2022年05月18日

QE速報:1-3月期の実質GDPは前期比▲0.2%(年率▲1.0%)-消費、外需の悪化で2四半期ぶりのマイナス成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 1-3月期は前期比年率▲1.0%と2四半期ぶりのマイナス成長

本日(5/18)発表された2022年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.2%(前期比年率▲1.0%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった(当研究所予測4月28日:前期比▲0.5%、年率▲2.1%)。

まん延防止等重点措置の影響で、外食、宿泊などの対面型サービスを中心に民間消費が前期比▲0.0%と小幅な減少となる中、外需寄与度が前期比▲0.4%(年率▲1.7%)と成長率を大きく押し下げた。高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比0.5%と2四半期連続で増加し、ワクチン接種の進捗を反映し政府消費が同0.6%の増加となったが、消費、外需の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。
 
名目GDPは前期比0.1%(前期比年率0.4%)と2四半期連続で増加し、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前期比0.4%(10-12月期:同▲0.6%)、前年比▲0.4%(10-12月期:同▲1.3%)となった。国際商品市況高騰の影響で輸入デフレーターが前期比3.3%となり、輸出デフレーターの伸び(前期比1.2%)を上回ったことがGDPデフレーターの押し下げ要因となったが、輸入物価の上昇を国内に価格転嫁する動きが広がり、国内需要デフレーターが前期比0.9%の上昇(10-12月期:同0.0%)となった。
<需要項目別結果>
2022年1-3月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2021年4-6月期から10-12月期までの実質GDP成長率がいずれも下方修正された。(2021年4-6月期:前期比年率2.4%→同2.1%、7-9月期:前期比年率▲2.8%→同▲2.9%、10-12月期:前期比年率4.6%→同3.8%)

この結果、2021年度の実質GDP成長率は2.1%(2020年度は▲4.5%)、名目GDP成長率は1.1%(2020年度は▲3.9%)となった。実質では3年ぶり、名目では2年ぶりのプラス成長だが、前年度の大幅な落ち込みを踏まえれば回復ペースは極めて緩やかなものにとどまった。
実質GDPと実質GDIの推移 なお、輸出入デフレーターの差によって生じる所得の実質額を表す交易利得は前期差▲2.3兆円(10-12月期は同▲3.3兆円)と5四半期連続で減少した。この結果、実質GDPに交易利得を加えた実質GDIは前期比▲0.7%(前期比年率▲2.7%)となり、実質GDPの伸びを大きく下回った。

原油をはじめとした資源価格高騰に伴う交易条件の悪化によって、海外への所得流出が続いている。2021年度の交易利得は前年度から▲10.5兆円の悪化となり、2021年度の実質GDIは0.1%とほぼゼロ成長にとどまった。

2022年度入り後、原油高、円安が一段と進んでいるため、交易利得の減少幅はさらに拡大する可能性が高い。
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比▲0.0%と2四半期ぶりの減少となった。まん延防止等重点措置の影響で、外食、宿泊などの対面型サービス消費が低迷したことに加え、供給制約の影響が残る中で自動車販売も弱い動きが続いた。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、食料品などの非耐久財は前期比1.0%と2四半期ぶりに増加したが、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスが前期比▲0.2%と小幅な減少となったことに加え、自動車、家電などの耐久財(前期比▲1.6%)、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲1.8%)も減少した。

雇用者報酬は名目・前年比0.7%(10-12月期:同1.0%)、実質・前年比0.0%(10-12月期:同1.2%)となった。消費デフレーターの伸びが高まったことが実質の伸びを大きく押し下げた。
 
住宅投資は前期比▲1.1%と3四半期連続で減少した。名目では前期比0.2%と5四半期連続で増加したが、資材価格の高騰を反映し、住宅投資デフレーターが前期比1.3%(前年比では9.3%)の高い伸びとなり、実質の伸びを押し下げた。
 
設備投資は前期比0.5%と2四半期連続で増加したが、2021年7-9月期の大幅減少(前期比▲2.4%)の後としては、10-12月期の同0.4%に続き低い伸びにとどまった。設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しているが、部品不足などの供給制約の影響が残っていることが、抑制要因になっていると考えられる。
 
公的固定資本形成は前期比▲3.6%と5四半期連続で減少した。公的固定資本形成は、災害復旧や国土強靭化関連工事の進捗を反映し増加傾向が続いてきたが、2020年末頃をピークに減少している。
 
外需寄与度は前期比▲0.4%(前期比年率▲1.7%)と3四半期連続ぶりのマイナスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比1.1%の増加となる一方、ワクチン購入による押し上げもあり、財貨・サービスの輸入が前期比3.4%と輸出の伸びを上回ったことから、外需は成長率の押し下げ要因となった。
20224-6月期は高成長が見込まれるが、下振れリスクは大きい)
2022年1-3月期の実質GDPは、コロナ前(2019年10-12月期)の水準を▲0.7%下回っている。

まん延防止等重点措置が3/21で終了したことを受けて、3月下旬以降は人出が持ち直しており、GWにはコロナ前の水準を上回った。物価高による家計の実質購買力低下が下押し要因となっているが、行動制限の解除に伴う消費性向の上昇によって、足もとの個人消費は外食、宿泊などの対面型サービスを中心に持ち直しているとみられる。

2022年4-6月期は、ロックダウンが実施されている中国向けを中心に輸出が減少するものの、対面型サービスを中心に民間消費が高い伸びとなることから、前期比年率4%台のプラス成長となり、実質GDPはコロナ前の水準を回復すると予想している。

ただし、資源価格の一段の高騰、米国の金融引き締め、中国のゼロコロナ政策、ロシアからのエネルギー供給途絶に伴う電力不足など、下振れリスクは大きい。また、新型コロナウイルス感染症を完全に終息させることは困難であり、新規陽性者数は今後も増減を繰り返すことが見込まれる。感染拡大のたびにこれまでと同様に行動制限の強化を繰り返せば、消費の持続的な回復は実現しないだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年05月18日「Weekly エコノミスト・レター」)

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