2021年04月13日

ASEANの貿易統計(4月号)~2月の輸出はベトナム旧正月の影響を受けて鈍化

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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21年2月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比5.0%増(前月:同16.7%増)と鈍化した(図表1)。輸出の伸び率は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が昨年4月に本格化して急減したが、月から経済活動の再開を反映して持ち直しの動きが続いている。足元では、テレワーク需要の増加に伴う電気・電子製品の出荷増や商品市況の改善の影響が輸出全体を押し上げているが、2月は主にベトナムにおけるテト(旧正月)休暇の影響を受けて下振れした。

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、2月は北米向け(同10.2%増)と東アジア向け(同11.7%増)が二桁増を保った(図表2)。一方、EU向け(同7.9%減)と東南アジア向け(同0.7%減)が3ヵ月ぶりにマイナスとなった。
(図表1)アセアン主要6カ国の輸出額/(図表2)アセアン6ヵ国仕向け地別の輸出動向
ベトナムの21年2月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比3.8%減となり、前月の同55.1%増から急減して9カ月ぶりのマイナスとなった。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて落ち込み、6月から経済活動の再開を反映して持ち直しの動きが続いているが、今年2月はテト(旧正月)休暇の影響を受けて急減した。一方、輸入額が前年同月比9.7%増(前月:同41.3%増)と増加を続けた結果、貿易収支は▲4.6億ドルとなり、前月から25.5億ドル減少した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比24.5%減(前月:同125.8%増)と急減した一方、電気製品・同部品が同22.6%増(前月:同46.2%増)と13ヵ月連続の二桁増となった(図表4)。またアパレル関連では、織物・衣類が同18.9%減(前月:同5.7%増)、履物が同11.4%減(前月:同31.2%増)と、それぞれ減少した。農林水産物を見ると、野菜(同1.7%増)が増加したものの、コメ(同29.5%減)やコーヒー(同30.9%減)や、水産物(同21.8%減)、カシューナッツ(同31.7%減)が大きく減少するなど、総じて不調だった。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同6.3%増(前月:同81.8%増)と増加した一方、地場企業が同26.4%減(前月:同6.8%増)と減少した。
(図表3)ベトナムの貿易収支/(図表4)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
タイの21年2月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比2.6%減(前月:同0.3%増)と低下して3カ月ぶりに減少した。輸出は昨年3月から新型コロナ感染拡大の影響が現れて4~6月に大きく減少した後、7月以降は経済活動の再開を反映して概ね持ち直しの動きが続いているが、今年2月はASEAN域内向けの出荷が落ち込んでマイナスの伸びとなった。一方、輸入額が前年同月比22.0%増(前月:同5.2%減)と上昇して2カ月ぶりに減少した結果、貿易収支は+0.1億ドルとなり、前月から2.1億ドル改善した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同2.5%増(前月:同7.7%増)と低下したものの、3ヵ月連続で増加した(図表6)。製造品の内訳を見ると、外出自粛の影響で増加傾向の続く家電製品(同7.2%増)や電子機器(同10.6%増)、機械・装置(同16.2%増)、石油化学製品(同26.5%増)、自動車・部品(同4.2%増)など幅広い品目が増加した。また鉱業・燃料は同9.7%減(前月:同22.1%減)となり、石油製品(同7.2%減)を中心に12ヵ月連続で減少した。農産物・同加工品は同12.2%増(前月:同7.5%増)と4ヵ月連続で増加した。加工食品(同8.4%減)やコメ(同4.9%減)など減少した一方、ゴム製品(同48.3%増)や天然ゴム(同22.9%増)、果物(同120.2%増)が増加した。なお、非貨幣用金(同93.0%減)は前年に急増した反動により6ヵ月連続で減少した。
(図表5)タイの貿易収支/(図表6)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの21年2月の輸出額(ドル建て換算、通関ベース)の伸び率は前年同月比21.0%増(前月:同7.7%増)と上昇して6カ月連続で増加した。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して約3割の減少を記録した後、世界経済の回復が進むにつれて電気・電子製品を中心に持ち直しの動きが続いている。また輸入額が前年同月比16.0%増(前月:同2.4%増)と上昇した結果、貿易収支は+44.2億ドルとなり、前月から3.0億ドル拡大した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同24.5%増(前月:同12.5%増)と上昇して主力の電気・電子製品(同29.1%増)を中心に9カ月連続で増加した(図表8)。また鉱物性燃料は同8.3%増(前月:同33.8%減)と急増した。天然ガス(同14.5%減)と原油(同22.1%減)の低迷は続いているものの、石油製品(同41.8%増)が大幅な増加に転じた。このほか、ゴム手袋(同278.6%増)が好調、化学製品(同18.5%増)や動植物性油脂(同15.7%増)も二桁増となった。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの21年2月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比8.6%増(前月:同12.2%増)と鈍化したが、堅調な伸びを保った。輸出は昨年3~5月にかけて新型コロナの感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて最大約3割減まで落ち込んだが、6月以降は経済活動の再開を反映して持ち直し、足元では商品市況の改善が輸出の押上げ要因となっている。また輸入額も前年同月比14.9%増(前月:同6.6%減)と1年8ヵ月ぶりに増加した結果、貿易収支は+20.0億ドルとなり、前月から0.4億ドル拡大した(図表9)。

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同8.7%増(前月:同12.4%増)、石油ガス輸出が同6.9%増(前月:同8.3%減)がそれぞれ増加した(図表10)。品目別にみると、前月まで好調だった動植物性油脂(同4.1%増)が鈍化したものの、鉱物性燃料(オイル・ガス除く)(同7.5%増)、機械類(同15.4%増)、自動車・同部品(同8.4%増)などが順調に増加した。
(図表9)インドネシア貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの21年2月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て換算、通関ベース)は前年同月比9.1%増(前月:同14.9%増)と鈍化したものの、3ヵ月連続で増加した。輸出は昨年コロナ禍でも大幅な減少を回避し、今年は世界的な電子製品の需要拡大を受けて増加傾向で推移している。なお、総輸出額が同2.5%増(前月:同3.1%増)と鈍化した一方、総輸入額が同0.2%減(前月:同3.4%減)と減少幅が縮小した結果、貿易収支は+37.5億ドルとなり、前月から7.5億ドル縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品が同12.5%増(前月:同15.7%増)と、3カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同9.2%増)とPC(同107.5%増)の好調が続いた一方、PC部品(同10.4%減)とディスクメディア(同15.4%減)が減少した。また全体の約3割を占める化学品は同2.5%減(前月:同7.8%増)と2カ月ぶりに減少した。化学品の内訳を見ると、油価上昇を背景に石油化学製品(同24.8%増)が大幅に増加したものの、昨年好調だった医薬品(同30.3%減)が減少した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの21年2月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比2.3%減(前月:同4.8%減)と減少幅が縮小したが、2カ月連続のマイナスとなった。輸出の基調は、昨年3月から新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、5月から経済活動の再開を反映して回復してきたが、足元では持ち直しの動きに陰りがみられる。また輸入額が前年同月比2.7%増(前月:同12.1%減)と上昇した結果、貿易収支は▲22.9億ドルとなり、前月から5.8億ドル改善した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、増加した品目が多かった。化学品(同80.5%増)とその他鉱業品(同37.4%増)、ココナッツオイル(同21.4%増)、雑品(同21.2%増)、金属部品(同18.4%増)、イグニッションワイヤーセット(同1.3%増)、電子製品(同0.4%増)が増加した一方、製錬銅(同24.8%減)や機械・輸送用機器(同4.1%減)、その他製造品(同2.2%減)が減少した(図表14)。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2021年04月13日「経済・金融フラッシュ」)

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