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サステナビリティに関する意識と消費行動-意識はシニア層ほど高いが、Z世代の一部には行動に積極な層も
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
1――はじめに~近年、高まるサステナビリティに関する意識、その実態は?
本稿では、ニッセイ基礎研究所が今年3月末に実施した調査1を用いて、消費者のサステナビリティに関する意識や日頃の消費行動について、性年代による違いに注目しながら見ていきたい。
1 「第8回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」、調査時期は2022年3月23日~29日、調査対象は全国に住む20~74歳、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,584。
2――サステナビリティについてのキーワードの認知状況~SDGsが首位、年齢が高いほど認知度は高い
調査ではサステナビリティについての約30のキーワードをあげて、『聞いたことがある』ものと『内容まで知っている』ものについてたずねた。
まず、『聞いたことがある』ものについては、最も多いのは「SDGs」(68.3%)であり、次いで「再生可能エネルギー」(58.4%)、「カーボンニュートラル」(43.4%)、「コンプライアンス(法令遵守)」(42.7%)、「ダイバーシティ」(41.2%)、「地方創生」(40.2%)と4割以上で続く(図表1)。
なお、「聞いたことがあるものはない」も17.6%を占めて目立つ。
『内容まで知っている』ものについても、上位には同様のものが並び、最も多いのは「SDGs」(39.7%)であり、次いで「再生可能エネルギー」(31.6%)、「コンプライアンス(法令遵守)」(26.8%)、「LGBTQ」(25.6%)、「カーボンニュートラル」(20.6%)と2割以上で続く。
なお、「内容まで知っているものはない」(40.2%)は、『内容まで知っている』もので最多の「SDGs」を超えて約4割を占める。
なお、『聞いたことがある』もののうち『内容まで知っている』との回答が占める割合が最も高いのは「LGBTQ」(68.8%)であり、次いで「コンプライアンス(法令遵守)」(62.8%)、「SDGs」(58.1%)、「フェアトレード」(57.6%)、「児童労働・強制労働」(56.3%)、「再生可能エネルギー」(54.1%)、「ワーケーション」(50.4%)、「コーポレートガバナンス」(50.0%)と半数以上で続く。
さらに、男性では「CSR」(同15.2%、同5.5%、同+9.7%pt)や「ESG」(同11.7 %、同4.7%、同+7.0%pt)、「カーボンニュートラル」(同46.9%、同40.0%、同+6.9%pt)、「スマートシティ」 (同33.9%、同28.0%、同+5.9%pt)、「生物多様性」(同26.8%、同21.3%、同+5.5%pt)で女性を5%pt以上上回る。
一方、女性では「フェアトレード」(男性26.2%、女性36.0%、女性が男性より+9.8%pt)や「エシカル消費」(同12.5%、同19.0%、同+6.5%pt)、「再生可能エネルギー」(同55.8%、同61.1%、同+5.3%pt)で男性を5%pt以上上回る。
つまり、男性では企業活動に関連するキーワード、女性では日常の消費生活に関連するキーワードの認知度が高い傾向がある。なお、当調査では男性の就業率は79.9%、女性は53.2%である。
なお、『内容まで知っている』ものについて性別に見ても同様の傾向がある(図表略)。
『聞いたことがある』ものについて年代別に見ても、全体と順位はおおむね変わらず、全ての年代で首位は「SDGs」、次いで「再生可能エネルギー」があがる。
また、全体で上位10位までのキーワードを中心に年代による違いを見ると、「LGBTQ」や「フェアトレード」は40・50歳代を中心に、その他は高年齢ほど選択割合は高い傾向がある。差の大きな70~74歳と20歳代を比べると、70~74歳では「地方創生」(20歳代27.2%、70~74歳66.7%、70~74歳が20歳代より+39.5%pt)で約4割、「再生可能エネルギー」(同44.0%、同78.7%、同+34.7%pt)や「コンプライアンス(法令遵守)」(同24.9 %、同58.9%、同+34.0%pt)、「カーボンニュートラル」(同26.9%、同54.6%、同+27.7%pt)で3割程度、20歳代を上回る。
ただし、当調査で調査対象とした70~74歳はインターネット調査のモニターであるため、同年代と比べてITリテラシーが高く、世の中への興味関心も高い可能性があることを考慮する必要があるだろう。なお、総務省「令和2年通信利用動向調査」によると、70~74歳の過去1年間でインターネットを利用したことのある割合は66.2%である。
また、『内容まで知っている』ものについて年代別に見ても同様の傾向がある(図表略)。
ところで、よく世間では「Z世代はサステナブル意識や社会貢献意識が高い」と言われるようだが、当調査では、人生経験が長く、社会課題等について幅広い知識を蓄えていると見られる高年齢層ほどサステナビリティについてのキーワードをよく認識しているという結果を示している。
なお、内閣府「社会意識に関する意識調査」を見ても、「日頃、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っている」割合は50歳代(67.9%)を中心に高く、必ずしも若者(18~29歳56.4%)で高いわけではない(図表3)。
一方で、同じ設問についての20歳代の選択割合は、1980年前後は3割台、1990年代は4割台、2000年代以降に半数を超えて上昇しているため(図表略)、現在の50歳代が20歳代だった頃と比べれば、Z世代を含む今の20歳代の方が社会貢献意識は高いと言える。よって、「昔の若者と比べると、Z世代を含む今の若者はサステナブル意識が高い」という見方が適当だろう。
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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