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中期経済見通し(2021~2031年度)
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.296]

山下 大輔
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1―コロナ禍からの復興を目指す世界経済
中期経済見通しのメインシナリオを作成するにあたって、今後も新型コロナウイルスとの共生が続くことを前提にした。ワクチンの開発と普及が急速に進んだことは、感染拡大防止に大きく貢献したと考えられるが、短期間での新型コロナウイルス収束には至らない。他方で、既存ワクチンの有効性を著しく低下させるような変異株の出現やウイルスの強毒化により、厳しい活動制限を再び強いられることもないと想定している。
その結果、新型コロナウイルスとの共存が続くものの、ワクチンや治療薬の普及によって段階的に新型コロナウイルスに対する適応がなされ、次第に、新型コロナウイルスのリスクを過度に意識することなく生活できるようになっていく、というシナリオを前提にしている。ただし、コロナ禍前のような人の往来がなされるまでには時間を要し、対面型サービス消費の回復は緩やかなペースになるだろう。また、新型コロナウイルスに適応し経済復興を進めるとともに、コロナ禍により大規模に出動してきた金融・財政政策の正常化にも取り組むことになるが、金融・財政による支援の縮小は経済に抑制的に働くだろう。
世界経済は、コロナ禍の影響を受け、2020年に▲3.3%と急減速したが、2021年はワクチン接種の進展などを背景とした世界的な経済活動の回復により、5.7%の高成長となると予想される。その後は、コロナ禍からの反動もあり、やや高めの水準での推移がしばらく続くものの、予測期間にわたって成長率は鈍化傾向をたどり、予測期間末には2%台半ばまで低下することが見込まれる。[図表1]
2―日本経済の見通し
2|今後10年間の実質GDP成長率は平均1.1%
中長期的な成長率を考える上で一つの指針となりうるのは潜在成長率である。潜在成長率とは、労働や資本の平均的な稼働率で生産可能と考えられる生産額(潜在GDP)の成長率であり、経済の供給能力ともいえる。景気変動の影響を除いた中長期的な状況を想定すれば、実現可能な供給能力を超えた生産を継続することは難しく、実際に観測される実質GDPは潜在GDPに近づくと考えられ、結果として、実質GDP成長率は潜在成長率に近づくはずだ。
潜在成長率は推計により求められる数字であり、推計方法に依存する部分が大きいため、幅を持って捉える必要があるが、日本の潜在成長率は、コロナ前から1%を下回る水準にある。新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの回復過程では、その落ち込みの反動で、高い実質GDP成長率が続くと期待されるが、成長余力を高めるためには、潜在成長率を引き上げる必要がある。
潜在成長率を引き上げるためには、労働参加の更なる促進や、生産性向上のための設備・人材面での投資が求められる。潜在成長率は2012年度から上昇に転じたが、この要因として、女性や高齢者の労働参加が増加したことなどで、少子高齢化を伴う人口減少の中でも就業者数が増加したことが挙げられる[図表4]。
先行きの潜在成長率は、上述の労働参加の更なる促進や、新規技術の活用を含む生産性向上のための設備・人材面での投資の実施で、2020年代半ばには1%程度まで回復すると見込んだ。ただし、2020年代後半は人口減少、少子高齢化の更なる進展により、潜在成長率は若干低下するだろう。[図表6]
(2021年11月09日「基礎研マンスリー」)
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