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2021年06月03日
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不動産証券化協会「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」によれば、不動産(実物不動産あるいはいずれかの不動産証券化商品)への投資を行っている年金基金の比率は、2009年の31%から2019年の64%となり、過去10年間で倍増した(図表1)。年金基金の投資対象として、不動産の存在感が増している。
日本の不動産投資市場は、J-REIT市場の開設以降、拡大が続いている。当初、投資対象資産はオフィスビルが中心であったが、現在は物流施設やホテルなど多岐にわたっている。図表2は、過去13年間における用途別のリターン(平均収益率)とリスク(標準偏差)を示している。用途別のリターンは4.40%(オフィス)から7.37%(物流施設)、リスクは3.04%(物流施設)から6.62%(ホテル)と幅があり、同じ不動産でも、用途によりリスク・リターン特性は大きく異なる。
年金運用においては、短期の市場見通しによってダイナミックに資産構成割合を変更するのではなく、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めて、定期的にリバランスを行い運用するほうが、良いリターンを獲得できるとされる。公的年金等の資産運用では、各アセットクラス(市場ポートフォリオ)のリスク・リターンなどを考慮したうえで、積立金運用の基本ポートフォリオを定めている。そのため、基本ポートフォリオに不動産を組み入れる際には、不動産投資における「市場ポートフォリオ」の特性を把握することが重要である。
日本の不動産投資市場は、J-REIT市場の開設以降、拡大が続いている。当初、投資対象資産はオフィスビルが中心であったが、現在は物流施設やホテルなど多岐にわたっている。図表2は、過去13年間における用途別のリターン(平均収益率)とリスク(標準偏差)を示している。用途別のリターンは4.40%(オフィス)から7.37%(物流施設)、リスクは3.04%(物流施設)から6.62%(ホテル)と幅があり、同じ不動産でも、用途によりリスク・リターン特性は大きく異なる。
年金運用においては、短期の市場見通しによってダイナミックに資産構成割合を変更するのではなく、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めて、定期的にリバランスを行い運用するほうが、良いリターンを獲得できるとされる。公的年金等の資産運用では、各アセットクラス(市場ポートフォリオ)のリスク・リターンなどを考慮したうえで、積立金運用の基本ポートフォリオを定めている。そのため、基本ポートフォリオに不動産を組み入れる際には、不動産投資における「市場ポートフォリオ」の特性を把握することが重要である。
ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所は、国内不動産投資における「市場ポートフォリオ」にあたる「収益不動産1」の市場規模を用途別に推計した2。結果は、「収益不動産」の市場規模は約272兆円で、用途別では「オフィス」が37%(約99.5兆円)、「商業施設」が26%(約71.1兆円)、「賃貸住宅」が24%(約64.9兆円)、「物流施設」が9%(約23.9兆円)、「ホテル」が5%(約12.9兆円)となった(図表3)。
ところで、「J-REIT」や「不動産私募ファンド」等の不動産証券化商品を通じて、不動産投資を行う年金基金は多い。投資信託協会によれば、2021年2月時点の「J-REIT」の投資比率は「オフィス」が40%と最も大きく、次いで「物流施設」が18%、「商業施設」が16%、「賃貸住宅」が15%、「ホテル」が8%となっている。また、三井住友トラスト基礎研究所の調査によれば、「不動産私募ファンド」の投資比率は「オフィス」が35%、「物流施設」が28%、「賃貸住宅」が13%、「商業施設」が11%、「ホテル」が6%となっている(図表4)。不動産の「市場ポートフォリオ」と比較すると、「J-REIT」と「不動産私募ファンド」は、ともに「物流施設」の投資比率は高い一方、「商業施設」と「賃貸住宅」の投資比率が低いようだ。
JP モルガン・アセット・マネジメント「第13回 企業年金運用動向調査(2021年3月)」によれば、「実物不動産への投資配分を増加する方針」と回答した企業年金基金の割合は、昨年度の5.2%から15.0%へと大きく増加した。今後、年金基金は、不動産投資における「市場ポートフォリオ」の用途別割合等の特性を把握するなどして、投資比率調整等のリスク管理を適切に行うことが必要になると思われる。
ところで、「J-REIT」や「不動産私募ファンド」等の不動産証券化商品を通じて、不動産投資を行う年金基金は多い。投資信託協会によれば、2021年2月時点の「J-REIT」の投資比率は「オフィス」が40%と最も大きく、次いで「物流施設」が18%、「商業施設」が16%、「賃貸住宅」が15%、「ホテル」が8%となっている。また、三井住友トラスト基礎研究所の調査によれば、「不動産私募ファンド」の投資比率は「オフィス」が35%、「物流施設」が28%、「賃貸住宅」が13%、「商業施設」が11%、「ホテル」が6%となっている(図表4)。不動産の「市場ポートフォリオ」と比較すると、「J-REIT」と「不動産私募ファンド」は、ともに「物流施設」の投資比率は高い一方、「商業施設」と「賃貸住宅」の投資比率が低いようだ。
JP モルガン・アセット・マネジメント「第13回 企業年金運用動向調査(2021年3月)」によれば、「実物不動産への投資配分を増加する方針」と回答した企業年金基金の割合は、昨年度の5.2%から15.0%へと大きく増加した。今後、年金基金は、不動産投資における「市場ポートフォリオ」の用途別割合等の特性を把握するなどして、投資比率調整等のリスク管理を適切に行うことが必要になると思われる。
1 事業者や個人に物件を賃貸することで、賃料収入を獲得できる不動産。
(2021年06月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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