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中国経済の見通し-2022年は前年比3.4%増、23年は同6.1%増

三尾 幸吉郎
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1. 中国経済の概況
そして、第3四半期(7-9月期)に入ると、再びCOVID-19の新規感染が増え始め、8月16日には無症状を含めると新規感染は3千人を超えた。ウィズコロナ政策への移行に踏み切れず、ダイナミック・ゼロ政策を続けている中国だけに、経済への悪影響が懸念される。
一方、インフレの状況を見ると、22年1-7月期の工業生産者出荷価格(PPI)は国際的な資源エネルギー高を背景に前年同期比7.2%上昇した。しかし、消費者物価(CPI)は同1.8%上昇と低位に留まった。輸送用燃料は同25.9%上昇したものの、食品が同1.0%上昇にとどまった。豚肉価格が同27.5%も下落したからである。しかし、その豚肉も下げ止まり足元ではやや上昇してきており、原油価格もひところよりは値下がりしたものの前年下半期の73ドル前後と比べるとまだまだ高い。したがって、今後のCPIは一時3%台に乗せる見込みである(図表-3)。
2. 需要面
他方、純輸出は1-3月期(+0.2ポイント)から0.8ポイント改善した。輸出入の推移を見ると(図表-7)、輸出の落ち込みは軽微で5月には早くも2桁増に戻った一方、輸入の落ち込みは長引き5月以降も低位に留まった。そして、貿易黒字が大幅に増えたためプラス寄与が拡大した。
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
3. 供給面
第2次産業は前年同期比0.9%増と前四半期の伸び(同5.8%増)を大幅に下回った。内訳では建築業は同3.6%増と前四半期の伸び(同1.4%増)を上回ったものの、製造業が同0.3%減とマイナスに落ち込んだ。鉱工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移を見ると(図表-9)、4月にはCOVID-19(第2波)で上海港が機能不全に陥ったことなどから前年同月比2.9%減と落ち込んだ。しかし、上海港の機能回復が順調に進んだため(図表-10)、「復工復産」に動きだした5月には同0.7%増とわずかながらもプラスに転じ、6月以降は3%台後半まで伸びが回復している。
第3次産業は前年同期比0.4%減とマイナスに落ち込んだ。COVID-19(第2波)の影響が軽微だった金融業は同5.9%増と前四半期の伸び(同5.1%増)をやや上回り、情報通信・ソフトウェア・ITも同7.6%増と比較的高い伸びを維持した。しかし、宿泊飲食業は同5.3%減、交通・運輸・倉庫・郵便業は同3.5%減、卸小売業も同1.8%減とマイナスに落ち込んだ。さらに、不動産規制強化で逆風下にある不動産業は同7.0%減と4四半期連続のマイナスとなった。不動産開発の先行指標として重要な分譲住宅の新規着工(面積)を見ても(図表-11)、前年の半分くらいの水準に落ち込んだままであり、引き続き経済成長を押し下げる要因となりそうである。
4. 財政金融政策
5. 中国経済の見通し
以上を踏まえて、2022年の経済成長率は実質で前年比3.4%増、2023年は同6.1%増と予想している(図表-16)。COVID-19に関しては上海での爆発的感染が収束したあとも、散発的には感染拡大が起きるものの、カギを握る上海のような中核都市での都市封鎖(ロックダウン)は回避できると想定している。また、現行のダイナミック・ゼロ政策と全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で打ち出した財政金融政策の基本方針を堅持し、景気テコ入れ策は23年度分地方特別債の前倒し発行などに小振りな景気対策にとどめ、金融政策に関しても住宅バブルを再膨張させない程度の小幅な利下げにとどめると前提している。そして、22年7-9月期は、前四半期にコロナ禍で落ち込んだ反動増(ロックダウンで積み残された受注の生産、リベンジ消費)で前期比年率15.2%増の高成長(前年同期比3.8%増)と見込む。その後10-12月期には反動増は収束も、地方特別債増発(23年度分前倒し1.5兆元)、インフラ基金や政策銀行の貸出枠増加などの景気対策の実施を織り込み、平準ペースより高めの前期比年率9.5%増(前年同期比4.7%増)と見込んでいる(図表-17)。そして、23年以降は前期比年率5%前後の巡行速度(=大規模な政策支援なしで無理なく成長できる水準)での経済成長に回帰と予想している。
メインシナリオを崩す下方リスクとしては、(1)上海のような中核都市でのロックダウン再発、(2)ロシアに対する経済制裁が中国にも波及が挙げられる。なお、当面はCOVID-19の第3波が襲来する恐れが排除できないため、(1)の発生確率が比較的高い。上海のような中核都市がロックダウンに追い込まれる事態となれば、22年の経済成長率は前年比2.5%増くらいに低下すると見られる。
一方、ポジティブ・サプライズとしては、(1)党大会を前倒ししウィズコロナに一歩前進すること、(2)不動産規制緩和とそれに伴う大幅利下げが挙げられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年08月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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