2022年08月25日

計量テキスト分析で振り返る住宅事業者の事業方針~「戸建て」はエコ住宅、「マンション」は用地価格等の上昇対応に注力。コロナ後はニューノーマルへの対応を模索

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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■要旨
 
  • 本稿では、計量テキスト分析の手法を用いて、住宅事業者の「戸建て」および「マンション」の事業方針の特徴を分析した。
     
  • (1)顧客ニーズに対応した商品提供、(2)厳選した開発用地の取得、(3)他社との差別化、(4)企業ブランドの向上は、「戸建て」と「マンション」に共通した事業方針となっている。一方、「戸建て」では省エネ性能に優れたエコ住宅、「マンション」では建設コストや土地価格高騰への対応を強く意識していることがうかがえる。
     
  • 時系列でみると、コロナ禍を経た2021年は、「戸建て」・「マンション」ともに、他の時期と共通する単語が少なく、これまでの事業方針に変化が生じた可能性がある。在宅勤務の普及に伴うライフスタイルの変化(ニューノーマル)への対応が課題となっているが、具体的な方針を示した企業は少なく、今後の対応策を模索している状況がうかがえる。
     
  • 企業属性に着目すると、戸建住宅の主な供給主体である「パワービルダー」と「ハウスメーカー」の事業方針が近いなか、「パワービルダー」は手の届きやすい価格設定やエコ住宅の供給に、「ハウスメーカー」は高付加価値商品やサービスの提供や顧客への提案力に重点を置き、他社との差別化を図る方針がうかがえる。また、「マンション」では、「財閥・金融」と「電鉄」は企業ブランドの向上を意識した商品開発、「ゼネコン」と「独立系」は、価格設定や立地選定に軸足を置いて、差別化を図っていると考えられる。
     
  • アフターコロナ・ウィズコロナの時代を本格的に迎えるにあたり、住宅事業者は変化するライフスタイルに対応した具体的な事業方針を示すことが求められている。経済活動に大きな影響を及ぼす住宅市場の分析・将来見通しをたてる上でも、住宅価格や新規供給の動向とともに、住宅事業者の事業方針にも注目する必要がありそうだ。


■目次

1.はじめに
2.住宅市場動向の確認
  2-1. 新設住宅着工戸数の動向
  2-2. 建築工事費の動向
  2-3. 住宅価格の動向
3.住宅購入に対する意向
4.住宅事業者の事業方針に関する計量テキスト分析
  4-1. 分析方法
  4-2. 分析結果
5.おわりに
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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