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- 商業施設売上高の長期予測(1)-コロナ禍で進んだ「コト消費からモノ消費へのシフト」と「ECシフトの加速」
2022年04月04日
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3――消費チャネルの変化:ECシフトの加速
6 物販系分野の消費者向けEC市場規模。「電子商取引に関する市場調査」では、物販系、サービス系、デジタル系の3分野の消費者向けEC市場規模が公表されている。2020年のEC市場規模は、物販系12.2兆円(前年比+21.7%)、サービス系4.6兆円(▲36.1%)、デジタル系2.5兆円(+14.9%)と、コロナ禍による外出自粛を背景に物販系が急拡大する一方、旅行サービスの急減に伴い、サービス系分野が大幅に減少した。3分野合計のEC市場規模は19.3兆円(▲0.4%)と、横ばいとなった。
7 2020年9月にEC支出額は前年比+21.9%と一時的に減速した。
また、2020年に加速したECシフトは、足もとで鈍化傾向にあるものの、食料品などはコロナ以前を上回る高い伸びを維持している。2019年から2021年にかけてのEC支出額変化率(前年比)をみると、「食料」(+15.4%→+55.9%→+36.4%)と「健康食品」(+6.3%→+19.4%→+14.1%)は、2021年においても2019年の2倍以上の伸び率となっている(図表10)。これに対して、「食料」と「健康食品」以外の品目では、EC拡大ペースはコロナ以前の水準に戻っている。なかでも、「家具」(+12.8%→+56.8%→+2.8%)や「家電」(+25.7%→+55.6%→▲2.8%)は、在宅関連の耐久財支出の反動減が大きく、EC支出額の伸び率は2019年を下回る水準へと急低下している。
2|年齢別にみたECシフト: 高年層のEC普及が進む
EC支出額の伸び率は、高年層の方が若年層・中年層より大きく、ECシフトの加速が一服した2021年においても、高年層はコロナ以前の水準を上回っている。EC支出額が急増した2020年4-6月期に、増加率が最も高かったのは「70~79歳」(前年同期比+75.2%)、次いで「80歳~」(+71.9%)であった(図表11)。2021年10-12月期においても「70~79歳」(+28.9%)や「80歳~」(+28.9%)といった高齢層は、2019年を上回る伸び率を維持している。これに対して、若年層と中年層のEC支出額の伸び率は、2021年4-6月期以降、コロナ以前の水準まで減速している。
EC支出額の伸び率は、高年層の方が若年層・中年層より大きく、ECシフトの加速が一服した2021年においても、高年層はコロナ以前の水準を上回っている。EC支出額が急増した2020年4-6月期に、増加率が最も高かったのは「70~79歳」(前年同期比+75.2%)、次いで「80歳~」(+71.9%)であった(図表11)。2021年10-12月期においても「70~79歳」(+28.9%)や「80歳~」(+28.9%)といった高齢層は、2019年を上回る伸び率を維持している。これに対して、若年層と中年層のEC支出額の伸び率は、2021年4-6月期以降、コロナ以前の水準まで減速している。
4――「コト消費からモノ消費へのシフト」と「ECシフトの加速」は2020年にピーク
コロナ禍では、「コト消費からモノ消費へのシフト」が進んだが、2021年には一部に揺り戻しの動きが見られる。また、品目や年齢別にみると、その変化の内容は決して一律ではない。品目別では、「外食」の代替先として「食料」の支出額が増加した一方、在宅環境改善のための耐久財需要は一巡している。また、年齢別では、コロナ禍の収束が見通せないなかでも、若年層と中年層ではモノ消費からコト消費への回帰が見られる。これに対して、高年層ではそもそも「コト消費からモノ消費へシフト」したわけではなく、外出を自粛しコト消費とモノ消費をともに減らしている。コロナ禍が収束すれば、若年層と中年層ではコト消費への回帰が加速すること、高年層でもコト消費の回復が期待されるが、コロナ以前の水準に戻るかどうかについて、現時点で判断することは難しい。
2020年に加速したECシフトは、2021年に入りコロナ以前のペースまで鈍化している。しかし、もともとEC化率が低い品目や年齢層にEC普及が進んだことで、今後のEC拡大ペースが速まるかもしれない。これまで、実物を見て選びたいとのニーズから食料品のEC化率は低かったが、コロナ禍を経て急拡大した。また、高年層のEC支出額は他の年代より大きい伸び率を維持しており、こうした傾向は今後も継続する可能性がある。
コロナ禍における「コト消費からモノ消費へのシフト」と「ECシフトの加速」は2020年にいったんピークを迎えた可能性がある。しかし、コロナ以前の水準にどこまで戻るかは、依然として予断を許さず、今後の動向を注視する必要がありそうだ。
続いて次稿では、本稿の考察をベースに今後の商業施設売上高をシミュレーションしたい。
2020年に加速したECシフトは、2021年に入りコロナ以前のペースまで鈍化している。しかし、もともとEC化率が低い品目や年齢層にEC普及が進んだことで、今後のEC拡大ペースが速まるかもしれない。これまで、実物を見て選びたいとのニーズから食料品のEC化率は低かったが、コロナ禍を経て急拡大した。また、高年層のEC支出額は他の年代より大きい伸び率を維持しており、こうした傾向は今後も継続する可能性がある。
コロナ禍における「コト消費からモノ消費へのシフト」と「ECシフトの加速」は2020年にいったんピークを迎えた可能性がある。しかし、コロナ以前の水準にどこまで戻るかは、依然として予断を許さず、今後の動向を注視する必要がありそうだ。
続いて次稿では、本稿の考察をベースに今後の商業施設売上高をシミュレーションしたい。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2022年04月04日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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