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韓国における所得格差の現状と分配政策-新しい尹政権の「選択的福祉」政策は所得格差を解消できるだろうか-
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
- 1997年のアジア経済危機以降、韓国社会では貧困と所得格差が社会的問題として浮上した。さらに、最近は新型コロナによるパンデミックが格差拡大の新しい要因になっている。
- 2018年における韓国の相対的貧困率(世帯所得が中央値の半分を下回っている人の割合、以下「貧困率」)は16.7%で2018年のデータが利用できるOECD平均の11.7%を大きく上回り、加盟国の中で5番目に高い数値を記録した。
- 統計庁の「家計金融福祉調査」による再分配所得ジニ係数は、2016年の0.355から2020年には0.331に大きく改善された。しかし、同期間における当初所得ジニ係数 は0.402から0.405に上昇している。
- フランスの経済学者トマ・ピケティ氏らが参加している「世界不平等研究所(World Inequality Lab)」が発表した「世界不平等報告書2022(World Inequality Report 2022)」によると、韓国では上位1%の富裕層の所得が全所得に占める割合は14.7%であった。更に上位10%で見ると、全体の46.5%を占めている。
- 韓国の貧困率がOECD加盟国の中でも相対的に高い理由は、高齢者の貧困率が高いこと、労働市場の「二重構造」(labor market dualization)が強まっていること、若者の雇用状況が改善されていないこと等が挙げられる。
■目次
・韓国社会における貧困と所得格差が深刻化
・高い高齢者貧困率が全体の貧困率を押し上げる要因に
・労働市場の「二重構造」が拡大
・就職難により若者の格差が拡大
・韓国政府の分配対策
・新しい尹政権は「選択的福祉」政策を推進する方針
・結論に代えて
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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