2021年02月15日

タイ経済:20年10-12月期の成長率は前年同期比4.2%減~緩やかな持ち直しが続くも、今後は感染再拡大と活動制限措置の影響で回復ペースは鈍化へ

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2020年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比4.2%減1(前期:同6.4%減)と4期連続のマイナス成長となったものの、マイナス幅が縮小したほか、Bloomberg調査の市場予想(同5.4%減)を上回る結果となった(図表1)。

なお、2020年通年の成長率は前年比6.1%減(2019年:同2.3%増)と急減した。これはアジア通貨危機後の1998年以来最大の減少幅である。

10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に外需の大幅な落ち込みがマイナス成長に繋がった。

民間消費は前年同期比0.9%増(前期:同0.6%減)と小幅に上昇してプラスとなった。費目別に見ると、レストラン・ホテル(同58.7%減)や衣類・靴(同19.0%減)、交通(同8.1%減)、娯楽・文化(同16.3%減)の大幅な減少が続いたものの、食料・飲料(同1.8%増)や住宅・水道・電気・燃料(同1.5%増)、通信(同3.1%増)、保健衛生(同4.9%増)が底堅く推移した。

政府消費は同1.9%増(前期:同2.5%増)から鈍化した。

総固定資本形成は同2.5%減(前期:同2.6%減)と低迷した。投資の内訳を見ると、まず民間投資が同3.3%減となり、前期の同10.6%減からマイナス幅が縮小した。民間設備投資(同3.2%減)が持ち直したが、民間建設投資(同3.8%減)が再び減少した。一方、公共投資は同0.6%増(前期:同17.6%増)と大きく鈍化した。公共設備投資(同6.4%減)と公共建設投資(同2.9%増)が揃って低下した。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲10.6%ポイントと、前期の▲4.7%ポイントを上回る大幅なマイナスとなった。まず財・サービス輸出は同21.4%減(前期:同23.3%減)と低迷した。財貨輸出は同1.5%減(前期:同7.5%減)と持ち直したが、サービス輸出は同74.8%減(前期:同73.1%減)と大幅な減少が続いた。一方、財・サービス輸入は同7.0%減(前期:同19.3%減)となった。財貨輸入(同5.6%減)が持ち直したものの、サービス輸入(同11.9%減)が引き続き二桁減少となった。
(図表1)タイの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)タイ実質GDP成長率(供給側)
10-12月期の実質GDPを供給項目別に見ると、主に製造業とサービス業の継続的な落ち込みがマイナス成長に繋がった(図表2)。

農林水産業は前年同期比0.9%増(前期:1.1%減)と5期ぶりのプラスとなった。コメやキャッサバ、トウモロコシなどの主要作物が増加した。

鉱工業は同2.3%減(前期:同5.8%減)と、5期連続のマイナス成長となった。まず主力の製造業は外需の悪化により同0.7%減(前期:同5.3%減)と減少幅が縮小した。製造業の内訳を見ると、自動車やコンピュータ・部品などの資本・技術関連産業(同1.4%増)と石油化学製品、ゴム・プラスチック製品などの素材関連(同1.8%増)が揃ってプラスに転じたものの、食料・飲料や繊維、家具などの軽工業(同5.5%減)の落ち込みが深まった。一方、電気・ガス業が同13.3%減(前期:同9.4%減)、鉱業が同9.6%減(前期:同7.1%減)と大幅な減少が続いた。

全体の6割弱を占めるサービス業は同5.9%減(前期:同7.2%減)と低迷した。サービス業の内訳を見ると、ホテル・レストラン業(同35.2%減)をはじめとして運輸・倉庫業(同21.1%減)、管理及び支援サービス(同18.0%減)、芸術・娯楽等(同7.3%減)、小売・卸売業(同3.1%減)、が低迷したほか、建設業(同0.3%減)が3期ぶりに減少した。一方、情報・通信業(同5.7%増)や金融・保険業(同3.3%増)、不動産業(同1.5%増)、教育(同3.0%増)が継続的に増加したほか、保健衛生・社会事業(同6.5%増)が3期ぶりのプラスとなった。
 
1 2月15日、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が2020年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。

10-12月期GDPの評価と先行きのポイント

タイ経済は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に景気が悪化した。新型コロナの感染拡大を受けて3月下旬に非常事態宣言を発令、外出・移動制限を強化すると、4-6月期の成長率が▲12.2%と急減した。しかし、早期のウイルス封じ込めに成功すると(図表3)、5月から活動制限の段階的な緩和が始まって経済活動の再開が進んだ。この結果、成長率は7-9月期に▲6.4%、10-12月期に▲4.2%と次第に持ち直してきている。

10-12月期の景気の持ち直しは、民間部門の回復による影響が大きい。まず財貨輸出は前年同期比1.5%減(前期:同7.5%減)と減少幅が縮小した。通関ベースの貿易統計をみると、世界経済の回復が進むなか、輸出は7月から持ち直しの動きが続いており、12月には8カ月ぶりのプラスに転じた(図表4)。主にテレワーク関連製品やゴム手袋などの医療物資の輸出が増加している。また内需は、こうした財貨輸出の回復に効果的な感染対策の浸透による経済再開の進展や政府の景気刺激策による下支えが加わり、民間設備投資は同3.2%減(前期:同13.9%減)、民間消費は0.9%増(前期:同0.6%減)と回復した。

一方、GDPの約1割を占める観光業の不振が続いている。世界各国が感染防止のために実施した出入国規制によってインバウンド需要が失われたままとなっている。タイ政府は昨年10月に外国人観光客の受け入れを再開したが、受け入れ人数を制限しているため、10-12月期の外国人観光客数は前年同期の1%に満たない水準にとどまっている。
(図表3)タイの新規感染者数の推移/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
先行きのタイ経済は、新型コロナワクチンの普及が進むなかで回復ペースが安定していくとみられるが、当面は感染再拡大に伴う外出の自粛や活動制限措置の影響により景気回復が遅れることとなりそうだ。タイは昨年、経済活動の再開が進むなかでも市中感染の封じ込めに成功していたが、正規の国境を通らずに検疫隔離を受けない不法入国・帰国者を通じた感染や水産市場の大規模クラスターがきっかけとなり、12月に感染第二波が発生した(図表3)。タイ政府は12月下旬に感染リスクの高さに応じた感染対策を実施、年明けには首都バンコクで社会・活動制限を実施した。今回は全国一律の都市封鎖とはならなかったものの、ウイルスの感染状況は改善に向かっており、2月から活動制限が緩和されている。従って、今回の活動制限による経済の落ち込みは限定的なものとなるが、景気回復ペースは一旦鈍化することは避けられないだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2021年02月15日「経済・金融フラッシュ」)

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