2021年08月02日

世界各国の金融政策・市場動向(2021年7月)-中国では規制強化で株価が大幅下落

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.概要:中国株が大幅下落、為替はドル高が継続

7月に世界各国1で実施された金融政策および、株価・為替の動きは以下の通り。
 

【金融政策】



【株価・対ドル為替レートの動き】
・株価は先進国では上昇したが、新興国では中国で大幅に下落した(図表1)。
・為替レートはドル高傾向が持続した(図表2)。

(図表1)世界株価の動向/(図表2)対ドル為替レートの動向
 
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する50か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。

2.金融政策:地域により状況は様々

まず、主要地域の金融政策を見ていく。

7月は6月に続いて日本・米国・ユーロ圏で決定会合が開催されている。日本では政策手段の変更はなかったが、先月に決定した気候変動関係の資金供給策の骨子素案を決定した。米国では、金融政策方針を維持しつつ、テーパリング(資産購入ペースの減少)開始に向けて進展しているとの見解が示された1。ユーロ圏では上旬に金融政策戦略の見直し結果が発表され、インフレ目標を「中期的に2%」と対称的な記載に変更することなど2を決定した上で、22日の政策理事会ではフォワードガイダンスを「(1)インフレ見通しが見通し期間中に2%に達し、(2)その後安定して推移し、また(3)足もとでも目標に向かった進展が見られる」までは利上げをしないとする趣旨に変更した。内容を分かりやすくするとともに、ハト派的な姿勢を一層強めるものとなったと言える。

それ以外の国では、先進国ではオーストラリア準備銀行が資産購入策の延長を決定した。前回2月の延長時には1000億豪ドルの枠を追加していた(週50億豪ドルのペースで購入し、9月上旬まで実施)が、今回は金額を設定せずに週40億豪ドルのペースで現行の購入策終了後、少なくとも11月上旬までと定めた。資産購入策の延長ではあるが、購入ペースの縮小を伴うものであり、緩和からの出口への動きを進める決定と言える。また、カナダ銀行も同じく資産購入ペースの縮小(週30億→20億加ドル)を決定している。

新興国ではロシアでは4会合連続となる政策金利の引き上げを決定し、今回は1.0%ポイント(5.5→6.5%)引き上げている。前回6月の引き上げ幅は0.5%ポイントであり、インフレ加速を受けて引き締め姿勢を強めたことになる。また、ハンガリーでも先月に続き2会合連続での利上げを決定した3。一方、中国人民銀行は商品価格の上昇に伴う中小・零細企業の負担を軽減させることを目的に、預金準備率の引下げを決定している。
 
1 米国ではこのほか、常設の資金供給手段としての「常設レポファシリティ(SRF)」の導入が決定され、またコロナ禍で導入された海外向けの外貨(ドル)供給手段である「FIMAレポファシリティ」の常設化が決定された。
2 戦略見直しのその他の内容など、詳細は高山武士(2021)「ECBの新戦略」『基礎研レター』2021-07-13を参照。
3 ハンガリーは、今月は預金ファシリティや貸出ファシリティといった関連金利もベースレートを同様に引き上げ、コリドー幅は維持している。なお、ハンガリーは資産購入策については継続する姿勢を維持している点が特徴的と言える。

3.金融市場:株価は中国で大幅下落、為替はドル高傾向が継続

MSCI ACWIの月間騰落率は、全体では前月比+0.6%、先進国が前月比+1.7%、新興国が前月比▲7.0%となった。
(図表3)MSCI ACWI構成銘柄の国別騰落数 国別の株価の動きを見ると、7月は対象国50か国中、30か国が上昇、20か国が下落であった(図表3)。ただし、新興国のうち、ウエイトの大きい中国で株価がかなり下落したことが新興国指数の低迷の主因となった(図表4)。中国大手配車アプリをはじめとしたネット企業への統制を強めているほか、学習塾の新規上場禁止や既存学習塾の非営利団体化を行う規制策を公表するなど教育産業への規制も強化していることが株価急落の背景にある。
今月は中国のほか、フィリピンやペルーの株価も冴えなかった。フィリピンはデルタ株の流行やそれを受けた厳しい封じ込め政策の実施を決定したことが下落の背景にある。

ペルーでは6月に実施された大統領選挙の結果が確定し、憲法改正と天然資源会社への増税、国有化を目指すカスティジョ大統領が誕生、首相にも同党議員を指名するといった動きが投資家に嫌気されたものと見られる。
(図表4)各国の株価変動率
通貨の騰落率を見ると、対ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比▲0.9%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比▲0.9%となり、6月に続きドル高が進行した4(前掲図表2)。
(図表5)MSCI ACWI構成通貨の通貨別騰落数 MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、39通貨中25通貨が対ドルで下落(ドル高)となっており、多くの通貨でドル高が進行する形となった(図表5)。

国別には前述の大統領選挙の結果を受けたペルーソルの下落が目立ったほか、新興国通貨の下落が相対的に大きい。ただし、先進国でもオーストラリアドルなど、新型コロナの感染拡大により通貨に下落圧力が生じている国も一部で見られた(図表6)。
(図表6)各国の対ドル為替レート変動率
 
4 名目実効為替レートは2021年7月26日の前月末比で算出。

 
(参考)主要国の新型コロナウィルス拡大後の金融政策一覧
 
 

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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2021年08月02日「経済・金融フラッシュ」)

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