2021年06月02日

ブラジルGDP(2021年1-3月期)-感染拡大による行動制限下でもプラス成長

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比1.2%とプラス成長を維持

6月1日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2021年1-3月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は1.0%、市場予想1(同0.5%)より上振れ、前期(▲1.1%)から改善した(図表1・2)
前期比伸び率(季節調整値)は1.2%、予想(同0.9%)より上振れ、前期(同3.2%)から伸び率は減速した。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:変異株が流行するなかでも改善、ほぼコロナ禍前の水準に並ぶ

1-3月期の実質GDP伸び率は前期比1.2%(季節調整値、年率換算4.9%)となり、昨年7-9月期から3四半期連続の増加となった。前年同期比では+1.0%(未季節調整値)となった。コロナ禍前との対比では、季節調整値で見て21年1-3月期は19年10-12月期とほぼ同水準となっている。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が▲0.1%(前期:3.2%)、政府消費が▲0.8%(前期:0.9%)、投資4.6%(前期:20.0%)、輸出が3.7%(前期:▲1.1%)、輸入が11.6%(前期:19.3%)となった。民間および政府消費がマイナスとなる一方で、投資が堅調に回復していることが成長率を押し上げた。前年同期比(未季節調整値)を見ると、個人消費▲1.7%、政府消費▲4.6%、投資17.0%、輸出0.8%、輸入7.7%であり、消費の弱さと投資の強さが目立つ形となっている。

次に産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3)、大分類では「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」のすべてが前期比プラスとなった。「第二次産業」はシェアの高い製造業が前期比マイナスだったが、鉱業および建設業が前期比プラスとなり成長を支えた。製造業の低迷は個人消費と関係の深い食料品関係の生産が鈍ったことが要因と見られる。「第三次産業」では公的・医療を除く産業で前期比プラスとなった。ただし、前年同期比では「その他(専門サービス、生活関連サービス、娯楽等)」(前年同期比▲7.3%)のマイナス幅は依然として大きい。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
GDPの水準を時系列で見ると、需要別では、輸出が弱含むなか、投資と輸入が急激に改善していることが分かる。コロナ禍前(19年10-12月期)との比較でも、投資と輸入はコロナ禍前の水準を回復しているが、輸出や個人消費はコロナ禍前の水準には達していない(図表4)。産業別には第一次産業および第二次産業がコロナ禍前の水準を回復したものの、第三次産業はコロナ禍前の水準に届いていない(図表5)。

1-3月期のブラジルでは、特に3月以降、変異株の流行などにより感染者数が急増したため行動制限の強化を行っていた。こうした状況を受け個人消費は低迷したものの、投資の回復に支えられる形で実質GDP成長率は前期比プラスを維持できている。今後の見通しについては、1次産品の需要増などはプラスの材料だが、部品不足による自動車生産の伸び悩みなどはマイナス要因になる。何より、成長の主軸である個人消費が、引き続きコロナ禍の影響を大きく受けると思われるため、当面は不確実性の高い状況が続くだろう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年06月02日「経済・金融フラッシュ」)

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