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パワーカップル世帯の動向-コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労
基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.298]
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
1―世帯の所得分布の全体像
パワーカップルの状況を捉える前に、まず、世帯の所得についての全体像を確認する。厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」によると、総世帯(5,179万世帯)の年間平均所得は552万円、中央値は437万円である。高所得世帯に注目すると、1,200~1,500万円未満は全体の3.8%(198万世帯)、1,500~2,000万円未満は2.1%(109万世帯)、2,000万円以上は1.3%(65万世帯)を占める。なお、この10年ほど、いずれも横ばいで推移している。また、これらの高所得世帯は世帯主の年齢は50歳代前後、南関東や東海、大都市で多い傾向がある。
2―パワーカップル世帯の動向
なお、妻の年収200万円未満(収入無しを除く)では、逆に夫の年収は低年収の割合が低下し、年収500万円以上の割合が高まる。これは、夫が一定の年収を得ているために、自身の収入を増やすよりも夫の扶養控除枠を意識して働く妻が増えることなどがあげられる。
パワーカップル世帯の内訳を見ると、2020年では夫婦と子世帯が約6割、夫婦のみ世帯が約3割を占める。
*1 ここでの総世帯は総務省「2020年労働力調査」における二人以上世帯と単身世帯を合わせた5,524万世帯。
*2 妻の年収1,500万円以上で夫の年収500万円以上など合計が2,000万円以上に加えて、妻の年収1,000~1,500万円未満で夫の年収500~1,000万円及びその逆のパターンを加えたもの。
また、夫が高年収の世帯ではフルタイムで働く妻(週35時間以上就業の雇用者)もやや増えている(図表略)。夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、フルタイムで働く妻の割合は14.6%から17.3%(+2.7%pt)へ、世帯数は6万世帯から9万世帯(+3万世帯)へと増えている。なお、夫の年収が700万円以上の世帯に広げて見ると、フルタイムで働く妻の割合は17.4%から21.2%(+3.8%pt)へ、世帯数は78万世帯から114万世帯(+36万世帯)へと増えており、このうち約3割がパワーカップルと言える。
3―就労環境整備は有効な消費喚起策
また、世の中が変わることで、価値観が変容した影響もあるだろう。共働きがスタンダードになる中で、仕事と家庭のどちらかを選ぶのではなく、仕事も結婚も子どもを持つことも望む女性が増えている*3。また、30代以下の世代は男子も家庭科が必修科目となった世代だ。さらに、女性の大学進学率が短大進学率を上回った後に進学先を選び、「男女雇用機会均等法」にて男女差別が全面撤廃された後に社会人となった世代だ。日本社会では依然として男女の役割分担意識が存在するが、これまでの世代と比べて、女性が男性のサポートに回るのでなく、男女が肩を並べて社会で活躍することをごく普通のこととして捉える意識が格段に強まっているだろう。そして、それは女性だけでなく男性にも言えることだ。
コロナ前は共働き世帯による活発な消費が様々な文脈で話題となっており、洗濯乾燥機やロボット掃除機などの時短家電やカット野菜などの時短食材、家事代行サービスなどの利用のほか、パワーカップルが都心の高級マンション市場を牽引しているといった見方もあった。テレワークが浸透したことで働き方は変容したが、特に子どもがいる共働き世帯では、仕事と家庭の両立に十分な時間があるとは言えず、引き続き時短を叶える(時間を買う)需要は強いと見られる。また、都市部ではコロナ禍でも中学受験が活発であり、受験年齢の低年齢化などによって教育への支出が増えているとの報道*4もあるが、やはり、これらの市場にもパワーカップルの姿があるのだろう。パワーカップルは全体からすればごく僅かだが、消費意欲は旺盛と見られ、消費市場へのインパクトは無視できない。今後も一部の消費市場を活性化させ、その規模はじわりと拡大していくと見られる。
ところで、年収階級別に単身勤労者世帯の男女の消費性向を比べると、女性が男性をおおむね上回る(総務省「全国家計構造調査」)。これまでも様々なマーケティングの文脈で言われてきた通り、女性の方が男性より消費意欲は旺盛だ。つまり、女性が働き続けられる環境が整備され、その収入が増えれば個人消費の底上げにつながる。また、夫婦世帯単位で見ても、現役世代の世帯収入が増えれば消費に結びつきやすい。
仕事と家庭を両立するための就労環境の整備と言うと消費施策としては遠回りのようだが、その効果への期待は大きい。
*3 久我尚子「続・働く女性の管理職希望」(2019/5/10)、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター
*4 「小学校受験、増える傾向続く」(朝日新聞、2021/11/13、朝刊24面)等。

03-3512-1878
(2022年01月11日「基礎研マンスリー」)
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