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- 貸出・マネタリー統計(22年7月)~銀行貸出の伸びが急回復、投信の増勢強まる
2022年08月09日
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1.貸出動向:経済活動再開・原材料高が資金需要を押し上げか
(貸出残高)
8月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、7月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.05%と前月(同1.47%)を大きく上回った。伸び率の上昇は2ヵ月連続で、伸び率の水準は昨年5月以来の高水準に当たる(図表1)。
先月にかけて円安が進行したことで、外貨建て貸出の円換算残高嵩上げが引き続き押し上げ要因となっている(図表3)。現に為替変動等を調整した特殊要因調整後の伸び率は6月の段階で前年比0.93%と調整前の伸び率(同1.47%)を0.55%下回っており(図表1)、円安が一層進んだ7月(未公表)は両者の乖離がさらに拡大しているものと推測される。また、貸出の伸び率に関しては、前年同月の伸び率が鈍化(前月0.75%→当月0.52%)したことで、比較対象のハードルが下がった面も押し上げに寄与している。従って、貸出の実勢は見た目ほど強いわけではないが、それを考慮しても増勢は強まっているとみられる。
8月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、7月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.05%と前月(同1.47%)を大きく上回った。伸び率の上昇は2ヵ月連続で、伸び率の水準は昨年5月以来の高水準に当たる(図表1)。
先月にかけて円安が進行したことで、外貨建て貸出の円換算残高嵩上げが引き続き押し上げ要因となっている(図表3)。現に為替変動等を調整した特殊要因調整後の伸び率は6月の段階で前年比0.93%と調整前の伸び率(同1.47%)を0.55%下回っており(図表1)、円安が一層進んだ7月(未公表)は両者の乖離がさらに拡大しているものと推測される。また、貸出の伸び率に関しては、前年同月の伸び率が鈍化(前月0.75%→当月0.52%)したことで、比較対象のハードルが下がった面も押し上げに寄与している。従って、貸出の実勢は見た目ほど強いわけではないが、それを考慮しても増勢は強まっているとみられる。
コロナ禍からの経済活動再開や原材料・エネルギー価格上昇(による仕入れコスト増)などが企業の資金需要に繋がっている可能性が高い。
業態別では、都銀の伸び率が前年比1.68%(前月は0.70%)と急伸したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸び率も同2.37%(前月は2.14%)とやや上昇している(図表2)。
業態別では、都銀の伸び率が前年比1.68%(前月は0.70%)と急伸したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸び率も同2.37%(前月は2.14%)とやや上昇している(図表2)。
(主要銀行貸出動向アンケート調査)
日銀が7月20日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2022年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断DIは3と前回(1-3月期)の0から上昇した同DIがプラス(「(やや)増加」とする回答が優勢)となったのは5四半期ぶりとなる。銀行から見た資金需要はやや持ち直した(図表5)。
企業規模別では、大企業向けが4(前回も4)、中小企業向けが1(前回も1)と各プラスを維持するなか(図表6)、中堅企業向けが3(前回は0)と回復した。大企業では、製造業向けが3(前回は7)と低下した一方で、非製造業向けが2(前回は▲2)とプラスに転じており、業種によって方向感にバラツキが見られる。
需要が「(やや)増加した」と答えた先にその要因を尋ねた問いでは、大企業・中堅企業向けでは「手許資金の積み増し」、中小企業向けでは「売上の増加」を挙げた先が最多であった。
一方、個人向け資金需要判断DIは▲5と前回の0から大きく低下し、コロナ禍初期で経済活動が急激に縮小した20年4-6月期以来のマイナス(「(やや)減少」とする回答が優勢)となった(図表5)。内訳では、住宅ローンが▲6(前回は▲1)と大きく低下している。(消費者ローンは前回同様▲1)。最近の住宅着工が伸び悩んでいることを反映し、「住宅投資の減少」を理由とする先が多かった。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けDIが8と増加する一方、個人向けDIが▲1と弱含む見立てになっている(図表5)。企業向け資金需要の回復見込みが、売上増に伴う運転資金や設備投資資金など前向きな資金需要を見込んだものなのか、それとも原材料高による仕入れコスト増やコロナ感染拡大による売上減少といった企業の苦境を懸念したものなのかは不明だ。
日銀が7月20日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2022年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断DIは3と前回(1-3月期)の0から上昇した同DIがプラス(「(やや)増加」とする回答が優勢)となったのは5四半期ぶりとなる。銀行から見た資金需要はやや持ち直した(図表5)。
企業規模別では、大企業向けが4(前回も4)、中小企業向けが1(前回も1)と各プラスを維持するなか(図表6)、中堅企業向けが3(前回は0)と回復した。大企業では、製造業向けが3(前回は7)と低下した一方で、非製造業向けが2(前回は▲2)とプラスに転じており、業種によって方向感にバラツキが見られる。
需要が「(やや)増加した」と答えた先にその要因を尋ねた問いでは、大企業・中堅企業向けでは「手許資金の積み増し」、中小企業向けでは「売上の増加」を挙げた先が最多であった。
一方、個人向け資金需要判断DIは▲5と前回の0から大きく低下し、コロナ禍初期で経済活動が急激に縮小した20年4-6月期以来のマイナス(「(やや)減少」とする回答が優勢)となった(図表5)。内訳では、住宅ローンが▲6(前回は▲1)と大きく低下している。(消費者ローンは前回同様▲1)。最近の住宅着工が伸び悩んでいることを反映し、「住宅投資の減少」を理由とする先が多かった。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けDIが8と増加する一方、個人向けDIが▲1と弱含む見立てになっている(図表5)。企業向け資金需要の回復見込みが、売上増に伴う運転資金や設備投資資金など前向きな資金需要を見込んだものなのか、それとも原材料高による仕入れコスト増やコロナ感染拡大による売上減少といった企業の苦境を懸念したものなのかは不明だ。
2.マネタリーベース:コロナオペ減が響き、伸び率が鈍化
8月2日に発表された7月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比2.8%と、前月(同3.9%)を下回り、4カ月連続で低下した(図表7)。伸び率は2020年4月以来の低水準に当たる。
低下の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金の伸び率が低下した(前月4.1%→当月2.8%)ことである。7月は市場の金利上昇圧力が緩和し、指し値オペの応札が減少したことから、長期国債買入れ額は5.4兆円と前月の16.2兆円から急減した(図表8)。そうした中、制度の一部打ち切りに伴ってコロナオペの残高の大幅な減少(▲11.8兆円)が続いたことが伸び率の押し下げ要因となった。
その他の内訳では、日銀券発行高の伸びが前年比2.9%(前月は3.2%)、貨幣流通高の伸びが前年比▲2.3%(前月は▲1.9%)とそれぞれ低下したこともマネタリーベースの伸び率低下に繋がった(図表7)。
なお、7月末時点のマネタリーベース残高は666兆円と前月末比で11.5兆円減少している。季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)でみても、前月比7.4兆円減となっている(図表10)。コロナオペの残高減少を主因として、月次での大幅な減少が続いている。
低下の主因はマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金の伸び率が低下した(前月4.1%→当月2.8%)ことである。7月は市場の金利上昇圧力が緩和し、指し値オペの応札が減少したことから、長期国債買入れ額は5.4兆円と前月の16.2兆円から急減した(図表8)。そうした中、制度の一部打ち切りに伴ってコロナオペの残高の大幅な減少(▲11.8兆円)が続いたことが伸び率の押し下げ要因となった。
その他の内訳では、日銀券発行高の伸びが前年比2.9%(前月は3.2%)、貨幣流通高の伸びが前年比▲2.3%(前月は▲1.9%)とそれぞれ低下したこともマネタリーベースの伸び率低下に繋がった(図表7)。
なお、7月末時点のマネタリーベース残高は666兆円と前月末比で11.5兆円減少している。季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)でみても、前月比7.4兆円減となっている(図表10)。コロナオペの残高減少を主因として、月次での大幅な減少が続いている。
コロナオペの残高は未だ50兆円以上存在していることから、今後もコロナオペの残高減少がマネタリーベースの伸び率押し下げ要因になり続けるだろう。いずれ、前年を割り込む可能性もある。
3.マネーストック:投資信託の増勢が強まる
8月9日に発表された7月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.38%(前月は3.31%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.98%(前月は2.95%)と、ともにわずかに上昇した(図表11)。伸び率の上昇はともに2カ月連続となる。
M3の内訳では、主軸である預金通貨(普通預金など・前月5.9%→当月5.9%)とCD(譲渡性預金・前月4.8%→当月4.8%)の伸び率が横ばい、現金通貨(前月3.1%→当月2.9%)の伸び率は低下したが、準通貨(定期預金など・前月▲2.3%→当月▲2.1%)のマイナス幅が縮小し、全体の伸び率上昇に寄与した。また、M2・M3ともに比較対象となる前年同月の伸び率が急低下し、前年比のハードルが下がったことも上昇に繋がった(図表12・13)。
M3の内訳では、主軸である預金通貨(普通預金など・前月5.9%→当月5.9%)とCD(譲渡性預金・前月4.8%→当月4.8%)の伸び率が横ばい、現金通貨(前月3.1%→当月2.9%)の伸び率は低下したが、準通貨(定期預金など・前月▲2.3%→当月▲2.1%)のマイナス幅が縮小し、全体の伸び率上昇に寄与した。また、M2・M3ともに比較対象となる前年同月の伸び率が急低下し、前年比のハードルが下がったことも上昇に繋がった(図表12・13)。
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(2022年08月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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