2021年02月05日

【インドネシアGDP】10-12月期は前年同期比2.19%減~緩やかな持ち直し続くも、3期連続のマイナス成長に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インドネシアの2021年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)2.19%減(前期:同3.49%減)とマイナス幅が縮小したほか、市場予想2(同▲2.3%)を上回る結果となった。

なお、2020年通年の成長率は前年比2.07%減(2019年:同5.02%増)と急減した。通年のGDP縮小は1998年以来で初めてである。

10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の落ち込みがマイナス成長に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比3.61%減(前期:同4.05%減)と減少幅が縮小した。費目別に見ると、住宅設備(同0.71%増)と保健・教育(同0.64%増)が増加傾向を維持したものの、輸送・通信(同9.45%減)やホテル・レストラン(同7.28%減)、食料・飲料(同1.39%減)が減少した。

政府消費は前年同期比1.76%増となり、前期の同9.76%増から大きく鈍化した。

総固定資本形成は前年同期比6.15%減(前期:同6.48%減)と低迷した。建設投資(同6.63%減)と機械・設備(同7.57%減)、自動車(同6.51%減)がそれぞれ減少した。

純輸出は成長率寄与度が+1.11%ポイントとなり、前期の+1.77%ポイントから縮小した。まず財・サービス輸出は前年同期比1.65%減(前期:同5.40%減)となり、減少幅が小幅にとどまった。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同53.64%減)の大幅な減少が続いたものの、財輸出(同1.65%減)の減少幅が縮小した。また財・サービス輸入は同13.52%減(前期:同23.00%減)と低迷した。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第二次産業と第三次産業の成長率が引き続き減少した(図表2)。

まず成長を牽引する第三次産業は前年同期比1.41%減(前期:同2.45%減)とマイナス幅が縮小したものの、3期連続で減少した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売(同4.65%減)をはじめとして、運輸・倉庫(同13.42%減)やホテル・レストラン(同8.88%減)、ビジネスサービス(同7.02%減)、そして行政・国防(同1.55%減)が減少した。一方、情報・通信(同10.91%増)と保健衛生・社会事業(同16.54%増)が好調だったほか、金融・不動産(同1.91%増)が上昇した。

また第二次産業は前年同期比3.49%減(前期:同4.30%減)と減少した。内訳を見ると、構成割合の大きい製造業(同3.14%減)と建設業(同5.67%減)、鉱業(同1.20%減)、電気・ガス・水供給業(同4.28%減)が軒並み減少した。

一方、第一次産業は前年同期比2.59%増(前期:同2.16%増)とプラスの伸びが続いた。
 
1 2021年2月5日、インドネシア統計局(BPS)が2020年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

10-12月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は昨年まで+5%成長が続いたが、今年に入ると新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に景気が減速、4-6月期は新型コロナの封じ込めを目的に国内外で実施された活動制限措置の影響が本格的に現れて成長率が前年同期比▲5.32%に急減した。その後は7-9月期が同▲3.49%、10-12月期が同▲2.37%と、経済は緩やかな持ち直しの動きが続いたが、3期連続でマイナス成長となった。

10-12月期は、9月14日から4週間に渡って首都ジャカルタ特別州で再実施された大規模な社会的制限(PSBB)や年末の行動制限の影響を受け、景気回復の動きが緩やかなものとなった(図表3)。インドネシア経済は新型コロナウイルスの継続的な感染拡大と観光関連など深刻な影響を受けた産業への悪影響を受けて依然として不安定な状況にあり、10-12月期は民間消費(同▲3.61%)と投資(同▲6.15%)が落ち込んだ。

また外需は、サービス輸出(同▲53.64%減)が前期に続いて大幅に悪化した。国内外で実施されている海外渡航規制や入国制限措置により外国人旅行者数が新型コロナ流行前の1割強の水準まで縮小している(図表4)。一方、財貨輸出(同▲1.65%)はマイナス成長が続いているものの、世界的な景気回復の勢いが強まり、内需と比べて持ち直しが早く、純輸出の成長率寄与度はプラスとなっている。

1月13日にはインドネシア国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。第1段階のワクチン接種は全国の医療従事者約132万人が対象となっている。政府は集団免疫を獲得するために国民の7割(1億8,000万人)がワクチンを接種する必要があると考えている。今後、ワクチンの普及が進むなかで景気回復の動きが強まるだろう。

もっとも1-3月期は4期連続のマイナス成長が予想される。これは足元で経済への下押し圧力が強まっていることが関係している。国内では新型コロナの新規感染者数の増加が続き、1月下旬からは1日あたり1万人を上回るペースに達するなど、未だ感染拡大に歯止めがかからない状況にあり、対面型サービス業など労働集約型の産業では失業者が増えている。また政府は年末年始に実施した国内の移動制限を年明け以降も継続、更に1月11日から感染リスクの高いジャワ島とバリ島を中心にPSBBを再開する形で行動規制を強化している。現在はオフィスへの出社や公共交通機関の運行、商業施設の営業時間に制限がかかっており、人の移動が大幅に減少している。このほか、変異種発生への対応として、1月から外国人の入国を一時停止しており、観光業の回復は引き続き期待できない。1-3月期もマイナス成長が続く恐れが強まっている。

景気回復を後押しするため、インドネシア銀行(中央銀行)は2月18日の会合で追加的な金融緩和を実施するだろう。需要不足を背景に、1月のコアインフレ率は前年同月比+1.6%と、中銀のインフレ目標(3±1%)の下限を下回って推移しているほか、足元の通貨ルピアの対ドル相場は安定している。追加利下げが決まれば、今後のワクチン普及に伴う景気回復の後押しとなり、政府が2021年度の国家予算で掲げた+5.0%の成長率目標の達成にも貢献するだろう。
(図表3)インドネシアの新規感染者数の推移(図表4)インドネシアの外国人観光客数
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2021年02月05日「経済・金融フラッシュ」)

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