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わが国の不動産投資市場規模(3)~商業施設の「収益不動産」は約71.1兆円、物流施設は約23.9兆円、ホテル・旅館は約12.9兆円。

金融研究部 主任研究員 吉田 資
株式会社価値総合研究所 パブリックコンサルティング第3事業部 主任研究員 室 剛朗
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1. はじめに
拡大を続ける不動産投資市場の将来を見通すにあたり、投資対象となる「収益不動産1」の資産総額がどれくらいの規模であるのか、また、その内訳について「用途別」や「エリア別」に把握することは重要だと考えられる。そこで、ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所は、共同でわが国の不動産投資市場規模(収益不動産ストック)に関する調査を実施した。
前回までの2つのレポート2では、「収益不動産ストック」の推計方法と、「オフィス」と「住宅」に関する推計結果を解説した。本稿では、(1)「商業施設」(2)「物流施設」(3)「ホテル・旅館」に関する推計結果の内容を報告する。
1 事業者や個人に物件を賃貸することで、賃料収入を獲得できる不動産。
2 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(1)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年3 月12 日
吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年4 月19日
2. 商業施設の資産規模の推計結果
不動産投資市場の将来を見通す上で、「不動産証券化」の視点は重要である。そこで、各カテゴリーにおけるJ-REITの保有比率を確認すると、「収益不動産」で4.7%、「投資適格不動産」で5.0%となった。前述の「オフィス」におけるJ-REITの保有比率(「収益不動産:9.2%」、「投資適格不動産:11.9%」)や、「住宅」の比率(「収益不動産」:5.2%、「投資適格不動産」:9.4%)と比べると、商業施設の比率は低い水準に留まっている。
RCAによれば、商業施設の年間取引額は、ファンドバブルと言われ活況を呈した2007年には約1.2兆円に達した。その後、リーマンショックや東日本大震災等の影響により取引額は低迷したが、2013年にスタートしたアベノミクス以降、国内外の投資資金が流入し、2015年と2017年の取引額は1兆円を超えたが、2020年はコロナ禍を受けて、約0.4兆円(前年比▲37%)に減少した(図表-3)。
また、取引額に占めるクロスボーダー取引(外国資本による取引)の割合は、取引額が1兆円を超えた2017年は42%に達したが、2020年は6%まで低下した。昨年は、緊急事態宣言時における大型商業施設への休業・時短営業要請などに伴い施設売上が低迷し、投資家の様子見姿勢が強まったこと等から商業施設の取引額は大きく落ち込んだ。
2007年から2020年の商業施設の年間取引額は、平均0.7兆円であった。これに基づく市場回転率は、「収益不動産」で1.0%、「投資適格不動産」で1.4%と推計される(図表―4)。前述のオフィス(「収益不動産:2.1%」、「投資適格不動産:3.1%」)と比べて、商業施設の市場流動性は低いようだ。
3 「市場回転率」=年間取引額÷収益不動産ストック
3. 物流施設の資産規模の推計結果
2007年から2020年の物流施設の年間取引額は、平均0.5兆円であった。これに基づく市場回転率は、「収益不動産」で2.1%、「投資適格不動産」で4.6%と推計される(図表-10)。「投資適格不動産」を基準とした場合、米国(約4.5%4と推計)と同水準の不動産取引が行われていると言える。
4 PGIM Real Estate 「A Bird’s Eye View of Real Estate Markets: 2017 Update」によれば、アメリカ合衆国の「収益不動産」(全プロパティ)の資産規模は、約8.1兆ドル。RCAによれば、アメリカ大陸の年間取引額(2007年から2020年の平均値)は、約0.3兆ドル。
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