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「オフィス出社率指数」をもとにポストコロナの働き方を探る-人流データをもとにしたオフィス出社率指数の開発
基礎研REPORT(冊子版)8月号[vol.293]

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠
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1―ポストコロナの働き方とは?
ポストコロナの焦点の一つが、働き方や働く場所の変化である。在宅勤務が急速に普及したコロナ禍当初は、「オフィス不要論」が注目を集めたが、在宅勤務のデメリットも明らかになるにつれ、聞かれなくなった。現在は、オフィスと在宅での勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方が主流になるとの見方が多い。ただし、オフィスと在宅での勤務割合について、一定の見解は得られていない。
2―アメリカのオフィス回帰は緩慢
米国では、Kastle Systemsが入退管理システムの入館記録をもとに、全米10都市のオフィス出社率を公表している[図表1]。新型コロナウイルスの感染拡大前を基準として、全米10都市平均のオフィス出社率は2021年6月30日の週に33%と、最も落ち込んだ2020年4月15日の週の15%よりは回復したものの、依然として低水準である。
また、オフィス出社率は都市ごとに大きく異なる。10都市のなかで、最もオフィス出社率が高いのは、米国南部のテキサス州オースティン(51%)で、同州のダラス(50%)が続く。一方、最も低いのは、IT企業が集積するサンフランシスコ(19%)で、2番目に低いのは大手金融機関が集まるニューヨーク(22%)である。
3―東京のオフィス出社率を測る
第2波では、新規感染者数の増加に伴い、指数は2020年8月21日に50%まで低下した。企業やオフィスワーカーのコロナ慣れが進んだことに加え、緊急事態宣言の発令が回避されたため、出社率の低下は第1波より小幅にとどまった。
第3波では、新規感染者数の増加や緊急事態宣言の再発令により、指数は2021年2月15日に48%まで低下した。ただし、新規感染者数の急増と比較して、指数の低下幅は小さかったと言える。また、新規感染者数が減少に転じた後でも、緊急事態宣言期間は指数の回復スピードが穏やかであった。一部の企業では、新規感染者数が減少しても宣言期間中はオフィス出社を抑制する方針を維持したためだと考えられる。
第4波では、新型コロナウイルス変異株の感染拡大への警戒感から、まん延防止等重点措置に続いて、4月25日に3回目の緊急事態宣言が発令されたため、2021年6月4日に46%まで低下した。その後、新規感染者数が減少に転じ、6月20日に東京などの緊急事態宣言が解除されたことから、6月30日現在の指数は58%に上昇した。指数は一時的に50%を割り込んだものの、感染拡大局面においても50~60%前後で推移していることは、第2波以降一貫して変わらない。
このようにオフィス出社率指数は、第1波で34%まで急落した。その後は、新規感染者数の増減にあわせて概ね50%~70%のレンジで上下動を繰り返しているが、新規感染者数の増減に対する指数の感応度は徐々に小さくなってきているようだ。これは、多くの企業が1年を超えるコロナ禍を経験するなかで、ウイズコロナを前提とした新たなワークスタイルやワークプレイスが定着してきたためと考えられる。
このようにエリア毎のオフィス出社率指数には大きな差異がある。企業規模や産業毎に、テレワークの親和性が異なり、エリア毎に特色があるためである。現在オフィス出社率が低い企業は、ポストコロナにおいてもテレワークを積極的に活用していくだろう。そのため、このようなオフィス出社率のエリア間差異は今後も残存する可能性がある。
4―今秋以降のオフィス出社率に注目
また、ワクチン接種が進んだ2021年秋以降のオフィス出社率の動向にも注目したい。働き方は企業や従業員だけでなく、社会や経済などに幅広い影響を与える。依然不透明なポストコロナの働き方を探る上でも、オフィス出社率指数をモニタリングしていくことが重要になりそうだ。
(2021年08月05日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1778
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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