2022年05月31日

サステナビリティに関する意識と消費行動-意識はシニア層ほど高いが、Z世代の一部には行動に積極な層も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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3――サステナビリティについての意識や行動~意識はシニアで高く、行動はZ世代の一部で積極的

1全体の状況~半数以上が危機意識を持つがボランティア等の実施は約1割、ただしコロナ禍が契機にも
次に、サステナビリティについての意識や行動に関する項目をあげて、それぞれどう思うかをたずねたところ、そう思う(「そう思う」+「ややそう思う」)との回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」(60.8%)であり、次いで「サステナビリティについてすぐに取り組まないと手遅れになる」(46.4%)、「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(46.0%)、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(42.3%)と4割台で続く(図表4)。

一方、そう思わない・考えたことがない(「あまりそう思わない」+「そう思わない」+「考えたことがない」)との回答が最も多いのは「サステナビリティに関する情報を発信している」(69.2%)であり、次いで「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(62.5%)、「サステナビリティに関する情報を収集している」(56.4%)、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(55.3%)と半数以上で続く。なお、これらではそう思うとの回答は1割前後である。

つまり、サステナビリティについての意識に関する項目ではそう思うとの回答が多い一方、行動に関する項目ではそう思うとの回答が少ない(そう思わないとの回答が多い)傾向がある。なお、行動に関する項目で、そう思うとの回答が最も多いのは「サステナビリティを意識して生活をしている」(27.7%)だが3割未満にとどまる。
図表4 サステナビリティについての意識や行動(単一回答)(n=2,584)
以上より、半数以上の消費者は地球環境や社会問題に対して危機意識を持っているものの、サステナビリティを意識して生活をしている消費者は3割に満たず、情報の受発信やボランティア活動といった社会に広く影響を与えるような行動に取り組んでいる消費者は1割程度にとどまる。つまり、サステナビリティに対する高い意識は醸成されつつあるものの、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりがあるようだ。

なお、調査では、そう思うとの回答を得た項目について、意識や行動を始めた時期もたずねている。その結果、全ての項目で『コロナ禍の前から』の選択割合が高く、特に「地球環境や社会問題は他人事ではない」(70.8%)や「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(66.6%)、「サステナビリティについて今すぐに取り組まないと手遅れになる」(62.6%)、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(60.9%)は6割を超えて高い(図表5)。

一方、『コロナ禍をきっかけに』の選択割合が最も高いのは「サステナビリティに関する情報を発信している」(32.1%)であり、次いで「サステナビリティに関する情報を収集している」(28.9%)、「サステナビリティを意識して、具体的なボランティア活動をしている」(26.7%)、「コロナ禍の行動制約がなければ、サステナビリティを意識した活動をしたい」(26.5%)、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(26.3%)と約3割で続く。

つまり、サステナビリティについて高い意識を持っていたり、行動をしている消費者の多くはコロナ禍の前から意識したり、行動をし始めているものの、情報の受発信やボランティアなどの具体的な行動はコロナ禍をきっかけに始めたケースも比較的多い。
図表5 サステナビリティについての意識や行動を始めた時期(単一回答)
2性別の状況~女性の方が男性より意識は高いが、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりも
性別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、男女とも、そう思うとの回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」である(図表6)。
図表6 性年代別に見たサステナビリティについての意識や行動(単一回答)
男女を比べると、「地球環境や社会問題は他人事ではない」といった意識に関する項目では、そう思うとの回答はいずれも女性が男性を上回り、特に「地球環境や社会問題は他人事ではない」(男性49.8%、女性71.7%、女性が男性より+21.9%pt)や「地球環境や社会問題に積極的に取り組む人は意識が高いと思う」(同34.0%、同50.6%、同+16.6%pt)、「サステナビリティについてすぐに取り組まないと手遅れになる」(同39.5%、同53.2%、同+13.7%pt)、「サステナビリティを話題にする人は意識が高いと思う」(同28.1%、同39.9%、同+11.8%pt)、「社会の一員として、何か社会のために役立ちたい」(同40.5%、同51.5%、同+11.0%pt)で1割以上の差がひらく。

一方、行動に関する項目では、女性では「サステナビリティを意識して生活をしている」(同24.0%、同31.4%、同+7.4%pt)や「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」(同14.5%、同18.1%、同+3.6%pt)などで男性を上回るが、いずれもそう思うとの回答は2~3割にとどまる。

男性では「サステナビリティに関する情報を発信している」(男性10.0%、女性6.9%、男性が女性より+3.1%pt)や「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(同14.4%、同11.7%、同+2.7%pt)などで女性をやや上回るが、そう思うとの回答は1割程度にとどまる。

つまり、女性の方が男性よりサステナビリティについての意識が高く、具体的な行動を実施している傾向があるものの、全体と同様、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりがあるようだ。

また、意識や行動を始めた時期については、全体と同様、男女とも全ての項目で『コロナ禍の前から』が多いが、行動に関する項目では『コロナ禍をきっかけに』が比較的多い(図表略)。

なお、男女を比べると、女性では「サステナビリティを意識して生活をしている」で『コロナ禍の前から』(男性52.3%、女性60.9%、女性が男性より+8.6%pt)が、「サステナビリティに関する情報を発信している」で『コロナ禍をきっかけに』(同29.7%、同35.6%、+5.9%pt)の選択割合が男性を上回る。
3年代別の状況~シニアで意識高く、20歳代で行動に積極的(ただし約2割)でコロナ禍が契機にも
年代別に見ても、全体と傾向はおおむね変わらず、全ての年代で、そう思うとの回答が最も多いのは「地球環境や社会問題は他人事ではない」である。

年代による違いを見ると、「地球環境や社会問題は他人事ではない」といった意識に関する項目では、高年齢層の方がそう思うとの回答が多い傾向があるが、「地球環境や社会問題に積極的に取り組む企業や組織で働きたい」については若いほど多い。

一方、「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」といった行動に関する項目では、おおむね50歳代を底に20歳代やシニア層でそう思うとの回答が多い傾向がある。特に、20歳代では「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」(22.7%)や「サステナビリティに関する情報を発信している」(18.1%)の高さが目立ち、どちらも50歳代を1割以上上回る。

よって、前節で見たサステナビリティについてのキーワードの認知状況もあわせて考えると、シニア層の方がサステナビリティについての知識があり、高い意識を持つものの、Z世代を含む20歳代の方がボランティア活動や情報の発信などの具体的な行動に積極的に取り組んでいる傾向がある。ただし、20歳代でも具体的な行動に取り組んでいる割合は2割程度にとどまるため(細かく見ると、「サステナビリティを意識してボランティア活動をしている」についてそう思う割合は20~24歳21.7%、25~29歳23.0%)、世間で言われる「Z世代はサステナブル意識が高い」という印象は、世代全体というよりもZ世代の一部に存在する積極層の行動によるものと見られる。

また、意識や行動を始めた時期については、全ての年代で全体と同様、意識に関する項目を中心に、おおむね『コロナ禍の前から』が多いが、30歳代を中心に行動に関する項目で『コロナ禍をきっかけに』が比較的多い傾向がある(行動に関する項目のみ図表7)。

30歳代では「サステナビリティに関する情報を発信している」や「サステナビリティについて家族や友人と話すことがある」で『コロナ禍をきっかけに』の選択割合が『コロナ禍の前から』を上回る。また、20歳代では「サステナビリティに関する情報を発信している」で両者が同じ値を占める。ただし、いずれも「分からない・意識したことがない」の選択割合も3割程度を占めて比較的高いため、若い年代ではコロナ禍をきっかけにサステナビリティに関わる行動を始めた層が他年代より多い傾向があるものの、うっすらとした傾向という程度の認識が適当だろう。
図表7 年代別に見たサステナビリティに関わる行動を始めた時期(単一回答)
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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