)」の39%が「東京都」に集積している(図表―13)。用途別では、「オフィス(103.9兆円)」の57%、「賃貸住宅(72.0兆円)」の41%が「東京都」に集積している。一方、「商業施設」や「物流施設」、「ホテル」は「東京都」への集積度が相対的に低く、地方都市においても一定の市場規模を有していることが分かる。また、前回調査からの変化を確認すると、「オフィス」については「東京都」の比率が縮小(59%⇒57%)、「物流施設」については「関東(東京都除く)」の比率が拡大(37%⇒40%)したが、それ以外に大きな変化はみられない。
(2022年09月09日「不動産投資レポート」)
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