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中国経済の現状と今後の注目点-電力不足、不動産規制、コロナの3点に注目!
三尾 幸吉郎
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1. 中国経済の概況
新型コロナウイルスが猛威を振るった後の中国経済を振り返ると、昨年1-3月期にはコロナ禍で同6.8%減に落ち込んだものの、昨年4-6月期には同3.2%増とプラスに転じ、今年1-3月期には前年同期に落ち込んだ反動も手伝って同18.3%増の高成長となった。しかし、4-6月期以降は電力供給不足、不動産規制強化、コロナ禍の再発を背景に内需(投資・消費)の伸びが鈍化し経済成長の勢いが鈍ってきている。見方換えると、昨年1-3月期にはコロナ禍で前期比年率32.9%減(季節調整済、推定1)に落ち込んだが、財政金融政策をフル稼働させたことで、昨年4-6月期には同50.2%増と一気にコロナ前(19年10-12月)の水準を回復し、下半期も同10%増を超える高成長を続けた。しかし、21年に入ると財政金融政策が引き締め方向に変化したこと背景に、国有企業の投資が鈍り、不動産業の資金繰りが苦しくなって中国恒大集団は経営不安に陥り、1-3月期の実質成長率は同0.8%増、4-6月期は同4.9%増、そして7-9月期は同0.8%増と、中国経済は低い水準で一進一退の動きとなっている(図表-1)。
1 中国では季節調整後の前期比は公表されているが、前期比年率は公表されていないので、筆者が計算した推計値を表示している
2. 産業別・需要項目別の分析
なお、昨年のコロナ禍からV字回復する上で多大な貢献をした輸出には変化の兆しでてきている。昨年は防疫関連(医療機器やマスクなど)や巣ごもり関連(PCや家電など)が輸出を牽引したが、今年は巣ごもり関連が引き続き好調なのに加えて、伝統的輸出品(服装、靴、帽子など)も増加に転じた。但し、足元では防疫関連に陰りがでてきている(図表-7)。
3. 電力不足
こうした状況に危機感を強めた中国政府は、李克強首相が10月8日に国務院常務会議を開いて、石炭生産の拡大、石炭火力発電企業の支援、電力価格の上下許容範囲の拡大、風力発電・太陽光発電基地建設の加速などの具体策を打ち出すとともに、地方政府に向けては「実事求是(事実に基づいて真理を求めること)」を強調した上で、「各地は属地管理責任を厳格に実施し、電力の秩序ある使用管理に取り組み、一部の「画一的」生産停止・制限や「キャンペーン式」炭素排出削減を是正し、無作為や勝手な行為に反対する。主要石炭生産省と重点石炭生産企業は要求に従って生産・供給拡大任務を実行しなければならない」と発破をかけた。したがって、前述の(3)と(4)に関しては近々解消に向かうだろう。但し、(1)と(2)は世界経済や天候に左右される面があるため予断を許さない。
4. 不動産規制
しかし、中国政府は「住宅消費者の合法的な権益を守る」と表明したり、銀行に対して過剰な貸し渋りを慎むよう指導したりはしているが、「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」と繰り返し、不動産規制を緩和する兆しは見られない。但し、住宅価格が大幅に下落すれば、中国経済が失速する恐れが現実味を帯びる。住宅価格が下落し始めたので(図表-12)、不動産規制を緩和する時期を見極める段階には入ってきたが、直ぐに解除されるとは考えにくい。
5. 新型コロナウイルス感染症
世界のCOVID-19信号票(百万人当たりの新規感染確認が30人未満=ブルー、30人以上3000人未満=イエロー、3000人以上=レッド)を見ると(図表-13)、中国は昨年3月以降19ヵ月連続でブルーとほぼ収束した状態にある。しかし、世界ではパンデミックがまだ続いており、レッドやイエローの国がほとんどだ。こうした状況下、中国では来22年2月4日から2月20日にかけてと北京冬季五輪が開催される。それに先立って北京、延慶、張家口の3競技エリアの8つの会場ではテスト大会が始まり、海外から選手・関係者約2000人が参加すると見られている。したがって、北京冬季五輪が終わるまでは、海外からの流入を起点にして国内で再流行する恐れが残っている。
一方、“ウィズコロナ”で臨む日本とは違って、“ゼロコロナ”を目指す中国では小振りな感染増に対しても厳しい防疫対策が実施される。実際、昨年3月以降の新規確認症例は多くても150人ほどだが(図表-14)、感染が増えた今年1~2月や8月には国内航空旅客が半減したり(図表-15)、サービス業が打撃を受けたりして(図表-16)、経済への影響が大きい。“ウィズコロナ”で臨む日本から見れば、虫メガネで見ないと分からないような小振りな感染でも、注視する必要がある。
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