2021年12月16日

米FOMC(21年12月)-予想通り、量的緩和政策における資産購入額の縮小ペース加速を決定

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、量的緩和政策の資産購入額の縮小ペース加速を決定

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が12月14-15日(現地時間)に開催された。FRBは市場の予想通り、政策金利を維持した一方、量的緩和政策の資産購入額の縮小(テーパリング)ペースを従来の月間合計150億ドルから300億ドルに加速することを決定した。この結果、テーパリング終了時期は従来の22年6月から3月中旬に前倒しとなる。

声明文では景気の現状判断部分でインフレの要因について「一時的」との表現が削除された。また、景気見通し部分ではリスクとして新たな変異株(オミクロン株)について言及された。さらに、金融政策ガイダンス部分ではゼロ金利政策解除の条件についてインフレ条件が削除され、雇用の最大化の達成のみの条件となった。今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。

FOMC参加者の経済見通し(SEP)は、前回(9月)から、主に22年にかけての予想で、失業率が下方修正されたほか、インフレ率は上方修正された(後掲図表1)。また、政策金利見通し(中央値)は、22年および23年が年3回、24年が年2回の利上げ予想となった。

2.金融政策の評価:22年に3回の利上げを予想するタカ派的な内容

政策金利に変更がなかったことやテーパリング終了時期の前倒しは予想通り。また、声明文のインフレに関する記述で「一時的」との表現が削除されたのも予想通りであった。一方、FOMC参加者による政策金利予想で22年の利上げ回数が前回の1回から3回に増加したことは予想外であった。

FOMC会合後の記者会見でパウエル議長は、政策金利引き上げの条件である雇用の最大化に急速に近づいているとの見方を示したほか、テーパリング終了から利上げ開始まで長い期間が必要ないとしており、早期利上げの可能性が高まった。

当研究所はこれまで政策金利の引き上げ開始時期を22年9月としてきたが、上述のように今回のFOMC会合がタカ派的な内容となったことから、政策金利引き上げ開始時期を22年6月に前倒しし、22年は追加で9月と12月にも利上げを行うとの見通しに変更する。

一方、今回のFOMC会合ではバランスシートの縮小時期について議論を開始したことや今後数回の会合で引き続き議論することが示された。縮小開始時期については現時点では不透明だが、前回15年のゼロ金利解除局面では4回の利上げが実施された後にバランスシートが縮小されたことから、今回も同様のペースで行う場合は23年以降にバランスシートの縮小開始となろう。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • 委員会はFF金利の目標レンジを0-0.25%に維持することを決定(今回変更なし)
  • 昨年12月以降、委員会の目標に向けて経済が大きく前進したことを踏まえ、委員会は米国債で100億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)で50億ドルの純資産買い入れペースの縮小を開始することを決定した(今回削除)
  • インフレ動向および労働市場の一段の改善を踏まえ、委員会は毎月の買い入れペースを米国債で200億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)で100億ドルずつ縮小することを決定した(今回追加)
  • 今月から、委員会は米国債の保有を少なくとも月700億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)の保有を月350億ドルそれぞれ増やす。12月以降、委員会は米国債の保有を毎月少なくとも600億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)を月300億ドル増やす。(今回削除)
  • 1月から、委員会は米国債の保有を少なくとも月400億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)の保有を月200億ドルそれぞれ増やす。。(今回追加)
  • 委員会は、純資産の購入ペースにおける同様の削減が毎月適切である可能性が高いと判断するが、経済見通しの変化によって正当化される場合には、購入ペースを調整する必要がある。(今回変更なし)
 
(フォワードガイダンス)
  • 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • インフレ率がこの長期目標を持続的に下回っていることから、委員会は長期的にインフレ率が平均2%となり、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと固定されるよう、当面2%をやや上回る水準のインフレ率の達成を目指す(今回削除)
  • 委員会は、これらの結果が達成されるまで、緩和的な金融政策のスタンスを維持すると予想する(今回削除)
  • インフレ率は一定期間2%を上回ってきている中で、委員会は労働市場の状況が雇用の最大化との評価に一致するまで、この目標レンジを維持することが適切であると予想する(インフレに関して、「インフレ率は一定期間2%を上回ってきている中で」”With inflation having exceeded 2 percent for some time”を追加した一方、前回の「インフレ率が2%に上昇して、しばらくの間2%をやや上回るとの見通しに沿うまで」”inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time”を削除)
  • 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
  • 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
 
(景気判断)
  • ワクチン接種の進展と強力な政策支援により、経済活動と雇用指標は引き続き力強くなっている(変更なし)
  • パンデミックの影響を最も受けたセクターはここ数ヵ月で改善したが、引き続き新型コロナの影響を受けている(「新型コロナ感染者数の夏場の増加で回復ペースは鈍っている」”the summer’s rise in COVID-19 cases has slowed their recovery.”が削除され、「引き続き新型コロナの影響を受けている」”continue to be affected by COVID-19.”が追加された)
  • インフレは主に一時的と予想される要因を反映して上昇している(今回削除)
  • 雇用はこの数ヵ月堅調に伸びており、失業率は大幅に低下した(今回追加)
  • パンデミックと経済の再開に関連した需給不均衡が、引き続き高水準のインフレにつながっている(前回の「一部の部門で大幅な価格上昇につながった」”have contributed to sizable price increases in some sectors”が削除され、「引き続き高水準のインフレにつながった」”have continued to contribute to elevated levels of inflation.”を今回追加)
  • ここ数カ月で全般的な金融環境は、経済および、家計や企業への信用の流れを支えるための政策措置を一部反映して引き続き緩和的だ(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 経済の行方は引き続き、ウイルスの行方に左右される(変更なし)
  • ワクチン接種の進展と供給制約の緩和は、経済活動と雇用の継続的な増加とインフレの抑制を支えると期待されている(変更なし)
  • 新型コロナの新たな変異株も含めて経済見通しのリスクは残っている(「新型コロナの新たな変異株を含めて」”including from new variants of the virus”を今回追加)

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 
  • パウエル議長の冒頭発言
    • 経済活動は、ワクチン接種の進展や経済の再開を反映して、今年は力強いペースで拡大している。ここ数週間の新型コロナの感染者数の増加は、オミクロン株の出現とともに見通しにリスクをもたらしている。
    • 雇用主は求人を満たすのに苦労しており、賃金はここ数年で最速のペースで上昇している。人手不足がいつまで続くのかは不明だ。
    • インフレ率は2%という長期目標を大幅に上回っており、来年にかけてもそれが続く可能性が高い。インフレ高進の要因はパンデミックによって引き起こされた混乱と主に関連していたが、価格上昇はより幅広い財やサービスに広がっている。これまでのところ、賃金上昇はインフレの主な要因ではない。
    • インフレ圧力が高まり、労働市場が急速に強化される中、経済はもはや政策支援を増やす必要が無くなったため、我々は資産購入をより急速に段階的に廃止する。
 
  • 主な質疑応答
    • (雇用の最大化をどう判断するのか)幅広い指標をみている。これらの指標には失業率、労働参加率、求人数、賃金、労働力の出入りなどが含まれる。それはインフレのように一つの数値で示されるものではなく、多くの指標に基づいて委員会が判断することだ。我々は雇用の最大化に急速に近づいているとみている。
    • (テーパリング終了から利上げまでの期間について)我々は何の決定もしていない。現時点で非常に長い待ち時間があるとは予想していない。経済は非常に強く、完全雇用に非常に近く、インフレは目標をはるかに上回っており、成長は潜在成長をはるかに上回っている。このため、長い遅延の必要はない。
    • (バランスシートの縮小開始について)バランスシートの問題について今週のFOMC会合ではじめて議論した。今後数回の会合で引き続き議論するが、今日は何の結論も得ていない。
    • (FRBがビハインドザカーブに陥っている可能性について)我々がビハインドザカーブになっているとは思わない。我々は高インフレを含む問題に対処するために、思慮深く、我々がとる必要のある措置を講じる立場にあると考えている。
    • (オミクロン株の影響について)多くの不確実性がある。それが声明文でリスクと述べた理由だ。今後6週間程度経てば経済への影響などがもっと明らかになるだろう。オミクロン株はテーパリング終了時期を前倒しする決定に影響することはない。

5.FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の18名 )の経済見通しは(図表1)の通り。前回(9月)見通しとの比較では、主に21年の失業率が4.3%と前回の4.8%から下方修正されるなど、21年と22年分が下方修正されたほか、21年のコアPCE価格指数が前年同期比+4.4%と前回の+3.7%から上方修正されるなど、21年と22年分が上方修正(失業率は低下)された。一方、長期見通しの変更はなかった。
(図表1)FOMC参加者の経済見通し(12月会合)
(図表2)政策金利見通し(年末時点) 政策金利の見通し(中央値)は、22年が0.875%(前回:0.25%)と足元の0.125%から3回の利上げが示されたほか、23年も1.625%(前回:1.00%)とさらに3回の利上げが示された(図表2)。24年は2.125%と2回の追加利上げとなった。長期見通しは2.5%で前回から変更がなかった。

一方、ドット・チャートは、18人全員が22年に最低1回の利上げを見込んでいるほか、3回利上げ予想が10人と大宗となった。このため、22年の3回利上げはほぼコンセンサスとみられる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年12月16日「経済・金融フラッシュ」)

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