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新型コロナワクチンを「接種したくない」と思っていた人が 接種を決めた理由
基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.297]

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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分析に使用したのは、ニッセイ基礎研究所による「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査*1」の第5回調査(2021年7月5~7日実施)と第6回調査(9月22~29日実施)の両方に回答をした人のデータである。
それからおよそ3か月後の9月には、接種または予約を終えている割合が81.5%と、接種や接種予約が進んでいた。9月に「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%と低く、接種意向のある人はおおむね予約を終えていたと考えられる。
7月の接種状況・意向別に9月の状況をみると、7月に接種希望がなかった人の基礎研レポート49.8%は9月にも接種希望がなかったが、36.8%は接種または予約を終えていた[図表2]。
2―接種を希望しなかった理由(7月)~「希望なし→予約・接種済」で、“様子見”、「9月も接種希望なし」で“安全性への不安”“ワクチン不要”
3―感染による健康不安~「希望なし→予約・接種済」は、7~9月に適切な治療が受けられない不安が上昇
一方、「感染しても適切な治療が受けられない」に関して、不安と感じている割合は、7月に「(2)希望なし→予約・接種済」が42.2%、「(3)9月も接種希望なし」が42.8%と、両者に差はなかった。ところが、9月には、(2)が57.1%、(3)が45.2%と、(3)が2.4ポイントの上昇にとどまったのに対し、(2)は15ポイント上昇しており、(2)と(3)に大きな差ができていた。この間、自宅療養中に死亡した例や、救急搬送ができなかった例が多く報じられていた。図表3のとおり、(2)は「自分は重症化しない」と考えている割合が(3)より低く、重症化しても治療が受けられない不安が高まった可能性がある。
4―接種理由(9月)~「7月に予約・接種済」は、自分や周囲のリスク軽減と「打つものだと思っていた」。「希望なし→予約・接種済」は、家族の勧め、不利益をこうむりそう、周囲の接種状況を見て
一方、(2)もワクチンの効用に期待した理由もあったが、(1)と比べて低く、「周囲の人が接種しているから」「家族に勧められたから」「ワクチン接種済み証明(ワクチンパスポート)を活用した行動緩和策において、不利益をこうむりそうだから」が(1)より高かった。
5―おわりに
「(2)希望なし→予約・接種済」は「(3)9月も接種希望なし」と比べて、7月調査で感染による健康状態の悪化に不安を感じていた割合が高かったほか、7~9月の間に、感染しても適切な治療が受けられない不安が大幅に上昇していた。7月調査でも、接種をまったく検討していなかったわけではなく、周囲の接種状況や、国内の感染状況、医療ひっ迫の状況等を踏まえて接種を検討したと推測できる。ワクチン接種理由は、ワクチンの効用に期待した回答も上位にあがったが、「(1)7月に接種・予約済」と比べて低く、家族の勧めや周囲の人の接種状況、接種済み証明(ワクチンパスポート)の活用に関する議論を考慮して接種したなどの消極的な理由も一定程度あった。また、(1)は「(ワクチンを)打つものだと思っていた」が3割を超えて高く、ワクチンで感染症を予防しようとする考えには個人差があると考えられた。
9月調査で、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%にとどまり、接種意向のある人はおおむね予約を終えたと考えられる。現在、接種意向がない人は、感染不安や適切な治療が受けられないことへの不安、重症化する不安が相対的に低く、ワクチン接種に対する安全性への不安が高い人やワクチン不要との考えが多い。
しかし、感染の再拡大や重症化リスクの高い変異株の出現、自分自身や同居家族が転職や体調等によって感染や重症化リスクが高まったとき、副反応の頻度や程度が低いワクチンが開発されたとき等に、接種意向が生じる可能性があろう。そのため、今後は、必要な時に接種できる仕組みを整備しておくことが必要だろう。
*1 20~74歳男女個人を対象とするインターネット調査。
(2021年12月07日「基礎研マンスリー」)
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- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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