2022年03月31日

どんな人が電力会社や携帯電話会社を料金が安い会社に変えたか?-男女/年齢層/学歴/年収層別の変更者の割合-

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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1――はじめに

2016年4月の電力の小売全面自由化に伴い、家庭で電力会社を選べるようになった1。また、その1年後の2017年4月には、ガスの小売全面自由化に伴い、家庭でガス会社も選べるようになった2。さらに、2021年の春には、政府の方針を受けて、携帯電話会社は様々な低価格プランの提供を始めた3

こうした中で、どういった人が電力会社やガス会社、携帯電話会社を、料金が安い会社に変更したのか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が行った独自の調査をもとに、男女/年齢層/学歴/年収層別に電力会社やガス会社、携帯電話会社を変えた人の割合を確認した結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、年収の高い人の間で電力会社やガス会社、携帯電話会社を変更した人の割合は大きい傾向が見られた。

2――調査概要

2――調査概要

本調査は、2021 年の 3 月に WEB アンケートによって実施した。回答は、全国の 26~65歳の男女4を対象に、全国 6 地区の調査対象者の性別・年齢階層別(10 歳ごと)の分布を、令和2 年 1 月の住民基本台帳の分布に合わせて収集した。回答数の合計は 2,601件である。
 
4 マイボイスコム株式会社のモニター会員

3――電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた人

3――電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた人

図1に、電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた人の割合5を、男女/年齢層別に示した。全体では、約3割の人が該当した。男女別にみると、男性の割合の方が少し大きいが、年収や学歴、職業、在住都道府県等の条件を一定として比較すると、男女に統計的に有意な差は見られなかった6。また、年齢層別にみると、男性では50代、女性では50代60代の人の間で該当者の割合が大きい7
図1. 「電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた」人の割合(男女/年齢層別)
次に図2に、電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた人の割合を、大卒非大卒/年収層別に示した。大卒者と非大卒者を比べると、大卒者の方の割合が少し大きいが、年収や職業、在住都道府県等の条件を一定として比較すると、大卒者と非大卒者の間に統計的に有意な違いは見られなかった8。一方、年収層別にみると、年収の高い人の間で該当者の割合は大きい傾向が確認された9
図2. 「電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた」人の割合(大卒非大卒/年収層別)
 
5 「電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を選択した人の割合を表示。
6 「電力会社やガス会社を、料金が安い会社に変えた」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、説明変数に、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性ダミーは有意水準10%で統計的に有意ではなかった。
7 注6の推計では、50代と60代の人が該当する確率が有意水準10%で統計的に有意に高かった(参照カテゴリーは20代、50代と60代のカテゴリーのp値はそれぞれ0.1未満)
8 注6の推計では、大卒ダミーは有意水準10%で統計的に有意ではなかった。
9 注6の推計では、年収の高い人において該当する確率が高くなることが確認された(年収130万円未満を参照カテゴリーとした場合、500万円~700万円のカテゴリーでは係数0.09、p値0.05未満、700万円以上のカテゴリーでは係数0.14、p値0.01未満)。

4――携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた人

4――携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた人

次に図3に、携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた人の割合10を男女/年齢層別に示した。男女で大きな違いは見られないことが確認できる。年齢層別にみると女性20代および男性30代で高く、女性50代および男性60代の人の間で該当者の割合が低い11
図3. 「携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた」人の割合(男女/年齢層別)
さらに図4に、携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた人の割合を大卒非大卒/年収層別に示した。大卒者と非大卒者を比較すると、大卒者の方が該当者の割合が少し大きいが、年収や職業、在住都道府県等の条件を一定として比較すると、大卒者と非大卒者の間に統計的に有意な違いは見られなかった12。年収については、年収の高い人の方が該当者の割合は大きい傾向が見られる13
図4. 「携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた」人の割合(大卒非大卒/年収層別)
 
10 「携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を回答した人の割合を表示。
11 「携帯電話会社を、料金が安い会社に変えた」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性ダミーについても年齢層カテゴリーダミー(20代が参照カテゴリー)についても、10%有意水準で統計的に有意ではなかった。
12 注11の推計では、大卒ダミーは有意水準10%で統計的に有意ではなかった。
13 注11の推計では、年収の高い人において該当する確率が高くなることが確認された(年収130万円未満を参照カテゴリーとした場合、500万円~700万円のカテゴリーでは係数0.09、p値0.1未満、700万円以上のカテゴリーでは係数0.12、p値0.01未満)

5――おわりに

5――おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が行った独自の調査結果から、年収が高い人の間で、電気/ガス/携帯電話会社を変更した人の割合が大きい傾向を確認した。また、ポイントの活用やGo Toなどの政策については、年収が高い人の間で利用している傾向が見られたことに加えて、女性の方が利用している傾向が見られたが14、電気/ガス/携帯会社の変更を行った人の割合に、男女差は見られなかった。加えて、50代60代の人が電気会社やガス会社を変更した傾向が見られた。

これらの背後にある要因の検証は今後の課題であるが、50代60代の人の間で電気会社やガス会社を変更した人の割合が大きいのは、電気代やガス代の値上がりを実感してきた世代であるという可能性が考えられるかもしれない。また、年収が高い人の方が会社を変更している傾向からは、変更作業には、生活へのゆとりや金融リテラシーを必要とする可能性が示唆されるかもしれない。
 
14 岩﨑敬子(2022年3月29日)「どんな人が「ポイント」を利用しているか?-男女/年齢層/学歴/年収層別の利用者の割合-」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70681?site=nli
岩﨑敬子(2022年3月30日)「どんな人がGo To/マイナポイント/ふるさと納税を利用したか?-男女/年齢層/学歴/年収層別の利用者の割合-」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70692?site=nli
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

(2022年03月31日「基礎研レター」)

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