2021年08月04日

オルタナティブデータで見る米国のリオープニングの現状

金融研究部 准主任研究員   佐久間 誠

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新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が広がり、世界が経済再開(リオープニング)に向けて緩やかに動き出している。日本においても、医療従事者から高齢者、そして現役世代への接種が本格化し、接種ペースの加速が期待されている。それでは、コロナ禍からのリオープニングは、どのような道筋をたどるのだろうか。一つのケーススタディとして、ワクチン接種で先行する米国の動向を、昨今注目を集めるオルタナティブデータをもとに確認したい。

オルタナティブデータとは、経済統計や財務情報などこれまで伝統的に活用されてきたデータ以外の非伝統的なデータの総称である。伝統的なデータと比べて、オルタナティブデータは速報性が高く、粒度の細かいデータを取得できることが多い。そのため、コロナ禍によって経済・社会情勢が急激に変化し、また業種や職種などで大きく明暗が分かれる不透明な状況においては、オルタナティブデータへの関心が高まっている。

米国では1回以上ワクチン接種をした人の割合が6月末時点で54%に達し、旅行や外食は、コロナ前の水準に迫る勢いでリオープニングが進んでいる。図表1には、米国の飛行機旅客者数とレストラン予約数を2019年同期比変化率で、映画興行収入を2019年平均に対する変化率で示した。飛行機旅客者数は、2020年4月前半に▲96%まで落ち込んだが、2021年7月16日には▲20%まで回復した1。また、レストラン予約数は、2020年4月は▲99%~▲100%となったが、2021年7月16日は▲6%となった。このように旅行需要はコロナ前の2割減、飲食需要はコロナ前を小幅に下回る水準までが進んでいる。
 
1 STRによると、米国のホテルのRevPAR(稼働率×客室単価)は、2020年4月に2019年対比で▲80%~▲90%となったが、7月4日~10日の週は▲9%まで回復している(STR,” U.S. Market Recovery Monitor - 10 July 2021”,Data Insights Blog,15th July 2021)
図表1:米国の飛行機旅客者数とレストラン数、映画興行収入の推移
一方、映画興行収入は7月2日~8日の週で▲48%と、映画館への人出の戻りは小幅にとどまる。映画興行収入はヒット作などに大きく左右されるため、データを見る際には注意が必要だが、旅行や外食と比較すると回復は鈍い。コロナ禍ではエンターテイメントのデジタル化が加速しており、巣ごもりした消費者が、再び映画館に戻るかは不透明である。米映画協会によると、2020年の米国の動画配信サービス加入者数は前年比32%増加した。加入者数は3億0,860万人となり、すでに各世帯が2つ以上の動画配信サービスに加入している計算だ。映画興行収入の回復の遅れが、デジタルシフトに起因するのかは、注意深く見極める必要がある。

オフィスもテレワーク拡大というデジタル化の影響が懸念される。図表2には、全米10都市平均のオフィス出社率とニューヨークの地下鉄乗客者数を、感染拡大前比の変化率で示した。オフィス出社率は2021年7月7日の週に▲69%と、最も低下した2020年4月15日の週の▲85%よりは回復したものの、依然として低水準である。また、10都市のうち出社率が最も低いのはIT企業が集積するサンフランシスコ(▲82%)、2番目に低いのは大手金融機関が集まるニューヨーク(▲80%)である。なお、地下鉄乗客者数は2021年7月16日時点で▲51%と、オフィス出社率と同様に回復はまだまだだ。一部の金融機関やIT企業ではオフィス回帰の動きが進んでいるとの報道があるが、今もなお全体としてオフィス出社率は低水準にとどまる。

ポストコロナの不動産市場を見通す上では、コロナ禍の循環的影響と構造的影響を峻別することが重要である。経済の正常化過程においては、循環的影響を受けたセクターはいち早く回復し、構造的影響を受けるセクターの回復は遅れるだろう。言い換えると、回復ペースが速い旅行や外食は循環的影響、回復が遅れている映画館やオフィスは構造的影響を受けるセクターであることが示唆される。つまり、デジタルサービスによる代替が進んだセクターは構造的影響が残り、ポストコロナにおいて以前の水準には戻らない可能性がある。もちろん米国と日本では、コロナ禍の影響が異なる可能性があるものの、先行事例として参考になるだろう。
図表2:全米10都市オフィス出社率とニューヨーク地下鉄乗客者数
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金融研究部   准主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

(2021年08月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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