2021年11月19日

消費者物価(全国21年10月)-物価上昇の裾野が徐々に広がる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1. コアCPI上昇率は2ヵ月連続のプラス

消費者物価指数の推移 総務省が11月19日に公表した消費者物価指数によると、21年10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(9月:同0.1%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想も0.1%)通りの結果であった。

原油高の影響でエネルギー価格の上昇率が高まったが、携帯電通信料が9月の前年比▲44.8%から同▲53.6%へと下落幅がさらに拡大したことがコアCPIを押し下げた。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲0.7%(9月:同▲0.5%)、総合は前年比0.1%(9月:同0.2%)となった。
コアCPIの内訳をみると、電気代(9月:前年比4.1%→10月:同7.7%)、ガス代(9月:前年比0.7%→10月:同3.4%)、ガソリン(9月:前年比16.5%→10月:同21.4%)、灯油(9月:前年比20.2%→10月:同25.9%)がいずれも前月から伸びを高めたため、エネルギー価格の上昇率が9月の前年比7.4%から同11.3%へと高まった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 食料(生鮮食品を除く)は9月の前年比0.6%から同0.7%へと伸びを高めた。原材料価格の高騰を受けて、油脂・調味料(9月:前年比1.0%→10月:同2.1%)、調理食品(9月:前年比0.8%→10月:同1.1%)、飲料(9月:前年比0.5%→10月:同2.3%)の伸びが高まった。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.83%(9月:0.55%)、食料(生鮮食品を除く)が0.16%(9月:0.14%)、携帯電話通信料が▲1.54%(9月:同▲1.28%)、Go Toトラベルが0.37%(9月:同0.27%)、その他が0.28%(9月:0.42%)であった(Go Toトラベルは当研究所による試算値)。

2.物価上昇の裾野が広がる

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数は294品目(9月は284品目)、下落品目数は175品目(9月は175品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は56.3%(9月は54.4%)、下落品目数の割合は33.5%(9月は33.5%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は22.8%(9月は20.9%)であった。

食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合が50.6%から57.4%に上昇した。原材料価格の高騰を受けて、食料を中心に物価上昇の裾野は徐々に広がっている。

3. コアCPI上昇率は年末にかけてゼロ%台後半まで高まる見通し

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 エネルギー価格は前年比11.3%の高い伸びとなったが、原油高の影響が遅れて反映される電気代、ガス代の伸びがさらに加速することにより、21年末から22年初にかけて20%近くまで伸びが高まることが見込まれる。エネルギーによるコアCPI上昇率への寄与度は10月の0.83%から1%台前半まで高まる可能性が高い。

また、原材料価格上昇によるコスト増を転嫁する動きが広がることにより、食料(生鮮食品を除く)は一段と伸びを高める可能性が高い。さらに、12月までは前年の「Go Toトラベル」による宿泊料の大幅下落の反動による押し上げが続く。

コアCPIは年末にはゼロ%台後半まで伸びを高める可能性が高い。「Go Toトラベル」停止による押し上げ効果が剥落する22年1月以降はいったん伸びが低下するが、携帯電話通信料の大幅下落の影響が縮小する22年度入り後には、コアCPI上昇率は1%台前半まで加速することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2021年11月19日「経済・金融フラッシュ」)

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