2021年10月01日

欧州大手保険グループの2021年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-

文字サイズ

4|Aviva
Avivaは、引き続き会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。

Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2021年上期末で23億ポンド)、職員年金制度(2021年上期末で12億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立していることから、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。

(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースの数値は、2020年末の202%に比べて1%ポイント上昇して、2021年上期末に203%となった。

資本形成による+16%ポイントのプラスの影響があったものの、19億ポンドの劣後債及びシニア債が償還されたことによるマイナスの影響が▲13%ポイントと大きく、配当支払も▲5%ポイントとなっている。

なお、2021年6月30日のソルベンシーIIのポジションには、英国ポンドのリスクフリーレートに対する今後の規制変更の影響に対するプロフォーマ調整(TMTPを含む)が含まれている。 2021年7月31日以降、これらのレートは、ロンドン銀行間取引レート(LIBOR)ではなく、スターリングオーバーナイトインデックス平均(SONIA)に基づくことになる。2020年6月30日のソルベンシーIIのポジションには、Friends Provident International Limited(FPI)、香港、インドネシアの処分に関するプロフォーマ調整(サープラス合計で1億ポンドの増加の影響)、ソルベンシーIIへの予想される変更の潜在的な影響が含まれている。

SCRは、期間中の金利の上昇により、信用、その他の市場及び生命保険のリスクを含む多くのリスクが減少したことにより、12億ポンド減少した。なお、株式リスクは、主に株式市場の好業績の結果としてのエクスポージャーの増加により増加している。

また、監督ベースの数値は、4%ポイント上昇して、181%となった。
AvivaのSCR比率推移の要因(会社ベース)/AvivaiのSCR比率推移の要因(内訳)
AvivaiのSCR比率推移の要因(内訳)
(2)感応度の推移
感応度については、2021年上期末は、基本的には2020年末と大きくは変わっていない。

なお、長寿リスクに対応した、年金死亡率の5%低下による影響が16%ポイントと大きなものとなっている。
Avivaの感応度の推移
なお、Avivaは、感応度分析に関して、以下の補足説明を行っている。
(参考)感応度分析の限界
上記の表は、他の仮定は変更されていないが、主要な仮定の変更の影響を示している。実際には、仮定と他の要因の間には相関関係がある。これらの感応度は非線形であり、これらの結果からより大きな又はより小さな影響を内挿又は外挿してはならない。

感応度分析では、グループの資産と負債が積極的に管理されていることは考慮されていない。さらに、グループのソルベンシーIIのポジションは、実際の市場の動きが発生した時点で異なる場合がある。例えば、グループの財務リスク管理戦略は、市場変動へのエクスポージャーを管理することを目的としている。

投資市場が様々なトリガーレベルを超えて移動するにつれて、経営行動には、投資の売却、投資ポートフォリオの割当ての変更、保険契約者にクレジットされる配当の調整及びその他の保護行動の実行が含まれる可能性がある。

上記の感応度分析におけるその他の制限には、確実に予測できない可能性のある短期的な市場の変化に関するグループの見解と、全ての金利が同じように動くという仮定を表すだけの潜在的なリスクを実証するための仮想的な市場の動きの使用が含まれる。

(3)トピック
Avivaは、2021年に入ってから、以下のような取引等を行ってきている。

2021年2月23日に、フランス事業の32億ユーロでの売却を承認したと発表した。この取引はUFF(Aviva France)のフランスの生命・損害・資産管理事業と75%の株式をカバーしている。これによるAvivaへの影響は、(1)ソルベンシーII資本剰余が約8億ポンド増加し、ソルベンシーII比率が約22%ポイント増加、(2)180%のソルベンシーII比率を超える超過資本が約21億ポンド増加、(3)IFRS純資産価値が約5億ポンド減少、となる。この取引は、規制当局の承認を含む協議及び慣習的な条件の対象であり、2021年末までに完了する予定である。

2021年2月24日に、トルコでの合弁事業であるAviva SA Emeklilik ve Hayat AS(「Aviva SA」)の40%の株式を、1億2,200万ポンドの現金対価で、Ageas Insurance International NVに売却することに合意したと発表した。この取引により、AvivaのIFRS純資産価値及びソルベンシーII剰余金が約1億ポンド増加すると想定されている。この取引は、規制当局の承認を含む通常の完了条件の対象であり、2021年に完了する予定である。

2021年3月4日に、イタリアの生命保険及び損害保険事業(「Aviva Italy」)の残りを8億7,300万ユーロの現金で売却(生命保険事業をCNP Assuranceに5億4,300万ユーロで売却、損害保険事業をAllianzに3億3000万ユーロで売却)することを発表した。これによる財務への影響は、(1)ソルベンシーII資本剰余金が約2億ポンド増加し、ソルベンシーII比率が約7%ポイント増加、(2)180%のソルベンシーII比率を超える超過資本が約7億ポンド増加、(3)IFRS純資産価値が約2億ポンド減少、となる。この取引は、規制および独占禁止法の承認を含む慣習的な完了条件の対象であり、2021年後半に完了する予定である。

2021年3月26日に、ポーランド及びリトアニアの事業であるAviva Poland の全株式を25億ユーロの現金対価でAllianzに売却することを発表した。

2021年4月1日に、イタリアの生命保険合弁会社であるAviva Vita SpAの80%の株式の売却を完了したことを発表した。

2021年8月12日に、最大総額7億5,000万ポンドの対価で普通株式の買戻しを開始すると発表した。
5|Aegon
(1)SCR比率の推移
2021年上期末におけるSCR比率は、以下の要因により、2020年末の196%から12%ポイント上昇して、208%となった。

・支払経験の改善を含む、強い事業成績を反映した資本形成で+6%ポイント

・好調な株式市場からの市場変動結果と代替及び不動産の強い実績等があったものの金利の影響により、市場の影響等が▲1%ポイント

・モデルと前提の変更は、UFRの引き下げとオランダにおけるモデルの洗練化、米国の前提更新及び英国の法人税率の変化による影響等で+5%ポイント
AegonのSCR比率推移の要因
AegonのSCR比率推移の要因(内訳)
(参考)地域別のソルベンシー比率
地域別のソルベンシー比率は、以下の図表の通りとなっている。

・オランダのソルベンシーII比率は、UFR引き下げの影響を受けたが、経営行動やモデル更新や好調な市場の変動により、2020年末に比べて、13%ポイント上昇して172%となった。

・英国のソルベンシーII比率は、法人税率の引き上げによるプラスの影響もあり、2020年末に比べて、7%ポイント上昇して163%となった。

・米国では、中間持株会社への配当支払で▲8%ポイントの影響があったが、好調な株式市場やPEや不動産の再評価等による市場変動のプラスの影響で、2020年末に比べて、12%ポイント上昇して444%となった。 なお、米国保険会社のRBC比率のソルベンシーIIへの換算については、毎年見直し、DNB(オランダ中央銀行)の了解を得ているが、2021年上期末の444%はソルベンシーIIでは224%に相当していると報告されている。
Aegonの地域別ソルベンシー比率
(2)感応度の推移
感応度は、基本的には2020年末と大きくは変わっていない。2016年末から2017年末にかけて、米国事業の転換手法の改正等の影響もあり、金利上昇による感応度が大きく上昇したが、2018年末以降はこの水準は低下している。なお、AvivaはVA(ボラティリティ調整)やUFRに対する感応度も示している。

米国信用デフォールトの200bps引き下げによる影響が▲18%ポイントと大きなものとなっている。
Aegonの感応度の推移
(3)トピック
Aegonは、2021年に入ってから、以下のような取引等を行ってきている。

2021年3月1日に、英国を拠点とする傷害保険商品のプロバイダーであるStonebridgeの、Embignellグループの一部であるGlobal Premium Holdings Groupへの約6000万ポンド相当の対価での売却を無事に完了したと発表した。

2021年7月7日に、2020年の最終配当と上級管理職向けの特定の株式ベースの変動報酬プランの両方の希薄化効果を中和するために、1億3,300万ユーロの普通株式を買い戻すと発表した。なお、これは8月23日に完了した。

2021年8月12日に、2005年に発行された最低4%のクーポンで2億5000万米ドルの変動金利永久資本証券を償還する権利を行使すると発表した。償還はAegonのレバレッジ削減目標に沿ったものである。

2021年8月13日、欧州委員会は、ウィーン保険グループAG Wiener Versicherung Gruppe(VIG)による中東欧でのAegonの事業の買収について競争法の認可を与えることを決定した。なお、9月20日にブダペストメトロポリタン裁判所から、この買収を阻止するというハンガリー内務省の決定に異議を唱える共同控訴を却下したとの通知を受けている。これに対して、AegonとVIGは、ハンガリー最高裁判所に上訴する予定だとしている。

2021年9月17日に、株式で支払われた2021年の中間配当の希薄化効果を中和するために、9,600万ユーロの普通株式を買い戻すと発表した。これらの株式は自己株式として保有され、将来の配当金の支払いに使用される。
6|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、これまでソルベンシーIIに同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済的ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。

(1)SCR比率の推移
2021年上期末のSST比率は、以下の要因により、2020年末の182%から、24%ポイントと大きく上昇して、206%となった。

・通常水準より高い自然災害とCOVID-19による▲2%ポイントの影響を除いたベースでの営業利益の計上により+9%ポイント

・市場変動で+23%ポイント(高いイールドカーブで+15%ポイント、信用スプレッドの縮小と好調な株式市場の影響で+8%ポイント)

・資本行動で▲11%ポイント(MetLife米国損保事業の買収、17.5億米ドルの劣後債の発行、配当支払)

・有利な前提とモデル更新で+4%ポイント
Zurichのソルベンシー比率(SST)推移の要因
(2)感応度の推移
感応度については、基本的には大きな変化はないが、2020年末に比べて、2021年上期末においては、金利感応度が低くなっている。なお、これまでは、業績表示が米ドル建で行われていることから、米ドルの為替レートによる感応度を公表していたが、今回は公表していない。
SST比率の感応度の推移
(3)トピック
Zurichは、2021年に入ってから、以下のような取引等を行ってきている。

2021年1月12日に、17.5億米ドルの期限付き劣後債の発行に成功したことを発表した。2051年4月に満期を迎え、2031年1月に最初に償還可能となる。

2021年4月7日に、Zurich とFarmers Exchangesが米国におけるMetLifeの損害保険事業の買収を39.4億ドルで完了したことを公表した。これにより、Farmers Exchangesのプレゼンスが新しい販売チャネルへのアクセスで強化され、Zurichの手数料ベースの収益が2023年から約10%増加する。

2021年5月4日に、2億2500万スイスフランの劣後債務を償還するオプションを行使する意向であると発表した。

2021年8月16日に、0.0%の利回りで2億スイスフランの10年シニア債務の発行に成功したことを発表した。これは2031年8月に満期になる。

(2021年10月01日「基礎研レポート」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州大手保険グループの2021年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州大手保険グループの2021年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-のレポート Topへ