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世界各国の金融政策・市場動向(2021年9月)-先進国でも金融政策正常化の動き

経済研究部 主任研究員 高山 武士
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1.概要:金融政策正常化の動きは継続
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する50か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
2.金融政策:先進国でも金融政策正常化を見据えた動きが広がる
9月は日本・米国・ユーロ圏で決定会合が開催された。日米では政策手段の変更はなかったが、米国では、「資産購入ペースの緩和がまもなく必要になる」として、次回11月の会合での量的緩和の縮小(テーパリング)決定を示唆した。ユーロ圏ではインフレ見通しと良好な資金調達環境であることを評価して、資産購入ペースの適度な減速を決定した。ECB自身は金融引き締めへの転換であるとは明言していないものの、欧米ではコロナ禍における緩和政策からの正常化が視野に入っていると言える。
その他の先進国では、イングランド銀行では政策変更はなかったが、インフレリスクや金融引き締めへの転換について多くの議論が交わされていることが明らかになった。オーストラリア準備銀行では7月に決定していた資産購入ペースの減速(週50億豪ドル→40億豪ドル)を予定通り行う一方で、量的緩和策の3か月の期間延長が決定されている。いずれもコロナ禍のリスクを踏まえて慎重な姿勢を維持しつつも正常化へ向けた動きを進めていると言えるだろう2。
新興国ではロシア、ブラジル、ハンガリー、チェコ、メキシコで政策金利が引き上げられた。ブラジルとロシアは5会合連続の利上げ、ハンガリーは4会合連続の利上げ、チェコとメキシコは3会合連続の利上げであり、いずれも高インフレ率が継続していることから、中央銀行では金融引き締めを強めている。
一方で、トルコでは政策金利が引き下げられた3。今年3月にカブジュオール総裁が就任してからはじめての金利変更であり、利下げを求めるエルドアン大統領の意向に沿った決定となった。トルコでもインフレ率が上昇しており、これまでは声明文に「政策金利はインフレ率を上回る水準で維持される」としていたが、この記載を削除し、政策金利(18%)はインフレ率(8月19.25%)を下回る水準に設定された。後述するように、この決定を受けてトルコリラは下落している。
2 このほか、デンマークではユーロペッグのための通貨高抑制の観点から利下げが決定された。
3 トルコでは政策金利の引き下げとは別に預金準備率も変更しており、預金準備率は引き締めが続いている。
3.金融市場:株価は下落、為替はドル高傾向の継続
今月の株価下落幅が大きかったパキスタンでは、米国上院に提出されたタリバンへの制裁法案について、制裁対象がパキスタンへも及ぶ可能性が示唆されていることが株価下落を助長させた。
一方、日本では自民党総裁選挙での菅首相の不出馬を受けた安定政権継続の見方などから、月初に株価が急上昇しており、下旬には下落する局面もあったが前月比では上昇だった。
4( 名目実効為替レートは2021年9月28日の前月末比で算出。
(2021年10月01日「経済・金融フラッシュ」)

03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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