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消費者の考える1年後の行動や働き方の予測-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」より
基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.301]

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1―1年後の外出行動や働き方は?
ニッセイ基礎研究所が20~74歳を対象に実施した調査*1では、1年後もマスク着用などの新しい生活様式が定着していることについて、そう思うと回答した割合は2021年12月で72.2%を占め、7月(66.3%)より上昇している[図表1]。背景には、12月の調査時点では国内の感染者数はまだ抑えられていたが、海外ではオミクロン株による爆発的な感染拡大が進行していたことなどがあるのだろう。
つまり、生活者の約4割は1年後に外出行動が再開していると考えているが、肯定的な見方は弱まっている。ウイルスの変異種が次々と登場することで、感染状況下では同居家族以外とのコミュニケーションに制約を感じる生活者も多いのだろう。
働き方については、12月では出張が減り遠隔地とのオンライン会議が増えることについては45.4%、テレワークと併用した働き方が主流になることについては38.7%がそう思うと答えており、どちらも7月と同程度である。一方、勤め先での飲み会や会食の再開については12月で27.5%と、他項目と比べてそう思う割合は低く、また、7月より低下している。
つまり、テレワークの浸透についての見方は7月の時点で既にある程度定まっていたが、長引くコロナ禍で職場での食事を介したコミュニケーションについては肯定的な見方は弱まっているようだ。
*1 2020年6月からおよそ3ヶ月毎に実施。調査対象は全国に住む20~74歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用。
2―属性別に見た外出行動再開の予測
つまり、女性の方が男性より1年後に外出行動が再開すると思っている。なお、昨年の秋以降、感染状況が改善した時期に再開した外出行動をたずねた結果でも、女性の方が積極的に行動を再開していた*2。この背景には、従来から女性の方が消費意欲は旺盛であること、また、男性より就業率が低く、比較的時間のゆとりがあることなどがあげられる。
年代別に見ると、新しい生活様式の定着について、そう思う割合は高年齢ほど高く、70~74歳(86.6%)では最も低い20歳代(63.3%)を2割以上上回る。長引くコロナ禍で、やはり重篤化リスクの高い高年齢層ほど今後とも感染予防対策の必要性を強く感じているようだ。
外出行動の再開については、そう思う割合は40歳代前後を底に、シニア層と若者で高い傾向がある。
この背景には、シニアは無職が多く、若者は学生も含まれるため、どちらも比較的時間のゆとりがあるために行動再開に積極的であることに加えて、シニアはコロナ禍で外出自粛傾向が強いために期待感が強いこと、若者は感染による重篤化リスクが低いことから外出行動に積極的であることなどがあげられる。
*2 久我尚子「感染拡大収束後の消費行動」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2022/2/4)
一方、勤め先での飲み会や会食の再開については、そう思う割合は男女とも3割弱で同程度である。
年代別に見ると、テレワークと併用した働き方が主流になることについては、そう思う割合は年代による大きな違いは見られず、いずれも約4割を占める。
一方、出張が減りオンライン会議が増えることについては、そう思う割合は30歳代以上では高年齢層ほど高い。
また、コロナ前のように勤め先で飲み会等が実施されることについては、そう思う割合は50歳代を底に若い年代や高年齢層ほど高い傾向がある。この背景には消費行動の再開でも述べた通り、若者は重篤化リスクが低いために飲み会等にも積極的であり、期待感が強いことがあげられる。シニア層については無職が多いために、自分自身のことというよりも世間一般のことを想定して回答した者が多い影響があるだろう。
就業形態別に見ると(図略)、非正規雇用者や自営業より正規雇用者、特に管理職以上でテレワークが浸透するという見方が強い。これは、非正規雇用者や自営業・自由業では、正規雇用者と比べてテレワークの対応が難しい対面型サービス業の従事者が多いこと、また、正規雇用者の中でも管理職以上は組織においてテレワークを推進する立場にある者が多いことに加えて、在宅勤務の利用をはじめ日頃の業務における裁量の幅が大きく、現場業務が比較的少ないために在宅勤務を活用しやすいことなどがあげられる。
勤め先での飲み会等の再開についても、同様に正規雇用者の管理職以上で肯定的な見方が強く、そう思う割合は40.3%を占める。テレワークが浸透すると考えているだけに、管理職としては職場でのコミュニケーションの大切さも同時に感じているのかもしれない。
4―おわりに
一方で生活習慣や外出行動については、今後の感染状況の推移や、ワクチンや治療薬などの対応で、どの程度、制御が可能となっていくのかに大きく影響される。
消費行動の中にはネットショッピングや中食需要の高まりなど、働き方と同様にコロナ禍前からの変化が加速したものもある。しかし、旅行や外食、会いたい人と会うことなどは、その時、その場所で、そこでしか感じられない空気を、臨場感を持って、五感で楽しむこと自体が目的の行動だ。
将来的にはメタバースやバーチャル・リアリティの進展で、現在のリアル行動の代替手段の水準は格段に上がり、新たな付加価値を持つ形にも成長していくだろう。一方で、1年後、3年後の近い将来においては、今後のウイルスの制御状況次第では、むしろリアルの価値が再認識されることで、大きく揺り戻しが生じる可能性もある。特に、コロナ禍で人との交流に制約がある中では、リアル・コミュニケーションを楽しむ場への需要が強いのではないか。
(2022年04月07日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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