2022年06月23日

みるみる進む円安、そろそろ歯止めはかかるか?~マーケット・カルテ7月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 今月に入り、急速に円安ドル高が進行している。1ドル128円台でスタートしたドル円は、一時136円台後半と約24年ぶりの円安水準に下落し、足元も136円付近で推移している。米物価上昇の加速を受けてFRBが異例の大幅利上げに踏み切り、今後も積極的な利上げ方針を示す一方、日銀が金融緩和姿勢を堅持したことで日米金融政策の違いが鮮明化し、日米金利差拡大を通じて円安ドル高が進んだ。日本の貿易赤字が膨らんでいることも円売りに繋がっている。この間、米国をはじめとする各国の利上げが世界経済を冷やすとの警戒から、米金利低下を通じてドルが弱含む場面もたびたびあったが、ドル高基調が反転するまでには至っていない。

今後も夏の間は米物価上昇率が極めて高い水準で推移し、FRBは異例の大幅利上げを続ける可能性が高い。緩和を堅持する日銀との差が意識されやすい時間帯が続くとみられ、円は上下しつつも下落しやすい地合いが続きそうだ。1ドル140円への到達も視野に入る。ただし、秋口には米物価上昇率のピークアウト感や、米利上げ進行による景気後退懸念等によって次第にドル高圧力が和らいでいくと見ている。3か月後の水準は現状比やや円安の137円付近と見込んでいる。

今月のユーロ円は、ユーロ圏経済の減速懸念からユーロが弱含む場面を挟んだものの、ECBによる段階的な利上げの予告がユーロ高圧力となり、足元では1ユーロ143円台半ばと月初から5円程度円安が進んでいる。今後もECBの利上げがユーロの支援材料となるが、ユーロ圏はウクライナ侵攻の悪影響を受けやすいだけに、景気減速懸念も台頭しやすい。強弱材料の綱引きとなり、3ヵ月後の水準は現状比横ばい圏と予想している。

今月の長期金利は0.2%台前半から半ばでの膠着した展開となっている。米金利の上昇や一部による日銀の緩和縮小観測を受けて金利上昇圧力が高まったものの、日銀が連続指し値オペ等によって概ね0.25%以下へと力ずくで抑え込んでいるためだ。今後も米金利の高止まりが金利上昇圧力になるものの、緩和姿勢を崩さない日銀によって0.25%以下に抑えこまれるだろう。3か月後の水準も現状比横ばいの0.2%台前半と予想している。
 
(執筆時点:2022/6/23)

(2022年06月23日「基礎研マンスリー」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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