2022年06月17日

英国金融政策(6月MPC)-5会合連続の利上げを決定、1.25%へ

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.結果の概要:5会合連続での利上げを決定

6月15日、英中央銀行のイングランド銀行(BOE:Bank of England)は金融政策委員会(MPC:Monetary Policy Committee)を開催し、16日に金融政策の方針を公表した。概要は以下の通り。
 

【金融政策決定内容】
政策金利を1.25%に引き上げ(0.25%の利上げ、6対3で3人は1.50%への引き上げを支持)

【議事要旨(趣旨)】
政策金利のさらなる引き上げの幅(scale)、ペース(pace)、時期(timing)は委員会の経済見通しとインフレ圧力の評価を反映する

2.金融政策の評価:今後の利上げはデータ重視

イングランド銀行は今回のMPCで0.25%ポイントの利上げを決定した(1.00→1.25%)。昨年12月、今年2月、3月、5月の決定に続き5会合連続での利上げとなる。市場でも今回の0.25%ポイントの利上げが予想されており、予想通りの決定となった。

なお、決定に関して委員のうち3人は政策金利の0.50%ポイントの引き上げを支持した。この3人は前回も0.50%ポイントの利上げを支持しており、利上げ積極派の委員は、前回に続いて今回も引き続き利上げ幅を拡大すべきとの見方を続けた。

一方、声明の今後の金融姿勢に関するガイダンスについて、前回まで記載されていた「幾分かの引き締めが適切かもしれない」と記載は削除され、政策金利について「さらなる引き上げの幅、スピード、時期は委員会の経済見通しとインフレ圧力の評価を反映する」となり、今後も引き上げることが前提の記載ではあるが、経済環境・データ次第であるという姿勢を打ち出した。

前回会合では、利上げ慎重派の委員から「幾分かの引き締めが適切かもしれない」とのガイダンスが適切でないとの指摘もあったことから、利上げ積極派と慎重派の意見の開きが大きくなっていた(リスクバランスの評価にバラツキがあった)。新しいガイダンスは、タカ派(例えば、利上げ幅拡大)、ハト派(例えば、利上げ見送り)のいずれの行動も正当化できる記載となっている。

ただし、これまで外的要因によるインフレ(エネルギー価格や貿易財の高騰)のために「金融政策では防ぐことができない」としていた評価は削除され、サービス物価上昇率の高さやコア財上昇率がユーロ圏や米国よりも高いとして、国内要因のインフレに対する警戒感を強めている。また、経済分析のなかで賃金上昇が持続的になるリスクにも言及している。ガイダンスでも特にインフレの上方リスクを警戒し、必要があれば強力な行動を実施するとしており、需要減速よりもインフレ懸念が強まっていると見られる。政策としても、当面は引き締め姿勢が続くことになるように思われる。

3.金融政策の方針

今回のMPCで発表された金融政策の概要は以下の通り。
 
  • MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、経済成長と雇用を支援する
    • 委員会は政策金利(バンクレート)を1.25%に引き上げる(6対3で決定1、0.25%ポイントの引き上げ)、3名は0.50%ポイント引き上げ、1.50%にすることを主張した
 
1 今回反対票を投じたのは、ハスケル委員、マン委員、ソーンダース委員。前回も3名が反対票を投じており、反対者は同じ(ハスケル委員、マン委員、ソーンダース委員)で、0.50%ポイントの引き上げを主張した。
  • 5月のMPR(金融政策報告書)の中央見通しでは、英国のGDP成長率は見通し期間の前半に急激に減速し、労働市場は短期的にはひっ迫するものの、失業率は3年後には5.5%まで上昇すると予想されていた
    • CPIインフレ率は22年10-12月期に10%をやや上回る水準に達すると見られる。
    • 市場の政策金利予測と将来のMPCによるエネルギー価格前提の慣例のもと、CPIインフレ率は2年後には、とりわけ外部要因が解消することを反映して、2%をやや上回る水準まで低下し、3年後には、主に内需の弱まりを反映して、目標を下回ると見られる
    • その際、インフレ見通しのリスクは、上方に傾いているとされた
 
  • 5月の報告書以降の世界・国内の経済データは相対的に少ないが、金融市場では大きな動きがあった
    • 22年4-6月期の(英国ウエイトの)世界の成長率は、おおむね見通し通りになるものと見られる
 
  • 世界的なインフレ圧力は依然として強く、原油価格はさらに上昇した
    • 株式市場はこの期間に低下する一方、長短国債金利は上昇を続けている
 
  • 英国の4月のGDPは予想よりも弱く、一部はコロナ禍の検査追跡活動(Test and Trace)の更なる低下が反映されている
    • 中銀スタッフは総じて4-6月期のGDPが0.3%落ち込むと予想しており、5月報告書の予想よりも弱い
    • 消費者景況感はさらに落ち込んだが、他の家計支出指標は持ちこたえている
    • 企業景況感を示すいくつかの指標は弱かったが、現時点では消費者景況感より強さを維持しており、GDP成長率の基調がプラスであることと整合的である
 
  • 2-4月の失業率は、3.8%となり、雇用者は0.5%増加した
    • 非労働力人口比率(inactivity rate)はここ数か月で低下したものの、依然としてコロナ禍直前の水準よりは高い
    • 採用活動は引き続き困難で、労働需要は引き続き強い
    • 賃金伸び率の基調は強く、中銀エージェントの報告では、ボーナス支払が採用や雇用維持への対策として利用されている
    • これらの指標はすべて、引き続き労働市場のひっ迫と整合的である
 
  • 中銀スタッフは、政府による最近の政策支援策(Cost of Living Support package)は、それがない場合と比較して、導入1年目にGDPを約0.3%押し上げ、CPIインフレ率を0.1%ポイント押し上げると見られるが、政策の対象が集中していることや前倒しによる上方リスクがある
 
  • CPIインフレ率は3月の7.0%から4月には9.0%まで上昇し、これは5月報告書での予測に近く、また、MPCの声明と同時に公開された中銀総裁と財務相の間の書簡2を交わしている
    • インフレ率の2%からの上方乖離は主に、世界的なエネルギー価格の大幅上昇と他の貿易財価格の上昇を反映している
    • エネルギー価格は、ウクライナでの戦争によりさらに悪化し、農作物の卸売価格も急上昇した
    • 貿易財価格は、主に、コロナ禍によって財への需要や影響増え、供給制約は発生したことが要因である
 
2 インフレ率が目標から乖離した理由と今後のインフレ見通し、インフレ目標を達成するための金融政策手段について説明する書簡(インフレ率が目標(2%)から1%以上乖離した場合に公開が要求される)。
  • しかしながら、すべてのインフレ圧力が世界的要因から生じているわけでもない
    • 国内要因も作用しており、労働環境のひっ迫や企業の価格戦略などがこれに該当する
    • 消費者サービス物価のインフレ率は、財物価よりも国内要因からの影響が大きいと見られるが、ここ数か月強まっている
    • 加えて、英国のコア消費財物価上昇率は、ユーロ圏や米国のものよりも高い
 
  • CPIインフレ率は、今後数か月でさらに上昇が続くと見られ、また、10月には大幅に上昇し、11%をやや上回るだろう
    • 10月の上昇には、ガス電力市場監督局(Ofgem)が公共料金価格の上限を大幅に引き上げることで、家計のエネルギー価格が上昇することが反映されている
 
  • MPCの最新5月の報告書では、CPIインフレ率の上昇圧力は時間の経過とともに解消が進むと見られている
    • 主に、商品価格や貿易財価格が高水準でも安定することが反映されている
    • また、実質所得の弱さと金融引き締めの内需への影響も考慮されている
    • 金融政策はまた、長期の期待インフレ率を2%目標に固定するために実施されている
 
  • MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
    • この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
    • 経済はかなり大きなショックを繰り返し経験してきた
    • 金融政策により、これらのショックによる調整が発生した際の、生産量の望ましくない変動を最小限に抑え、CPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
 
  • 労働市場のひっ迫と、費用と価格の上昇圧力が続く兆しがあること、これらが継続するリスクのため、委員会は今回の会合で政策金利を0.25%ポイント引き上げ、1.25%とすることを決定した
 
  • MPCは、その責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すために必要な行動を実施するつもりである
    • 政策金利のさらなる引き上げの幅(scale)、ペース(pace)、時期(timing)は委員会の経済見通しとインフレ圧力の評価を反映する
    • 委員会は特に、インフレ圧力がさらに持続的になる兆候を警戒し、必要があれば、それに応じて強力な行動を実施する

4.議事要旨の概要

議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。
 
(需要と生産)
  • 実質可処分所得の縮小が家計景況感や支出にどれほど重しになっているかの指標は混在している
    • GfK消費者信頼感調査は5月にさらに減少し、08年中盤に記録した前回の最低水準を下回った
    • この弱さは過去(backward)および将来(forward)に関する構成指数のいずれでも幅広く広がっていた
    • しかし、その他の家計消費指標は持ちこたえている
    • 実質小売売上高は3月の1.2%減のあと、4月には1.4%増となった
    • より最近の指標は、サービス消費の冴えなかった海外旅行といった領域で回復が継続しており、レストラン予約なども底堅い
    • 住宅価格は、最近、高止まりが続いており、住宅市場活動は低迷した
 
  • 財務相は5月26日に150億ポンドの生活支援策を公表した
    • これには以下が含まれる
      • 低所得者向け社会保障給付の受給対象家計への650ポンドの一時金
      • 年金受給世帯への300ポンドの支払い
      • 障害給付金の受給対象家計への150ポンドの支払い
    • エネルギー費用支援策(Energy Bills Support Scheme)による還付(rebate)を倍増し、家計に200ポンドの支援を追加する
    • また、財務相は当初の200ポンドの還付を、後から請求することはないとの声明を行った
    • この声明の措置は、7月以降に社会保障給付の受給対象家計への支払いが始まり、今年の下半期から効果が生じる
    • 給付の受取は低所得者層に偏っている
 
(供給、費用、価格)
  • このまま推移すれば、最新の卸売ガス価格は、10月の公共料金上限が40%ほど押し上げられることを意味し、5月報告書の予測とほぼ同様である
    • 10月の上限価格を決定するための、6か月の観測期間のうち3分の2が経過した
    • 最近の意見募集を受けて、これからガス電力市場監督局(Ofgem)により上限価格の設定頻度を増やすかの決定が実施される
    • また、現在の観測期間を3週間増やす可能性もあり、これらは、10月の公共料金引き上げへの影響に関する追加の不確実性である
    • 10月以降、上限価格の設定を半期ではなく、四半期ごとに行うことは、最新の卸売ガス先物価格曲線を前提とすれば、CPIインフレ見通しに及ぼす影響は限定的である
 
  • 中銀エージェントの報告によれば、1年前と比較して妥結賃金の伸びはかなり高く、5%を超えており、今年初めに実施した賃金調査の予測値である4.8%をわずかに上回った
    • 企業のごく一部では、年央にさらにもう一度の賃金交渉を考えている
    • この最近の情報は、MPCの賃金上昇の中央見通しや5月の報告書で協調された域内の価格上昇圧力の上方リスクである
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
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(2022年06月17日「経済・金融フラッシュ」)

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